始まった9年目の制度運用 【機能性表示食品特集】届出6,000件超えて次の山は
機能性表示食品制度の運用が9年目に入った。これまでの届出件数は、500件を超える取り下げ分を差し引いた実数でも6,000件を突破。機能性表示食品の市場規模も、5,000億円台の半ばに入ったと推計されている。制度施行10年の節目を前に順風満帆。そのように評価することもできそうだが、本当にそうか。機能性表示食品の2022年度を振り返ると、この制度に対する期待と不満が同時に育っている様子が見えてくる。
2年連続で1,400件突破 届出実数6,000件超える
機能性表示食品の届出件数は22年度(22年4月~23年3月)も大きく積み上がった。消費者庁が同年度に公開した届出の件数は、この記事を執筆している5月2日時点で1,368件。この数字は、年度末の3月31日まで6営業日ほど残す、同22日までに行われた届出の公開件数であるため途中経過。最終的には2年連続で1,400件を超えると予想できる。
届出件数が右肩上がりで増える状況は、制度施行から8年目を迎えた22年度も変わらなかった。食品の機能性を、科学的根拠に基づき、事業者の責任で表示する機能性表示食品制度が施行されたのは2015年4月。現在すでに今年4月以降に届け出された23年度分の届出の公開も始まっている。故・安倍晋三元首相が推進した「規制改革」の強力な後押しを受けて施行された機能性表示食品制度の運用は9年目に入った。
これまでの年度別届出公開件数をまとめると、制度施行初年度の15年度が307件、翌16年度は620件と倍増した。翌17年度は452件と減少したものの、18年度以降は690件、882件(19年度)、1,067件(20年度)、1,445件(21年度)と、文字通り「右肩上がり」に増えていった。22年度も、過去最高レコードの21年度に迫る件数に達しそうだ。
また、制度施行以来の届出件数を見ると、5月2日時点で累計6,839件。機能性表示食品には3つの区分があり、区分別の届出件数を見ると、サプリメントが3,668件、サプリメント以外の加工食品が2,979件、生鮮食品が192件となっていて、サプリメントが過半数を占める。
一方で、販売の終了や発売の見合わせ、届出後に分かった科学的根拠の不備など、さまざま理由で届出者である事業者が自ら取り下げた届出も少なくない。その数は約654件(同日時点)。全体の1割弱に相当する数が取り下げられたことになるが、それを差し引いても6,000件を超えたのが22年度だった。
制度への評価が定着 一方で消えない不満
このように届出件数が増え続ける背景には、機能性表示食品制度に対する評価の定着がある。国による製品個別の許認可が必要な特定保健用食品、国が定めた規格基準からはみ出すことが許されない栄養機能食品のいずれとも異なる、国が定めた一定の指針を踏まえた科学的根拠などの資料を消費者庁に届け出るだけで済む、機能性表示食品制度に対する健康食品をはじめとする食品関連事業者からの評価は、かなり高い。
編集部が4月に実施したウェブアンケート取材(有効回答118件)で、健康食品関連事業者に機能性表示食品制度を評価するかどうかを尋ねたところ、「とても評価している」が19%、「評価している」が64%と、評価していると答えた事業者が合わせて8割を超えた。「評価していない」は9%、「全く評価していない」は1%と合わせて10%にとどまった。
制度が収益に貢献しているかどうかも尋ねた。その結果、「とても貢献している」と「貢献している」が合わせて57%と過半数に達したほか、「今のところ貢献していないが今後、貢献する可能性がある」と答えた事業者が27%。収益への貢献も理由にこの制度を評価している事業者が非常に多いことがうかがわれる。
しかし、その一方で、事業者は、この制度に対して相反する感情を抱いている。制度を評価しながらも不満を感じている事業者が非常に多いのだ。機能性表示食品制度に対して大なり小なり「不満を感じている」と答えた事業者が全体の7割超に上った。
不満を感じていると答えた事業者に不満を感じる理由を複数回答で尋ねたところ、「届出資料の提出から届出公開までの期間が長い」、「これまで不備指摘されていなかった部分に対して不備を指摘されることがある」、「届出実績のあるヘルスクレームを届け出ている一方で差し戻される」を挙げる事業者が多かった。
こうした不満の矛先は、事業者から届け出された資料を確認し、届出番号を付与する消費者庁に向けられている。特に、届け出された資料に不備を指摘し差し戻すか、差し戻さないか。その基準や方針がいつのまにか変わり、以前に届け出たものと同じであるにもかかわらず不備を指摘されて差し戻される事態が生じる問題は、以前から、「ゴールポストを勝手に動かされる」として事業者から強く疑問視されていた。【石川 太郎】(⇒つづきは会員専用ページへ)
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