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エビデンス入門(48) 倫理指針の統合

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科講師 竹田 竜嗣

 ヒトに対して食品などを摂取させる試験を実施する場合、倫理指針に沿って進めることが重要だ。
 倫理指針とは、人の人権を尊重しつつ医学研究を公正に進め、結果の信頼性を担保するために研究者が守るべき決まりが書かれている。日本においては、2002年に「疫学研究に関する倫理指針」が制定され、その後、03年に「臨床研究に関する倫理指針」がそれぞれ制定された。その後、個人情報保護に関する事項の制定など何度か改訂され、14年に「人を対象とする医学系研究に関する指針」へ1本化された。

 その間、降圧剤に関する臨床研究の研究不正が起き社会問題化して、16年に臨床研究法が制定され、病気の治療などに関わる医薬品のヒト研究は、特定臨床研究へ移行し別の枠組みで管理されるようになった。その後も、個人情報保護保護法の改正により、度々倫理指針は改訂されてきた。さらに、ヒトの遺伝子研究なども盛んに行われてきた背景を踏まえ、別で定められていた「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」との共通点が多いことから、統合が検討されていた。そして、2021年3月に「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」として、両指針が統合される形で制定され、6月30日から施行されることになった。

 統合によって、共通する部分は整理され、手続きが明確でなかったなどの懸念事項についても整理し定めている。また、インフォームドコンセント(IC)については、デジタル化、オンライン化などの社会情勢を受けて、電磁的方法が可能と明記された。これにより、原則対面、紙媒体を用いて行われていた同意説明・同意取得が、インターネットなどのネットワークを通じて、遠隔で行うことが可能と明確に記載された。

 また、これまでの指針では用語が分かりにくかったが、用語の定義などが1つの章として新設され、指針を理解するのにわかりやすくなった。他にも、研究者が守るべき責務などや各種手続きに関しても具体的に記載されるなど、これまでの指針で分かりにくい部分がより明確になっている。
 新規の事項としては、機能性表示食品のガイドラインではすでに定められているが、介入を行う研究について、jRCT(臨床研究等提出・公開システム)などの公開データベースに、当該研究の概要などをその実施に先立って登録し、更新を行わなければならない旨が規定された。また、その他の研究についても、登録を努力義務としている。今後実施される試験は、順次新しい指針に準拠するように、計画を制定していく必要がある。

(つづく)

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