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高裁、消費者庁に情報の追加開示命じる 「機能性表示食品検証事業」報告書めぐる控訴審判決

 「機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業」報告書をめぐり、食の安全・監視市民委員会の共同代表を務める佐野真理子氏が1審の判決を不服として、10月17日に東京高等裁判所に控訴していた「行政文書不開示処分取消等請求控訴事件」の判決が9日に下りた。1審で不開示とした一部の取り消しを消費者庁に命じた。

 判決で裁判所は、1審における一部開示に加えて、分析試料の一覧表における「検証対象の機能性表示食品に割り当てた番号」、「購入個数」、「購入価格」、「試料の購入先」の開示を求めた。製品名はすでに1審で開示が認容されている。

 開示の理由として、機能性表示食品の名称や機能性関与成分の名称は「公にすることにより、企業の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害する恐れがある情報には該当しない」とし、検体情報に関する入手方法やルート、目的なども同様の扱いとして開示を命じた。
 
 そもそも同事件は、消費者庁の「機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業報告書」(平成27年度)に対する情報公開請求に対し、消費者庁が「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」5条6号イなどの規定に基づき、一部を不開示としたことが発端。これを不服とした控訴人(佐野氏)が東京高裁に控訴した。

 控訴人は、「検証事業は、食表法違反による行政処分を行うための事後監視そのものではない。事後監視を行うための基礎資料を得るための分析方法などに関する検証に過ぎない」ため、5条6号イに該当しないと主張。また、「検証結果の開示によって分析法を販売事業者の都合の良いように変えることは容易でないし、新たな分析方法を開発することも困難なため、事後監視の事務遂行に支障はない」などと述べている。

 判決文では、今回開示された以外の不開示部分を開示することにより、「事業者が、消費者庁の事後監視や検証機関による問題点の指摘を免れることを容易にさせる恐れがあり、また、検証機関による忌憚のない検討結果の指摘を困難にする恐れもある」などと随所で繰り返されている。事業者が消費者庁の裏をかいて、不正な届出を行うのではないかという被控訴人(消費者庁)の憂慮を肯定。1審の判決文よりもさらに具体的な表現で裁判所側の深い懸念を示しており、不開示の取消部分以外は棄却するに至った。

 判決に対して消費者庁の新井ゆたか長官はきのう16日に開かれた定例記者会見で、「現在、判決の内容を精査中なのでコメントは控える。今後の対応については改めて報告する」と述べるにとどめた。
 一方、控訴人の代理人は「(判決では)一部開示を命じたものの、検証事業対象商品の名前、数、発売元など、公開して当然の部分のみ」とし、上告する意向を示している。

※第5条(行政文書の開示義務)
「行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」

【田代 宏】

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