東洋新薬の熊本工場で製造工程を見る 「投入」から「粉砕」まで約2時間の一気通貫生産ライン
下の写真をご覧いただきたい。今年3月下旬に取材した大麦若葉の加工工場、㈱東洋新薬「熊本工場」(熊本県菊池郡大津町)で撮影したものだ。大麦若葉が大麦若葉青汁の原料へと姿を変えていく過程が一目でわかる。
写真の一番左は、収穫された大麦若葉。根から10センチほどを残して刈り取る。その隣は、収穫した大麦若葉を工場へ受け入れた後に洗浄、そして10センチほどに裁断、さらに「ブランチング」を施した後のすがた。ブランチングとは、90度ほどのお湯で「茹でる」こと。そうすることで、大麦若葉の色味を保持できるという。

そして、それを乾燥させたものがその隣。さらにその隣は、乾燥まで進んだ大麦若葉を粉砕して粗い粉末に加工したものだ。ここまで進むと見た目も「青汁」だが、東洋新薬はそれをさらに細かく、10分の1ミリ(0.1mm)以下の大きさまで微粉砕加工する。それが写真で一番右の粉末。このように細かな粒子に加工することで、飲みやすく、かつ、水に溶けやすい大麦若葉青汁になるという。
微粉砕加工は、佐賀県鳥栖市にある同社の生産拠点で行い、容器・包装への充填(パッケージング)や品質の確認などを経て、大麦若葉青汁として消費者の下へ届けられる。
そのため、熊本工場が受け持っているのは、圃場(ほじょう)で栽培・収穫された大麦若葉の受け入れから粗い粉末加工まで。これを同社は「一次加工」と呼んでいるのだが、その工程は多岐にわたる。
収穫から一次加工まで「24時間以内」が可能な理由
順を追って見ていこう。まず、「受入検査」。土や雑草など異物の付着がないか、色味がおかしくないかなどを目視で確認する。確認基準も設けている。次に、加工ラインへの「投入」。トレーサビリティを担保するために、製造指図書の情報と現物が一致しているかを確認してから行う。確認手段はバーコードだ。そして「一次選別」に移り、専門のトレーニングを受けた従業員が雑草等の異物を選別、除去する。
次は「洗浄」。多少付着している土や泥を十分洗い落とした後、「一次裁断」へと進み、おおよそ10センチほどの長さに切り揃える。ここまでが前処理工程だ。それが終わると前述した「ブランチング」に進む。一次加工ではここが非常に重要な工程で、温度などを監視、測定しながら実行するという。
続いて「冷却」→「二次裁断」→「脱水」→「乾燥」の工程を辿る。乾燥工程は、長さが特徴の専用ラインで原料をかき回しながら効率よく乾燥させる。その後は「二次選別」へと進み、一次選別と同様に力量を認められた従業員が目視で異物の有無を確認。前の工程までに取り除くことのできなかった異物があれば除去する。受け入れからここまでですでに10工程の道のりだが、粗い粉末にするための「粉砕」は11番目の工程だ。粉砕機で1ミリ以下の粉末に加工する。

以上で終わり、ではない。続いて「マグネット」の工程に移り、金属異物が混入していないかチェックする。そして次は、アルミ袋への自動充填と水分値などの品質確認を行う「充填」工程。
以上、受け入れから充填まで全13工程を経て鳥栖の生産拠点に出荷できる段階へと至るのだが、鳥栖の生産拠点と同様に熊本工場も国際的な食品安全マネジメントシステム認証「FSSC22000」を取得。全行程を通じた衛生管理体制を敷いている。
実際の製造ラインを、工場の見学通路から見せてもらった。
「投入」から「充填」までを一気通貫に行えるよう設計された、50メートル超の長さがありそうな製造ラインが左右に1機ずつ設置されている。どちらも、「投入」から「粉砕」(粗い粉末ができる)までをわずか2時間でこなせる能力を持つという。3~4月ごろの繁忙期はほぼ毎日、圃場で収穫された大麦若葉を大量に受け入れながら、「収穫から粗い粉末加工までを24時間以内に行う」という顧客らとの約束を守れている理由の1つがこれだ。
熊本工場は、同じ敷地内に併設された第1工場と第2工場の2施設で構成されている。それぞれ役割は大麦若葉の一次加工で、製造ラインを2施設合わせて3機運用。もともと第1工場(2006年竣工)のみだったが、17年に第2工場を竣工。大麦若葉青汁の需要拡大を受けて生産能力を大きく高めた経緯がある。

ただ、工場の生産能力がどんなに髙かろうと、大麦若葉を収穫できなければ大麦若葉青汁は作れない。そのため、その製造と供給で国内最大手の一角を占める東洋新薬の熊本工場は、地域の生産者らとの相互協力の下、大麦若葉の栽培と収穫を一元的に管理している。その歴史はおよそ20年に及ぶ。
一方で、「異常気象」とも呼ばれる天候不順が続く昨今、大量の大麦若葉を毎年、安定的に確保することへの不安はないのだろうか。供給がひっ迫する可能性はないのか。次回、その答えを見にいく。
(つづく)
【石川太郎】
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