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九州の通販市場を展望する~ウィズコロナへ向けた新たな挑戦始まる(後)

<コロナ禍が幸い 手頃な広告枠を入手>

 国内外から多くの観光客が訪れていた九州にとって、サービス業や対面販売事業者は他地域同様苦戦を強いられている。一方、九州に数多くある通販会社は、取り扱い商材によって多少の差はあるものの、全体的には目立った影響はなく、むしろ業績が伸びたという事業者も多い。これまで苦戦が続いていた九州通販業界だが、コロナ禍による通販ニーズの高まりが、業績回復のきっかけになりそうだ。

 その1つの理由が広告で、特にテレビコマーシャルの出稿が増えたことが大きな要因となっている。これまで、人気番組やゴールデンタイムの比較的視聴率が高い時間帯のテレビコマーシャルは、大手企業がほとんどその枠を押さえており、スポットで枠が空いたとしても費用が高く、中小企業はとても手が出せない状況だった。

 しかし、緊急事態宣言やSTAY HOMEで、旅行会社やサービス業を中心とした大手企業の広告出稿がなくなり、その枠がお手頃な価格で回ってきたという。数多くの通販事業者を支援するやずやグループ㈱未来館(福岡市南区)の西野博道社長は、「消費者の在宅率の良さもあり、CPO(Cost Per Order)が下がり効率よく予算が使えたようだ。さらに、消費者の健康意識がより一層高まったことも、健康食品を取り扱う通販会社にとっては追い風となっているのではないか。これをチャンスと捉え、コロナ禍で自社の商品を選んでくれた健康意識の高い消費者を大切にし、ファン化していくことが今後のポイント」と指摘する。
 
<実務面でも柔軟に対応 在宅コールセンター稼働>

 実務の面ではどうか。実際、緊急事態宣言下は在宅勤務などのリモートワークを採用する事業者が多かったようだ。解除後から現在は、いわゆる三密を避ける対策を講じながら、時差出勤や部分的なリモートワークを取り入れた上で業務を行っている。それでも通販ビジネスを支えるコールセンターでは、オペレーターの体調管理の徹底や出勤率の抑制、座席での飛沫拡散対策など出来得る限りの対策を講じながら業務を進めている。緊急事態宣言下の状況について、コールセンターのアウトソーシングを請け負うある事業者は、「緊急事態宣言下もコールセンターは稼働させていた。むしろ通販ニーズの高まりで依頼が増え、人員の配置に苦労した。初めてのことで、どのような対応をしなければならないか迷いながらではあったが、何とか感染者も出ず回すことができている」と話す。

 自前のコールセンターを持つ㈱エバーライフ(福岡市中央区)は、時差出勤などで対応しつつ、一部のスタッフによる在宅のコールセンターを稼働させた。
 インターネット環境も必要に応じて支援し、4月から1カ月間運用したという。現在は、通常の体制に戻しているが、それでも月に1度はテストの意味も含めて在宅コールセンターを運用している。担当者は、「コロナに限らずBCPの観点から、在宅コールセンターの必要性は高まると思われる。セキュリティーをさらに強化するなど、お客様に安心して購入していただけるよう設備投資を進める」と話す。
 
<コロナがもたらした「セルフケア」のすすめ>
 
 ウィズコロナ・アフターコロナを見据え、新たなビジネスを展開する動きも見られる。新日本製薬㈱(福岡市中央区)は、個人の自律したヘルスケアを支える「スマートヘルスケア事業」を立ち上げた。その第1弾として、『美活プロテイン』を10月16日に発売。同社によると、「新型コロナウイルスの経験を経て、自分自身で健康を管理する“セルフディフェンス”が注目を集めている。同事業は“Evidence”(ドクター監修による確かな品質の商品)、”Smart Life“(自律的でスマートな価値観と行動)、”Tech”(身体の効果の見える化)を価値とし、ブランドを構築、順次展開していく」としている。

 青汁で創業し、24年にわたり事業を展開する通販会社のグリーンハウス㈱(福岡市中央区)は、これまで青汁以外にも数多くの新商品を開発してきた。化粧品事業への参入や5年前には九州産直事業もスタートした。今後、より一層、セルフメディケーションの重要性が増すとして、これまでのオリジナル商品だけでなく、消費者ニーズに基づいた商品提案を行う健康総合企業を目指す方針だ。

<北海道から九州へ進出>

 北海道札幌市を基盤とする北武グループの医薬品・保健機能食品・化粧品の試験実施施設支援機関として2001年10月に設立された㈱クリニカル・サポート・コーポレーション(北海道札幌市)は、九州支店で食品のSMO事業を本格化させる。福岡市内の福岡記念病院併設の健診センター内で食品試験を開始し、すでに案件が動き始めている。
 PETなど最新の医療機器も利用可能。病院では健康診断事業も行い、対象被験者の募集も対応するなど、試験に関するサポートを全て同社が行う方針。担当者は、「これまでは医薬品の治験に注力してきたが、食品のエビデンスに対するニーズが高まることが予想される。大学などの協力機関と連携し、九州の食品企業のサポートを行いたい」と話す。

【藤田 勇一】

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