新規素材、マウンテンキャビアエキス 血糖値に対応 オリザ油化が開発、今秋発売へ
ブドウ糖の吸収抑制機能が示唆
海外では「マウンテンキャビア」とも呼ばれる、「とんぶり」を原料にした健康食品用原材料(抽出物)を新たに開発し、今秋にも販売を開始すると、健康食品原材料メーカーのオリザ油化㈱(愛知県一宮市、村井弘道代表)が22日、発表した。ブドウ糖(グルコース)の吸収抑制機能を特徴とする新規の血糖値コントール素材として提案する。年内にも、外部機関を介したヒト試験を実施し、来春以降、機能性表示食品対応素材として展開していきたい考えだ。
四半世紀前の文献に着目 温故知新の新成分
同社が新たに開発したのは、「マウンテンキャビアエキス」を製品名とする健康食品用の原材料。その原料となる「とんぶり」は、秋田県大館市の特産品として知られる、ホウキギという植物の成熟果実を加工したもので、食感や見た目がキャビアに似ていることから海外では「マウンテンキャビア」などと呼ばれる。同社によれば、マウンテンキャビア(とんぶり)を健康食品原材料に応用開発したのは同社が初となる。
同素材の有効成分(規格化成分)は、「momordin Ic」というサポニンの一種。このサポニンに血糖値上昇抑制機能があり、また、マウンテンキャビアの活性本体でもあることを、およそ25年前、元京都薬科大学の吉川雅之教授らの研究グループが論文発表していた。この論文に同社は着目し、同成分の含有量を1%以上で規格化したマウンテンキャビアエキスを初めて開発した。
従来の血糖値コントロール素材とは「異なる」
同社によれば、同エキスの開発背景には、吉川氏らの研究グループが、マウンテンキャビアに含まれるmomordin Icの有効性について、ラットのグルコース(単糖)負荷試験で血糖値の上昇抑制作用を確認、報告していたことがある。また、その作用メカニズムについて、胃から小腸への糖質の移行抑制および小腸粘膜内のグルコーストランスポーターの抑制であることを報告していたこともあり、α-グルコシダーゼ阻害による血糖値コントロール素材とは異なり、「オリゴ糖や麦芽糖よりも低分子化された(清涼飲料水などに用いられる)ブドウ糖のような糖質も含めた幅広い糖質吸収抑制を促す」ことが期待できたという。
実際、開発したマウンテンキャビアエキスを使い、社内ボランティアを対象にしたグルコース負荷試験を行ったところ、糖質の摂取に伴う血糖値上昇の遅延(抑制)が認められた。グルコース50gを摂取する30分前に同エキスを200mg摂取した群では、摂取30分および60分後の血糖値がプラセボ群と比べて有意に減少。また、同様に400mg摂取した群では、同じく30分および60分後の血糖値変化量と血中濃度曲線下面積について、プラセボ対比で有意な減少が見られたという。
機能性表示食品対応素材へ 年内にもRCT実施
このボランティア試験に基づけば、マウンテンキャビアエキスの1回あたり有効摂取量は200~400mgと考えられる。また、「1日のうちで最も糖質摂取の多い食事前の摂取が効果的だと考えられる」と同社では説明。ただ、現時点ではあくまでも社内ボランティアを対象にしたヒト試験に基づく知見のため、今後、外部の第三者機関を介したヒト試験(RCT)を実施し、一定のエビデンスを確立させたい考えだ。これより、機能性表示食品対応素材として展開できるようにする計画を、同社では掲げている。
今後実施するヒト試験は、同社地元の愛知県が運用する研究開発・実証実験に関する助成制度「新あいち創造開発補助金」を活用して年内に実施、完了させる。その後、必要な資料を整えるなどして、「来春には消費者庁への届出を完了させる予定」だ。
同社によれば、マウンテンキャビアの機能性については、脂肪の吸収を抑える働きも示唆されている。そのため同社では、「将来的には、マウンテンキャビアエキスを、糖と脂肪の吸収抑制に関するダブルヘルスクレームを狙った機能性食品素材にしていきたい」としている。
【石川 太郎】
(冒頭の画像:社内ボランティア試験=グルコース負荷試験=の結果。マウンテンキャビアエキスを摂取することで血糖上昇が抑えられた。オリザ油化の報道発表資料より)
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