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エビデンス入門(67) 研究レビュー更新の意義・注意点

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 准教授 竹田 竜嗣

 機能性表示食品制度では、研究レビューで届出ができることが事業者にとってハードルが下がり、参入が進んだと言われている。研究レビューは、システマティック・レビュー(SR)の方法を用いて科学的根拠を担保する仕組みだ。届出時に文献調査を行い、得られた情報から届出品や届出品に含まれる機能性関与成分についてのエビデンスの質などを調査し、科学的根拠とする仕組みである。現在、研究レビューに有効期限は無いため、届出時の研究レビューを新しく刷新する必要はない。しかし、近年いくつかの届出者が、パッケージ変更などを行う際に合わせて研究レビューの更新を実施している届出者が多くなっている。

 研究レビューの更新を実施する際には、いくつかポイントがある。まず、文献検索のみを修正する場合は、初めの届出から検索式を大きく変えてしまうと、初めに実施した届出とPICOが変更したようなイメージが加わってしまう。そのため、なるべく検索式は変更しないか、文献データベースの「フィルター」で絞り込んでいたものを外し、検索を広めたなど理由がつく変更を心掛けたい。また、PICOを変更すると、これは研究レビューの更新ではなく、新規でのやり直しになってしまうので注意が必要だ。

 その他、更新での注意は、現在届出している内容に追記部分がわかるように変更履歴を取っておくことである。大幅な変更は、変更届けでは対応できず、新規の届出とみなされてしまうので、あくまで追記や語句の修正を心掛け、現在の届出資料の体裁を大きく変えないことが重要になる。また、文献検索の再実施の結果、追加文献があった場合、情報を追加するとともに、エビデンスの質などを再点検する。まれに、否定的文献が増える場合もあるが、その場合届出が維持できるのか再度検討が必要になる。場合によっては、撤回といった対応が必要なケースがあるかもしれない。研究レビューの更新は、エビデンスの定期的な点検という意味では非常に重要だ。

 制度がかなり定着してきたことから、今後、更新制の導入の可能性もある。急にガイドラインが改訂されて慌てないためにも、1年に1回程度は、届出した文献の検索結果の再点検だけでも実施し、大幅に文献が増えていないかの確認は必要である。大幅に文献が増えていれば新しい文献が出ている可能性がある。また、UMIN-CTRなど臨床試験のデータベースの登録状況も確認し、新しい試験が実施されていないか、未報告研究として挙げていた研究の進捗が変化していないかの確認をすることで新たなエビデンスがないかの可能性を予測できる。

(つづく)

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<著者プロフィール>
2000年、近畿大学農学部農芸化学科卒。
2005年、近畿大学大学院農学研究科応用生命化学専攻、博士後期課程満期退学。
2005年、博士(農学)取得。近畿大学農学部研究員、化粧品評価会社勤務、食品CRO勤務を経て、2016年から関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科。
専門は、農芸化学分野を中心に分析化学、食品科学、生物統計学と物質の研究から、細胞、動物試験、ヒト臨床試験まで多岐に渡る研究歴がある。特に食品・医薬品の臨床研究は、大学院在籍時より携わった。機能性表示食品制度発足時から、研究レビューの作成およびヒト臨床試験など多くの食品の機能性研究・開発に関わる。
2023年1月、WNGが発信する会員向けメルマガ『ウェルネス・ウィークリー・レポート』やニュースサイト『ウェルネスデイリーニュース』で連載した「エビデンスの基礎知識」が100号に達したのを記念し、内容を改めて編集し直し、「開発担当者のための『機能性表示食品』届出ガイド」を執筆・刊行。

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