厚労省、健康被害疑い情報の収集強化 平成14年通知改正へ、保健機能食品も対象に
厚生労働省が健康食品との関連が疑われる健康被害情報の収集を強化する。そのために2002年に定めた通知「健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領」(平成14年通知)を改正する。埋もれがちな健康被害疑い情報を可能な限り多く吸い上げ、因果関係を適切に評価できるようにし、必要に応じた措置を迅速に実行できるようにする狙い。機能性表示食品などの保健機能食品も対象に情報収集する。生鮮食品は対象外。
平成14年通知の改正は、パブリックコメントを行った上で実施する。厚労省は、健康被害疑い情報の収集強化のほかに、製造・品質管理の面からも健康食品の安全性確保に向けた取り組みを強化する。そのため、適正製造規範(GMP)に取り組むことを事業者に求める通知「『錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について』及び『錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン』」(平成17年通知)の改正も行う。両通知とも来年4月までに改正される見通し。
平成14年通知では、健康食品が原因と疑われる健康被害の訴えが消費者から保健所に届いた場合、厚労省に報告することを都道府県など自治体に求めている。ただ、報告件数は少なく、厚労省食品基準審査課新開発食品保健対策室によると、20年6月から22年12月まで2年半の間に寄せられた報告は18件にとどまる。
一方、健康食品のうち、健康被害疑い情報の報告を食品衛生法で事業者らに義務付けている指定成分等含有食品に関しては、ことし5月1日から8月末までの4カ月間に36件の報告が寄せられている。厚労省や有識者らは、現行の14年通知では、指定成分含有食品以外の健康食品との関連が疑われる健康被害の実態を可視化できないと見ているようだ。自治体からは、平成14年通知を認知していない行政機関もある、とする見方も上がる。
厚労省は同通知を改正するにあたり、自治体や業界団体などから意見を聴いた。その上でまとめた改正案を20日に公表。それによると、都道府県から厚労省に報告された健康被害疑い情報への対応については、有識者で構成するワーキンググループで評価しつつ関連情報を継続的に収集・蓄積した上で、「必要に応じて、都道府県等と連携し、製品名の公表などによる注意喚起、食品衛生法第6、7条に基づく販売禁止措置、同法第8条に基づく指定成分措置、同法第13条に基づく規格基準の設定等の必要な対応を行う」と明記する。どの措置を行うにせよ、因果関係を適正に評価できるかが焦点になる。
改正案は20日の薬事・食品衛生審議会(新開発食品評価調査会、指定成分等含有食品等との関連が疑われる健康被害情報への対応ワーキンググループ)で審議のうえ了承された。審議では、(公財)日本健康・栄養食品協会の青山充常務理事が意見を述べ、業界からは、安全性が評価されている保健機能食品は対象から除外すべきだとする意見などが上がっていることを伝えた。改正案は今後、新開発食品評価調査会の親に当たる審議会で議論されたのち、年末までにパブリックコメントの募集が始まる見通し。
【石川太郎】
関連資料(厚労省ホームページへ)
:いわゆる「健康食品」との関連が疑われると報告がなされた健康被害情報の取扱いについて(案)
:検討課題等に関する通知改正(案)(新旧対照表)
:いわゆる「健康食品」に関する厚生労働省への報告要否確認シート(案)
:指定成分等含有食品以外のいわゆる「健康食品」との関連が疑われる健康被害受付処理票(案)
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