国内ジェネリック医薬品業界最大手の沢井製薬㈱（大阪市淀川区、澤井健造社長）が機能性表示食品の発売準備を進めている。消費者庁への届出手続きはすでに終えており、テストマーケティングを経て、通信販売（EC）チャネルを活用した販売に乗り出す。発売はいつか。どのようなマーケティングを展開するのか。最新動向を伝える。

「生活習慣」など3品を開発 テストマーケ後に発売へ

　現在、沢井製薬が消費者庁への届出を終えている機能性表示食品は3品目。商品名を見ていくと、まず、GABA、バナバ葉由来コロソリン酸、エラグ酸の3つを機能性関与成分にした『トリプル生活習慣』。次いで『歩行維持力』。これは、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボン、カツオ由来エラスチンペプチド、大豆イソフラボンを機能性関与成分にしたものだ。

　そして、ルテイン・ゼアキサンチンを機能性関与成分にする『くっきり力』の計3品目。いずれもサプリメント形状の加工食品で、今年1月14日付で届出を行っていた。届出資料によると、3品目とも製造は国内サプリメント・健康食品受託製造最大手アピ㈱（岐阜県岐阜市）の池田工場で行う。

　沢井製薬が健康食品事業に参入することは昨年のうちに公表されていた。同社を傘下に抱えるサワイグループホールディングス㈱（大阪市淀川区、以下サワイGHD）が昨年5月公表した中期経営計画「START 2024」。ここで示された「重点戦略」に「新たな成長分野の開拓」が掲げられ、新薬（希少疾患）を始めデジタル・医療機器のほか健康食品の3領域に重点的なリソース投入を行うとし、2024年4月までの当該期間中に300億円を投資すると説明された。

　健康食品を新たに手掛ける理由も示されていた。「健康寿命延伸への貢献」だ。「未病・予防を含む、より広いヘルスケア領域に事業拡大」するとした上で、ロコモ・フレイル対策、認知症・生活習慣病予防などをサポートする健康食品事業に参入する方針を表明。沢井製薬が現在までに届け出ている機能性表示食品3品目は同方針に明確に基づくもので、まずは生活習慣ケア、ロコモ・フレイルケア、そしてアイケアの３領域を取り揃えた格好だ。今後、認知機能などをケアする機能性表示食品を新たに届け出る可能性も考えられる。

新規事業を通じて健康寿命延伸に貢献

　届け出た機能性表示食品3製品に関する届出資料が公表されたのは3月下旬。それから4カ月ほど経過したが、販売はまだ始まっていない。「なるべく早めにテストマーケティングを実施し、今秋の販売開始を目指す」。サワイGHDは届出が公表された後、そのように説明していたが、7月末時点でテストマーケティングもまだ始まっていない。健康食品などヘルスケア事業を担当する同社のグループ戦略企画部担当者は取材に対し、「準備を進めている段階」だと説明した。

　グループ全体の経営方針に基づき健康食品事業に参入することもあり、かなり慎重に準備を進めている様子。販売ターゲットをどうするかなどといった具体的な販売戦略についても、「テストマーケティングの結果を踏まえて改めて精査、検討する」（同）としており、満を持して健康食品市場（機能性表示食品市場）に本格参入したい意向を示す。3製品の届出の公表が当初想定していたよりも遅かった事情もあるという。発売時期が予定よりもやや後ろ倒しになる可能性も無くはなさそうだ。

　サワイHDは、2030年に向けた長期ビジョンにおいて、事業を通じた社会課題への取り組みとして、「ジェネリック医薬品事業を通じた持続可能な社会の実現」と「新規事業により健康寿命の延伸にも貢献」の2つを並列して掲げた。ここにきて相次ぐ後発薬メーカーの健康食品事業の新規参入の背景には、毎年の薬価改定などを受けた「市場の頭打ち」があるとする見方が根強いが、同社では否定する。

　「課題のあることは事実だが、ジェネリック医薬品が事業の中核であることは変わらない。特許切れを迎える医薬品はこれからもあり、ジェネリック医薬品市場の成長余地はまだある。そのような環境下で、新規事業（ヘルスケア事業）を通じてお薬を飲んでいない一般消費者との接点を広げていきたい。健康食品事業への参入はそこが最大の目的だ」（コーポレートコミュニケーション部）。

【石川 太郎】

（冒頭の画像：沢井製薬が届け出た機能性表示食品3製品のうち『くっきり力』の表示見本。消費者庁の届出情報公開DBより）

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