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中西教授、「老化」をテーマに講演~龍泉堂学術セミナー 老化を克服すれば病気から解放される

 ㈱龍泉堂(東京都豊島区、塩島由晃社長)が開催した学術セミナーで、基調講演に登壇した東京大学医科学研究所所長・教授の中西真氏が、「老化」をテーマにとても興味深い報告を行った。題して「老化を克服し健康長寿を目指す」。
 人間の最大寿命は120歳程度とされているが、健康寿命を限りなく最大寿命に近づける方法が老化の防御にある。老化細胞が増加することで臓器に慢性炎症を起こし、やがて人は死に至る。同氏は、老化速度を遅らせるためのメカニズムを最新の研究を紹介しながら順序立てて説明する。

 中西教授は、秦の始皇帝をはじめ、古来から権力者が追い求めてきた「不老不死」について話した。「なぜ人は老いるのか」との問いに対し、「時間と共に進行する現象を『老化』と呼ぶ」と定義した。

 さらに、淡水産の無脊椎動物「ヒドラ」が、研究者30人がかりでおよそ1,400年を生きることを突き止めたと述べた。なぜヒドラが死なないのか? 老化しないとされるこの多細胞生物の1つ1つの細胞に分けて、その機能を解明中とのことで、理解が進めば人間も不老不死を得ることができるかもしれないと述べ、聴講者を驚かせた。

50歳がターニングポイント

 中西氏は、老いをめぐる議論について、「実は非常に長い歴史を持った科学的な議論」と説明する。日本人の平均寿命は延びているが、男性よりも女性の方が7年長い。平均寿命と健康寿命を比べると、健康寿命の方が10年ほど短い。しかし、その理由が分からない。

 3大疾患である「がん」、「心血管疾患」、「脳神経疾患」の罹患率は50歳前後で急増する。医療費も50代を境にますます増加する。新型コロナの感染者は20代30代に多いが、死亡者は50歳以上で急増する。50歳という年齢が最も老化を自覚する年齢であり、死亡率も上昇する。50歳という年齢が現在、老化現象の大きなターニングポイントであるとの見解を述べた。

 これらのことから、「細胞内のDNAやエピゲノム、染色体末端の短縮などが老化に関与している。老化は独立した要因ではなく、複数の要因が関連して進行する」とし、老化を理解し克服できれば、病気から解放される可能性がある、そして老化に関する研究こそが究極の予防医学につながるだろうと主張した。

老化は遺伝ではなく環境が左右する

 予防医学には公衆衛生学があるが、それだけではない医療の介入による病気予防も含まれるとの説を展開した。

 実例として、アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝子検査で判明した乳がんリスクに対する乳部切除の例を挙げた。また、ワクチン接種やヘリコバクターピロリ菌除菌による胃がんリスクの低減例も挙げた。
 ただし、老化細胞の増加は遺伝子ではなく、環境因子が強く作用していると力説した。
 
 同氏は、「最大寿命と老化の仕組みは全く別モノ」という。最大寿命を決める仕組みは元々ゲノムにプログラムされており、ほぼ120歳が最大寿命となる。これは、過去に長生きした人々の記録をたどり、8年ほど前に判明した。他方、「老化を制御する仕組み、すなわち健康度を低下させる仕組みというのは、かなり介入できるということが最近分かってきた」と、説明を続ける。
 
 人間はもとより、マウスや馬など多くの生物が加齢に伴い死亡率が上昇するが、カメやワニ、ハダカデバネズミなどは加齢に伴う死亡率の上昇が見られない。つまり、老化速度が遅いことが判明した。ゾウなども、老化細胞が溜まらないために病気になりにくいし、老化による病気もほとんど発症しない。
 これらのことから、老化しないためには老化細胞の蓄積を防ぐことが関連していることが分かった。

 さらに進めた研究で、カロリー制限が大きく関わることも分かった。米国ウィスコンシン大学と国立老化研究所が行った大規模研究で、必要カロリーの8割程度を摂取したサルの方が、健康寿命が長いという結果が報告された。また、50~60%では逆に健康寿命が短くなるという。

キーワードはDNAのメチル化
 
 中西氏は、「DNAのメチル化」を老化のキーワードとする。
女王蜂と働き蜂のいずれが誕生するのか、その分かれ目となるDNAのメチル化について、そのメカニズムを紹介した。
 蜂は同じゲノム情報を持っている。いわゆるクローンだが、巣の中には働き蜂もいれば女王蜂もいる。この2つの個体は体の大きさも違えば、卵を産むかどうかという性質の違いもある。
 さらに老化についても異なり、女王蜂の寿命は働き蜂に比べて30倍から40倍と長い。ローヤルゼリーを食べると女王蜂になると言われている。このように、栄養によって運命が大きく変わってしまう。その仕組みが一体どうなっているのかというと、エピゲノムというゲノム情報の活性を制御する仕組みによって変わってくるということが分かっているというのである。
 働き蜂と女王蜂の違いを生み出すのは、「DNAのメチル化」という現象によって制御を受けているせいだという。

 我々個人にとって、同じ同級生でも、若々しくていつも元気そうな人もいれば、年の取り方が早いと思われる人もいる。同じ年齢であっても老化の速度が全く違う。その老化の速度が違った場合、何をもって正確な老化を測定したら良いのかということが大きな目標になる。
 最近の研究から、それぞれから細胞を取ってきて、DNAのメチル化の程度を調べてみると、その人の正確な老化度を測定することができるということが分かってきたそうだ。

メチル化の有無が遺伝子を左右

 このDNAのメチル化とは何か――。人間のゲノム情報DNAは、核の中の染色体にあるA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類でできている。核の中にあるDNAを構成している塩基のうちの1つである「シトシン」という塩基でメチル化が生じている。これが作られるとどういうことが起こるのか? 
 我々の体を構成している細胞は全て同じゲノム情報によってDNA配列が行われているが、神経の細胞と腎臓の細胞、肝臓の細胞は形も違えば、大きさも違うし、機能も違う。これらの違いを生み出しているのは、このDNAのメチル化がどの領域にどれぐらい入っているかによって決まっている。

 このDNAのパターンが重要になる。具体的に何をやっているかというと、DNAがメチル化されていると、その下流にある遺伝子が働かないようになるということが分かっている。メチル化されていないところだけが働いていて、メチル化されると働かなくなる。このような遺伝子が働くかどうかをスイッチしているのが、このメチル化という情報になる。

 しかし時に、このメチル化において、DNA情報が細胞分裂の際にいいかげんにコピーされて失われる情報が出ていたりするのではないかとの仮説がある。そうして失われた細胞がまた、時に復活し、老化を早めたりする。
 中西氏は、「ゲノム配列とはものすごく正確で、ものすごく高性能なコピー機でコピーして、何1つ間違いないような黄金のコピー機だが、DNAメチル化というのは、もしかしたら非常にオンボロのコピー機であって、ある部分が消えたりしていることで情報が失われている」と説明する。

 古来、眠り続けていたようなレトロ・ウイルスの遺伝子も、普段はメチル化されて眠り続けているのだが、それがDNAのメチル化から抜けていくことで再びよみがえり、活躍し始め、老化細胞が炎症を引き起こすことで、臓器組織の機能が低下し、老化の誘導を引き起こす。「これが老化の本体であるということが分かってきた」と説明した。

臓器に慢性炎症をもたらす老化細胞

 老化の原因、あるいは老化の状態というのは、慢性炎症ということが分かってきた。老化した人というのは、臓器の中に慢性炎症が起こっている。人間は年を取ってくると、メチル化が外れることでウイルスが活性化するなどし、老化細胞がたくさん溜まってくる。そうすると、臓器組織に慢性炎症がもたらされる。これが臓器などの機能低下による老化の原因を作る。がんなどの多様な問題の発祥地になる。

健康寿命を限りなく最大寿命に近づける

 最後に同氏は次のように将来に期待を込めた。
 環境要因によって老化というのが大きく影響を受けているので、これは医療として介入して老化を防ぐことができる。いわゆる健康寿命を最大寿命に対して限りなくゼロに近づけることができる。現在は標準化医療が普通。例えば、Aという病気に対して治療薬を選択する。ところが、今は、同じがんであっても、遺伝子変異が違えば違った治療をしよう、遺伝子の異常が同じだったら同じ治療をししようという「個別化医療」が進んでいる。

 最新の研究では、老化を標的にすればあらゆる疾患を一網打尽にできるかもしれないという「全能医療」が2040年頃には可能になるとも言われている。いわゆる慢性炎症を直してやれば、老化というのはある程度介入することができる、防ぐことができるかもしれないということ。
 吐く息を調べることで、我々がどれぐらい老化細胞に侵されているのかを測定することができるようになるだろう。これできるようになると、個人の老化、DNAのメチル化を調べなくても、もっと簡便に老化を測定できるようになる。
 「あなたは老化細胞が溜まり過ぎてますよ。そろそろ減らすような治療をしましょう」という予防医療ができれば、病気を防ぐことができるかもしれない。

 同氏は、「まだまだマウスレベルの研究の話だが、少なからず老化に介入することができそうだと分かってきただけでも大きな進歩だと思っている」と結んだ。

【田代 宏】

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