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制度が業界のリテラシーを向上させた 【機能性表示食品特集】しかし課題も、エビデンスの強さどう伝える?

㈱食品機能研究所 代表取締役 勝田徹 氏

制度の意義、表示を通じて商品の魅力伝える

 届出件数が6,000件を超え、1つの形が作られたとは思う。ただ、そこからさらに抜け出すものがまだまだ少ない。抜け出す、と言うのはつまり新規性だ。

 最近の届出を見たり、届出に関するコンサルティングをしていて感じるのは、新しいヘルスクレームに挑戦しようとする風土が以前に比べて薄れてきたということ。機能性表示食品制度の最大の特長は、表示を通じて、お金を支払って購入したいと消費者に思わせる魅力を伝えられる点にある。そうした魅力のある機能性表示にトライしようとする事業者が減ったように思う。アグレッシブに新しいヘルスクレームに取り組み、他の商品と差別化しながらガンガン売っていこうとする事業者が少なくなったと感じる。

 ただ、そうなって仕方のない面もある。今は、届出実績のあるヘルスクレームさえ通らない場合があるからだ。3年前に通せていたものが、今になって「NG」だと言われる経験を私もした。それもあって、言葉(ヘルスクレーム)の安全性を追求する傾向が、原材料事業者から最終商品販売会社まで、強まっている気がする。

 それに、いわば「保険」のために届出を行う事業者も増えてきた。そうした事業者は決して無理な届出をしない。勢い、同じヘルスクレームを行う届出ばかりが増えていくことになるし、届出に関するテクニックばかりがもてはやされることになる。そうすると、ヘルスクレームに対する創意工夫が失われ、制度の硬直化が進んでしまう恐れがある。それを避けるためにどうすればいいのか。そろそろ本気で考える必要がある。

業界成長の背景にビジョンの提示

 しかしながら、機能性表示食品制度のおかげで、健康食品業界の、特に販売会社の、健康食品の科学的根拠や表示に対するリテラシーが大きく高まったと思う。個人事業主に近い販売会社が、機能性表示食品を販売したい、と私のところへ相談に来る。健康食品について、機能性表示食品について分からないことばかりだったのに、少しずつ理解していく。そうした状況が生まれた。これはものすごい成長だ。

 機能性表示食品制度の最大の目的は、健康食品を通じた日本経済の活性化である。それを実現するためには、事業者がどのようなリテラシーをもって、どんなビジョンをもって健康食品に取り組んでいくのか、ということが大きなテーマになる。その中で、機能性表示食品制度は、消費者からの信頼、機能性に関する科学的な根拠、安全性や品質の確保などといった面で、健康食品に関わる事業者にとって1つの指標になった。健康食品に関するリテラシーやビジョンを示してくれたということ。その意味で、機能性表示食品に取り組んだこの数年間で健康食品業界は大きく成長していったと思う。

異なるエビデンスの強さ、一方で同じヘルスクレーム

 今後は、表示する機能性に関するエビデンスの強さや質の違いをどう消費者に分かりやすく伝えるかが課題になると考えている。

 なかば定型文化している現行のヘルスクレームや、消費者庁のウェブサイトなどで公開される届出資料などを見て、エビデンスの強さや質を読み取ることは難しい。一方で、同じヘルスクレームでも、エビデンスの強さや質には強弱がある。例えば、体重減少機能について、試験期間12週のうち8週目だけ有意な減少を示すものがあれば、4週目から12週目にかけて有意な減少を示すものものある。どちらがエビデンスとして強いかは明らかだと思うが、どちらも同じヘルスクレームになる。これでは消費者の商品選択に資するとは言えないし、何より、消費者の健康リテラシー向上にもつながらないだろう。

 現行制度の枠内では、消費者がエビデンスの質を評価しにくい。そのため、まずは第三者評価者が科学的にABC評価し、それを消費者が真っ先に参考にできるような信頼のおける運営と周知活動がされるようになることが望ましい。

(聞き手・文:石川太郎)
『ウェルネスマンスリーレポート』2023年6月10日号(第60号)より転載

勝田徹氏プロフィール
2019年9月、㈱食品機能研究所を設立。元通販会社㈱リフレ代表取締役。商品開発を担当。起業後はサプリメントの商品開発、マーケティング、広告表示、機能性表示食品の届出を中心にコンサルティングを行う。

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