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最高裁、だいにち堂の上告棄却 
判決文全文掲載「措置命令」は合憲!?

 アスタキサンチン配合サプリメントの広告をめぐり、景品表示法違反に問われた㈱だいにち堂(長野県安曇野市、皆川和恵社長)が消費者庁を相手取って処分の取り消しを求めた裁判「措置命令処分取消請求事件」(令和3年(行ツ)第33号)で、最高裁は8日、㈱だいにち堂の上告を棄却した。

 同社は、健康食品『アスタキサンチン アイ&アイ』を販売する際に全国紙に掲載した広告で、「ボンヤリ・にごった感じに!!」、「ようやく出会えたクリアでスッキリ!!」などと表示。眼鏡をかけて読み物をしている中高年男性の写真も掲載していた。それに対して消費者庁は、サプリメントの摂取により目の症状を改善する効果が得られるかのような誤認を与えると指摘。景表法で禁止する「優良誤認表示」に当たると判断し、措置命令を出した。

 措置命令に対して同社は「ボンヤリ」、「にごった」について、目の見え方が不良である状態を意味すると説明。「クリア」、「スッキリ」については、目の見え方が良好な状態を意味すると説明。東京地方裁判所に措置命令の処分の取り消しを求めて2018年8月に提訴したが、20年3月3日に棄却。同年10月、高裁でも棄却。21年2月には消費者庁が課徴金の納付命令を出していた。

 判決文は裁判長の言葉に要約されているため、だいにち堂の訴えがどういうものだったのか、今ひとつはっきりしない。記者の見るところ、1審・2審とは争点にズレを感じるのである。

 法曹関係者によれば、「地裁・高裁が事実審であるのに対し、最高裁は事実審ではなく法律審、すなわち評価を行うところ」とし、上告するには憲法違反などのいくつかの条件を満たす必要があるという。

 判決文では、「措置命令」が憲法第21条(集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない)、22条(何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない)に違反しないとしているが、どのような理由で広告表示の合理的な裏付けを否定したのかについては明確な説明がない。事業者が表示の裏付けとなる合理的根拠として客観的に評価される資料を一定期間内に提出しない場合に措置命令が下されることは当たり前のことで、その根拠法が公共の福祉に合致するというのも理解できる。しかし、だいにち堂は同社が合理的根拠だと信じる範囲で消費者庁に資料を提出し、それが下級審では合理的根拠とは認められなかったわけである。ではその理由は何か?それが知りたいのだ。

 これでは、だいにち堂が上告する際に何を争点としたのか、なんらかの意図で無理やり上告したのか、分からない。無理な理由を付けて上告したがゆえに、余計な判例を1つ作ってしまったなどとと、業界から非難されることがなければよいが。

 取材に応じた消費者庁の担当官は、「最初の争点が大きく変わったということではないと思う。上告の理由によるのかもしれない」とコメント。だいにち堂の意向で同社代理人に取材したものの、「訴訟に関わることは一切答えられない」とノーコメントだった。

 判決文全文を以下に掲載する。

<主 文>
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

 上告代理人小磯正康ほかの上告理由について代理人小磯正康ほかの上告理由について

 1不当景品類及び不当表示防止法(以下「法」という。)5条1号は,事業者は,自己の供給する商品又は役務(以下「商品等」という。)の品質,規格その他の内容(以下「品質等」という。)について,一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示し,又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品等を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であることを示す表示であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの(以下「優良誤認表示」という。)をしてはならない旨を規定する。

 法7条1項は,内閣総理大臣は,法5条の規定に違反する行為等があるときは,当該事業者に対し,その行為の差止め又はその行為が再び行われることを防止するために必要な事項等を命ずることができる旨を規定する。そして,法7条2項は,内閣総理大臣は,同条1項の規定による命令(以下「措置命令」という。)に関し,事業者がした表示が法5条1号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは,当該表示をした事業者に対し,期間を定めて,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ,この場合において,当該事業者が当該資料を提出しないときは,同項の規定の適用については,当該表示は同号に該当する表示(優良誤認表示)とみなす旨を規定する。

 2 法7条2項は,事業者がした自己の供給する商品等の品質等を示す表示について,当該表示のとおりの品質等が実際の商品等には備わっていないなどの優良誤認表示の要件を満たすことが明らかでないとしても,所定の場合に優良誤認表示とみなして直ちに措置命令をすることができるとすることで,事業者との商品等の取引について自主的かつ合理的な選択を阻害されないという一般消費者の利益をより迅速に保護することを目的とするものであると解されるところ,この目的が公共の福祉に合致することは明らかである。
 そして,一般消費者は,事業者と商品等の取引を行うに当たり,当該事業者がした表示のとおりの品質等が当該商品等に備わっているものと期待するのが通常であって,実際にこれが備わっていなければ,その自主的かつ合理的な選択を阻害されるおそれがあるといい得るから,法5条1号の規律するところにも照らし,当該商品等の品質等を示す表示をする事業者は,その裏付けとなる合理的な根拠を有していてしかるべきである。また,法7条2項により事業者がした表示が優良誤認表示とみなされるのは,当該事業者が一定の期間内に当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと客観的に評価される資料を提出しない場合に限られると解されるから,同項が適用される範囲は合理的に限定されているということができる。加えて,上記のおそれが生ずることの防止等をするという同項の趣旨に照らせば,同項が適用される場合の措置命令は,当該事業者が裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を備えた上で改めて同様の表示をすることについて,何ら制限するものではないと解される。そうすると,同項に規定する場合において事業者がした表示を措置命令の対象となる優良誤認表示とみなすことは,前記の目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものということができ,そのような取扱いを定めたことが立法府の合理的裁量の範囲を超えるものということはできない。

 3 したがって,法7条2項は,憲法21条1項,22条1項に違反するものではない。このことは,当裁判所大法廷判決(最高裁昭和29年(あ)第2861号同36年2月15日大法廷判決・刑集15巻2号347頁,最高裁昭和45年(あ)第23号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号586頁)の趣旨に徴して明らかである。論旨は採用することができない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 渡 惠理子 裁判官 戸倉三郎 裁判官 宇賀克也 裁判官林 道晴 裁判官 長嶺安政)

【藤田 勇一】

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