ゼラチン残さをアップサイクル
中日本カプセルのSDGs活動 「廃棄ゼロめざす」
ゼラチンネット──ソフトカプセルの製造工程で発生するゼラチンの残さをそう呼ぶ。発生量は少なくない。それをアップサイクルすることでSDGs(持続可能な開発目標)に貢献しようと、カプセルに特化したサプリメント・健康食品受託製造企業の中日本カプセル㈱(岐阜県大垣市、山中利恭社長)が、昨年から具体的な取り組みを進めている。今後2年以内に、再利用率を100%にまで高めたい考え。
肥料として活用 広がる採用
「ここ数年、お客さまからSDGsに対する取り組みを尋ねられる機会が明らかに増えています。カプセル専業メーカーである当社として何ができるか、考えてきました。そしておよそ1年半かけて開発できたのが、毎日発生するゼラチンネットを肥料などとして再利用する方法です。これまでは産業廃棄物として焼却処理していました」
こう話すのは中日本カプセル開発部の須原渉部長。ロータリー式の充填機でソフトカプセルを製造するとゼラチンネットが必ず発生する。原料となるゼラチンをシート状に成型加工したものを、サプリメントなど製品に合わせて型抜きした後に残るのがゼラチンネット。カプセルを製造する度に発生するという。
「かなりもったいないですよね。それをどうにかしたいと考えました。そこで着目したのが肥料です。肥料の3大成分は、窒素、リン酸、カリウム。ゼラチンネットはもともとゼラチンですから、窒素が一定量、かつ、安定的に含まれる。肥料の窒素源として使われているアンモニアが不足している状況もあって、肥料メーカーから好評を得ています」と須原氏は話す。
同社では、焼却処分していたゼラチンネットをチップ状や液状に再加工し、肥料用途などとしてリサイクルする手法を開発。ゼラチンネットの加工品が農作物の肥料となり、その農作物がブタやウシなどの飼料となる。その飼料で育ったブタ等の皮などからゼラチンを得て、それがソフトカプセルとなる環境循環型サイクルを回していくことを狙った。
それを『ゼライクル』(ゼラチン×リサイクル)と名付け、SDGs活動の一環として前期(2021年8月期)から取り組みを開始。国内の肥料メーカーに提案しながら需要開拓を進めた結果、現在までに10社以上から採用されたという。肥料の他にも、「にかわ糊」(接着剤)の原料としても活用されている。
SDGs活動通じてサプリの魅力高める
こうした活動を通じ、同社がソフトカプセルを日々生産する中で発生するゼラチンネットの再利用率は、前期末までに50%に到達。顧客も増えていることから、今期(22年8月期)は80%、そして来期には100%まで高めることを目標に掲げている。これによりカーボンニュートラルの推進に貢献したい考えだ。
須原氏は話す。
「カプセルに特化した受託メーカーならではのSDGs活動を通じて、サプリメント・健康食品の魅力をより高めていきたいと思っています」。
【石川 太郎】
<COMPANY INFORMATION>
所在地:岐阜県大垣市荒尾町229-2(本社工場)
TEL:0584-93-1013
URL:https://www.nakanihon-cap.co.jp/
事業内容:健康食品・サプリメントの受託製造と各種包装
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(冒頭の写真:中日本カプセルの本社工場)