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スーパーオメガ3事件(後) 健康食品広告・表示の「判例」解説

堤半蔵門法律事務所 弁護士 堤 世浩 氏

<本判決の分析>

高裁は「成分(表示)」、「効能効果表示」、「販売の際の演述」に着目して判断を下した。

まず、1点目の「成分(表示)」については、日本薬局方に収められているもの、医薬品として承認が得られているものが成分として含まれ、かつその旨の成分表示が行われており、これらは医薬品該当性を認める強い要素となった。

2点目の「効能効果表示」はどうか。医学博士などの第三者の発信情報という体裁を取りながら、「どんなビタミンよりも強烈」、「心臓病を打ち負かす」、「体内に蓄積した多量のコレステロール・中性脂肪・トリグリセロイド(循環脂肪)を短期間に、しかも急速に中和して、動脈壁を刺戟し、血管成長因子を分泌させて、血管を若返らせる。特に脳疾患・動脈硬化症・心臓病・がん疾患に対し驚異的力がある」などと表示し、『スーパーオメガ3』に医学的効能効果があるとうたっていることは明らかであった。

3点目の「販売の際の演述」についても、上記内容をより詳細にした販売員用のパンフレットが印刷され、顧客にこのパンフレットを示して、「これを飲めば全ての病気に効く。私も昔心臓病を患ったが、これを飲んで生き返った。1回3錠、朝昼晩に飲めば、高血圧症などはすぐに治る。今世紀最大の発明だ」、「脳や成人病に効く。中性脂肪を取り、血液をきれいにして若返らせる」などと説明し、販売時の演述でも医学的効能効果を明言していた。

これらの事情によれば、通常人が『スーパーオメガ3』について、「人の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されることが目的とされ、または人の身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」として販売されていると考えること、つまり「医薬品」であると考えることは容易に認定できるだろう。

<考慮されない医薬品であることを否定する記載>

他方、高裁は、『スーパーオメガ3』の容器に「栄養補助食品」、「健康増進・美容にご利用ください」という医薬品であることを否定するような記載があった点については何ら考慮していない。

以前に執筆した「せいちょう事件」でも高裁は、商品説明書やパンフレットに「清涼飲料水・栄養飲料」と記載し、あるいは「薬ではない」と記載することにより、医薬品に当たるとされないような措置を講じていた点について、「厚生省の許可なく製造したものであるために表面を取り繕ったにすぎ(ない)」と一蹴した。

これらのことからも、医薬品であるかどうかの判断は、実態を踏まえて実質的に行われるものであり、表面だけを取り繕っても大きな意味はないことがわかる。

<極めて悪質という評価を加味>

いわゆる健康食品を販売する際に、「栄養補助食品」、「健康増進・美容にご利用ください」などと医薬品該当性を否定する表示を施すだけでは十分でないことを改めて認識しなければならない。

本件で立件された被害額は28万8,000円と大きくなかった(もちろん実際の被害額はこれに留まらないと考えられる)。それでも立件に至った背景には、高血圧症、脳疾患、動脈硬化症、心臓病、がん疾患など、放置すれば死に至る恐れがある重大な病気について、医学的効能効果をうたった点が、適切な医療を受ける機会を保障するという薬事法(現・医薬品医療機器等法)の立法目的からして、極めて悪質という評価もあったものと考えられる。

(了)

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