東京・神田にサプリ開発ラボあらわる 運用するのは原材料商社サンクト、OEM事業のラストピース
今月22日、東京・神田に、サプリメントや健康食品を開発したり、試作したりするためのラボがオープンした。
JR神田駅西口から徒歩5分。千代田区内神田1丁目に昨年4月竣工したオフィスビル「クラマチビル」の1階。床面積約100平方メートルのこのラボを開設、運用するのは、アミノ酸や植物抽出物などの原材料商社、㈱サンクト(東京都江東区、宍戸哲夫・今川信雄社長)だ。
ラボの名称は、『SANCT.LAB』とした。内部は、試作用の原材料サンプルを収納する特注の大型棚を備え付けた開発・試作スペースをメインとしつつ、商談・会議スペースを併設。内装は、温かみのある木目調に統一した。
「健康食品業界らしくないというか、オフィス機能も有することで、若い世代に関心を持ってもらえるラボにしたかった」と、同社のOEM事業営業担当責任者は話す。
開設当初に導入する機器類は、流動層造粒機・卓上打錠機・卓上ハードカプセル充填機・顕微鏡・水分計・粒度分布計・秤量機──など。製品の開発や試作のほか、試作製品の評価も行えるようにした。今後、必要に応じて追加していく計画。
とくに、プロテインや青汁をはじめグミなど、風味が求められる製品の開発・試作に、ラボを活用していきたい考え。「お客様と一緒になって、その場で味や食感などを作り込むことができる。その場で作り込むことでコストの決定を早く行えるし、発売までのリードタイム短縮にもつながる」(同)。
同社はまた、SANCT.LABの開設に先立ち、その「分室」に相当するラボを首都圏外に設置。東京から離れた場所に居住する製品開発・設計担当者の働き方や通勤などの負担を減らすために用意したもので、基幹ラボと同等の機器類および原材料のサンプルを取り揃えているという。
投資額は非公開だが、「求めたほとんど全てが承認された」(同)。

なぜ原材料商社がOEM事業?
サンクトは2003年1月に設立。アミノ酸や植物抽出物などのヘルスケア関連原材料の商社であると同時に、レアメタルのリサイクル事業者でもあるという2つの顔を持つ。
そんな同社が、製造・加工施設を保有しないファブレス型のサプリ・健康食品OEM事業を本格化させたのは1年半前。原材料商社としてのビジネス領域を、医薬品、サプリを含む食品、飼料と広げていく中で、必要にも迫られて品質保証部門の陣容が拡大し、現在までに総勢10人超の規模に発展。そのように品質保証体制が整った原材料商社の強みを最適化することも狙い、乗り出していた。
同社が描く、原材料商社としてのOEM事業の在り方は、いわば「餅は餅屋」だ。同事業を本格的に始めるにあたり、サプリや健康食品のOEM/ODMに精通する人材を外部登用。営業担当者、製品開発・設計担当者ともに、20年前後の業務実績があるベテランを含む多数のメンバーで同事業を推進している。
OEM事業の立ち上げから現在まで1年半の受注実績は、新製品開発のみで「50製品を優に超える」(同)という。それを可能にした理由の1つは、OEMに精通する人材が揃っていることだろう。
一方、そのOEM部隊が営業、開発した製品の製造・加工に関しては、それらを行うための設備と技術を持つ受託製造工場へ全面委託する。自社で出来ないことはやらず、「お客様のご要望と、お客様が販売しようとしている製品に最適な工場を選定して提案する」(同)ことに徹する。
その上で、顧客のイメージする製品に合わせた原材料の調達など、製品の出発点となる原材料に関わる部分で、原材料商社の本領を発揮する姿勢。原材料商社だからこそ、製品原価の中で大きなボリュームを占める原材料コストを調整できる強みも出せる。担当者は次のように話す。
「我々は原材料商社だが、(OEM事業に関しては)原材料のところで利益を得ようとは考えていない。原材料とOEMの原価構成や利益構造など理解したうえで再構築することで、全体として利益が生まれる」(同)。
めざすのは「Win-Winの関係」
ヘルスケア関連原材料の商社に、サプリや健康食品のOEM事業が掛け合わされることで生まれるのは、コスト競争力に優れた製品の提案力だ。それが「安かろう、悪かろう」であれば、誰も仕事を依頼しないし、消費者から見向きもされない。だが、同社は品質保証部門を備える。
サプリや健康食品の受託開発・製造企業にとって、都内にOEMのための開発・試作ラボまで設けた原材料商社のサンクトは、これまでいなかったタイプの新たな競合になるのか、それとも、ともに仕事を行うべきステークホルダーか。
「我々がOEMを行うことで、お客も、我々が原料を調達するメーカーも、(最終製品の)製造を委託するOEMメーカーも、そして我々も、Win-Winの関係を構築できる」。同社の宍戸哲夫社長はそう強調している。
【石川太郎】
(冒頭の写真:ラボの正面に掲げられたサイン。文中の写真:ラボの内部。カウンター上に機器類が置かれる。左奥の棚は、試作用原材料サンプルの収納スペース。いずれもサンクト提供)
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