エビデンス入門(59) 健康食品の安全性確保
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 准教授 竹田 竜嗣
健康増進機能をうたった食品には、科学的根拠に基づき消費者庁が許可し表示が可能になる特定保健用食品(トクホ)、ビタミンなどの特定の栄養素の機能について含有量の基準を満たした食品に、栄養素の機能について表示できる栄養機能食品、一定の科学的根拠を持つ機能性関与成分を含む食品に、企業責任下で健康増進機能を表示できる機能性表示食品の3つが認められている。
トクホの食品形態は飲料やヨーグルト、調理用油や醤油など加工食品の形態を取ることがほとんどだったが、機能性表示食品の登場により新たに認められた食品形態として、錠剤やカプセルといったサプリメントタイプの加工食品がある。食品形態が錠剤やカプセルになることでこれまでの飲料などの加工食品と異なり、食品のカサ(量)は少なくなった。一方で、原材料には濃縮されたエキスが使われているケースや賞味期限などの品質保持期限が長いものも登場している。カプセルや錠剤には、濃縮された原料を詰めるため、従来の食品よりも長めの品質保持期限を設定するには、一般の加工食品の製造以上に高い製造技術と衛生管理が求められる。
医薬品の製造には、GMP(Good Manufacturing Practice)と呼ばれる適正製造規範が薬事法で定められ一定水準以上の品質管理が義務付けられているが、加工食品ではGMPまでの厳格な製造基準は必須ではない。しかし、健康食品の形態が錠剤やカプセルなど薬と似た形状の加工食品が増えてきたことを踏まえ、厚生労働省は、「錠剤、カプセル状食品の製造工程管理による安全性の確保」施策として、2005年に、適正製造規範(GMP)ガイドラインを定め、安全性確保の取り組みを強化することを求めた。この適正製造規範(GMP)ガイドラインは、健康食品GMPとも呼ばれ、認証機関として(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)と(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)が中心となり、審査を実施して工場をGMP認定するなどして普及が進んでおり、これらの認証を得た工場で作られた製品には、GMP認定工場マークが表示されている。
これからも、錠剤やカプセル形状の製品は濃縮物であることや、形状が過剰に摂取可能な形態であることから、食品成分の安全性だけでなく、食品の製造過程に対する安全性確保も重要である。機能性表示食品制度においても、製造時における規格外の製品を出さないための取り組みを書面で提出させるなど、より一層の安全性対策が求められている。今後も、錠剤やカプセル状などサプリメントタイプの加工食品においては、厳格な衛生安全管理が求められると考えられ、健康食品GMP認定を受けた工場での製造などが推奨されると考えられる。
(つづく)
<プロフィール>
2000年、近畿大学農学部農芸化学科卒。
2005年、近畿大学大学院農学研究科応用生命化学専攻、博士後期課程満期退学。
2005年、博士(農学)取得。近畿大学農学部研究員、化粧品評価会社勤務、食品CRO勤務を経て、2016年から関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科。
専門は、農芸化学分野を中心に分析化学、食品科学、生物統計学と物質の研究から、細胞、動物試験、ヒト臨床試験まで多岐に渡る研究歴がある。特に食品・医薬品の臨床研究は、大学院在籍時より携わった。機能性表示食品制度発足時から、研究レビューの作成およびヒト臨床試験など多くの食品の機能性研究・開発に関わる。
2023年1月 WNGが発信する会員向けメルマガ『ウェルネス・ウィークリー・レポート』やニュースサイト『ウェルネスデイリーニュース』で連載した「エビデンスの基礎知識」が100号に達したのを記念し、内容を改めて編集し直し、「開発担当者のための『機能性表示食品』届出ガイド」を執筆・刊行。同4月より、一般向けの無料メルマガ『Wellness Weekly Report』(隔週木曜刊)に「エビデンスの『超』基礎知識」の連載も開始する。