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ペンタデシルを機能性表示対応素材に 【機能性表示食品特集】まずは肌の健康維持、次いで血糖値上昇抑制

 小胞体ストレスの軽減機能が確認された機能性脂質「ペンタデシル」がヒトに対しても有効かどうか検証する研究が同時進行的に進められている。同脂質を含有する食用オイルを機能性表示対応素材化するためだ。同オイルを開発し、研究を進めている㈱シー・アクト(坪井誠社長)では、まずは肌の状態の維持にかかわるヘルスクレームを行えるようにする。

小胞体ストレス軽減で注目の新・機能性脂質

 肌の次は、血糖値の上昇抑制にかかわるヘルスクレームを行えるようにする計画。いずれも細胞や動物を使った基礎研究(前臨床試験)からヒト対象試験(臨床試験)まで実施済み。一定のエビデンスを得ている。早ければ、今秋までに機能性表示対応素材化させ、研究レビューなどの必要資料の提供を伴う原材料販売を展開できるようにしたい考えだ。1日当たりに必要な摂取目安量は、これまでに得られた科学的な根拠を踏まえ、肌に関しては24mg(ペンタデシルとしては6mg)、血糖値では48mgになるという。

 ペンタデシルとは、奇数飽和脂肪酸(C15)のペンタデカン酸を主要な構成脂肪酸とするトリグリセライド脂質の一種。油脂を多く産生する微細藻類の一種、オーランチオキトリウムから取り出すことに同社で成功し、「ペンタデシル」と名付けて商標登録した。同社ではまた、オーランチオキトリウムから分離抽出して産生されたペンタデシルを30%以上含む「オーラン油」も開発。現在、販売代理店などの協力も得ながらの原材料販売を進めている。

 ペンタデシル含有オーラン油の健康食品向け原材料は昨年、発売されたばかり。すでに採用実績をあげていて、販売代理店も広がり始めている。この機能性脂質の特徴である小胞体ストレスの軽減機能に惹きつけられた業界関係者は少なくない模様だ。

 小胞体ストレスとは何か。タンパク質を合成する「小胞体」と呼ばれる細胞内器官に負荷がかかる状態を指す。小胞体内でタンパク質の合成が正常に行われなくなることで生じるとされ、その状態が続くと細胞の正常な生理機能が妨げられ、その細胞が集まる組織にトラブルが生じると考えられている。

 一方、熊本大学で行われた研究によれば、ペンタデシルには、小胞体ストレスを緩和し、細胞の正常な生理機能を維持する働きを持つ可能性が示唆されている。糖尿病モデルマウスを使った試験の結果、糖尿病状態からの回復が認められた。これは、β細胞の小胞体ストレスが改善されて耐糖能が正常化されるなどして、β細胞のインスリン分泌が正常になったことによると考えられるという。シー・アクトによれば、耐糖能の改善は、機能性表示食品対応素材化を目的にした前臨床研究でも確認されている。今後、研究成果を論文にまとめる予定だ。

肌の健康低下にも関わる小胞体ストレス

 機能性関与成分としてのペンタデシルの第1弾ヘルスクレームとなる見通しの肌に対する働きにも、小胞体ストレスの緩和が関係するという。

 同社によれば、肌を構成する主要なたんぱく質であるコラーゲンの減少や変性に、小胞体ストレスが関与しているとする報告がある。小胞体ストレスによって正常ではない不良コラーゲンが線維芽細胞内で産生され、それが細胞外マトリックスに分泌されるなどして肌状態が悪化。肌のシワやたるみなどが増えていくと考えられている。そこで、小胞体ストレスを与えたヒト線維芽細胞にペンタデシルを添加する試験を行ったところ、小胞体ストレスによって減少した正常コラーゲンの産生の有意な増加が見られたという。

 サプリメントなどとして摂取したペンタデシルが真皮のコラーゲンの産生を高めることは、ヘルスクレームの科学的根拠とするヒト対象研究でも確認されている。肌の弾力やバリア機能が高まったほか、シワや毛穴の改善も見られたという。「エビデンスを踏まえ、どのようなヘルスクレームを行うか、検討しているところ。チャレンジングだとは思うが、作用メカニズムとして、小胞体ストレスの緩和を盛り込めるようになると良い」と同社の坪井誠社長は話している。

【石川太郎】
『ウェルネスマンスリーレポート』2023年6月10日号(第60号)より転載

<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都千代田区丸の内2-2-1岸本ビル11F(本社)
TEL: 03-6268-0040(同上)
URL: https://www.seaact.com/
事業内容:天然資源を利用した健康食品・化粧品素材の研究開発・製造販売など

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