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機能性表示食品届出DBの運用見直し~消費者庁

消費者庁は25日、「2021年度 消費者庁行政事業レビュー『公開プロセス』」をオンラインで開催した。製造所固有記号・機能性表示食品届出データベースの整備と運用事業の妥当性について、6人の有識者を委員として迎えた。対象の2事業について無駄をなくし、生産性を向上させ、成果を最大化するためにはどうあるべきか、成果指標の見直しも含めてこれまでのプロセスを検討した結果、全員の委員が事業内容の一部改善が必要との意見で一致した。

 取りまとめ案として、現在設定されている「成果目標に対するアウトプットとアウトカムは適切でない」と指摘。「利用者にとっての使い勝手の良さ、セキュリティの水準といったシステムとしての社会的な効率性に関わる要素をアウトプットに掲げ、それに向けて消費者庁として取り得る施策、例えば、事業者・消費者の意見の収集分析などを実施していくことをアウトカムとして掲げることが望ましい」と結論した。また、(システムの整備と運用に係る事業者に対し)現状の1社応札の関係については、「その回避に向けて、原因の分析をしっかりした上で対策をさらに図るべきではないか」と提案した。

【解説】
 消費者庁によれば、製造所固有記号と機能性表示食品制度の運用の目的は、事業者がオンライン上で届出の手続きを行うことで、制度を適切に運用し、適正な届出によって最終的に食品を摂取する消費者の安全性の確保と自主的かつ合理的な食品の選択の機会を確保し、政府全体の方針であるデジタルガバメント実行計画におけるオンライン化促進へも対応するためとしている。また付随的な目標として、消費者がデータベースを見ることで必要な情報を簡便に閲覧することも可能になると説明している。

 ある委員の質問に対して消費者庁・食品表示企画課の五十嵐麻衣子課長は次のように答えた。委員は、機能性表示食品などの届出データベースのオープン化について、「食品の表示というのは、売られている商品に貼られているラベルに書かれてるものがある意味ではその表示の全て。データベースを通じてそれ以上のものを消費者が細かく求めていくためのシステムではないのではないか」と質問。
 五十嵐課長は「容器包装上の表示を充実させるというのが当課としてのメインの行政目標。ただ、届け出の仕組みで科学的根拠などを(事業者が)出しているので、追加でもっと知りたい人用にそれが見えるようになりますよという、ある意味プラスアルファのサービスと言ったようなイメージ」と答えた。つまり同データベースは消費者ではなく、主に事業者が見るためにオープンデータ化されているシステムということになる。

 一方、ほかの委員からは、「(事業者の使い勝手については成果指標が定められているが)消費者が実際に食べるものの根拠があるのか、健康に良いとかエビデンスがあるのかということの証明がされているかということについて、関心を持って消費者自身が調べるとか、あるいは消費者団体が代行的に調べるということが想定されると思うが、これについて使い勝手を確認しているか」との質問も。「実際に検索してみたが極めて使い勝手が悪いというのが気になった」、「消費者庁がやっている気になっていることと(ユーザーに)できることをユーザーの観点から見直してほしい」などの意見に対し、五十嵐課長は「マニュアルとかホームページとか、それから各種食品表示そのものについて、機会をとらえて分かりやすいかたちで情報発信、説明をしていきたい」と述べた。

 ほかにも、次のような意見が寄せられた。
・「アウトプットとアウトカムのあり方について検討し、目指すものが何か、事業者と消費者のどちらに軸足があるのかを明確にすべき」
・「システムの稼働率はアウトプットとし、登録件数と公表件数はアウトカムとする」
・「成果指標として、単なる稼働率ではなく、情報の流出など安全に稼働しているかどうかなどのセキュリティ関連も検討したほうが良いのではないか」
・「登録件数や公表件数は消費者庁の努力によって変わらない」
・「利用者を対象とした調査を通じて、ユーザーインターフェースや検索機能のあり方について検討改善を加えることが望ましい」
・「事業者と消費者から課題や改善点を把握し、毎年度、データベースの運用の改善策を策定実行すべき」
・「消費者の選択の機会の確保について明確にすべき」
・「成果であるアウトカムは、消費者側の問題にするならば消費者モニターの活用、利用者あるいは消費者団体へのアンケートなどがポイントになるだろう」

 今回のレビューでは、厚生労働省時代から運用が続いてきた製造所固有記号についてよりも、むしろ機能性表示食品の届出データベースに重点を置いた議論が多かった。論点は前述した「アウトプット・アウトカム」、「1社応札」の2点に絞られた。
 機能性表示食品の届出ガイドラインには制度設立の趣旨として、「機能性表示食品制度を消費者の自主的かつ合理的な食品選択に資するものとするためには、安全性の確保及び機能性表示を行う上での必要な科学的根拠、適正な表示による消費者への情報提供等が適切に担保されることが重要となる」と明記されている。
 今回のレビューでは、オープンデータの民間による2次利用にも言及された。実際に、届出情報を基に科学的根拠の評価を行っている(一社)消費者市民社会をつくる会(ASCON)なども存在する。取りまとめで指摘されたように、今後益々、事業者や消費者の意見を収集してその成果を明確にすることが求められるのはもちろんだが、さらに一歩進めて、事業者任せの制度に終わらせるのではなく、消費者庁がより消費者視点に立った、消費者の利便性を高めるためのシステム再整備へ向け、そのためのガバナンスをどう高めていくかに注視したい。

【田代 宏】

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