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エビデンス入門(44) 多重性の考慮とは(前)

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科講師 竹田 竜嗣

 先ごろ、技術系メディア『日経クロステック』の指摘にもあった、多重性について解説する。

 一般的に統計学で実施する検定において、比較する組み合わせが多いときに多重性を考慮する、しないという問題がよく話題に上る。
 ここでいう「比較する組み合わせ」は、例えば3群以上の群間比較で、いくつも群の組み合わせがある場合の多群比較や経時測定(0週、4週、8週など)の試験での多数の測定ポイントを比較する多時点比較だけでなく、アンケート調査や血液検査などにおける多数の項目や質問の比較などの多項目比較、あるいは、いくつもサブグループを作って被験者を抜き出し比較する解析対象者の多重性、同じ項目でパラメトリック検定とノンパラメトリック検定を同時に実施する多種類検定など、日常的によく行っている作業にも厳密には多重性の問題が隠れている場合がある。

 多重性で一番問題になるのは、意図せず有意になる、つまり、介入や観察に因果関係なく有意と判定してしまう確率が上昇することである。検定には2つの過誤(エラー)が存在する。

 1つは、真の結果が有意でないのに誤って有意と判定してしまう過誤、第1種の過誤であり、有意水準αと等しい。もう1つが、真の結果は有意であるのに誤って有意でないと判定してしまう過誤、第2種の過誤である。多重性の問題では、第1種の過誤が、検定を繰り返すことで甘くなってしまうことを主として問題としている。そのため、何度も検定を繰り返す場合は、有意水準を検定の実情(回数)に合わせて調整するか、多回数の検定に対応した統計手法を選定する必要がある。

 一方、多重性を考慮することは、保守的になりすぎるとも言われる。検定の基準が厳しくなるためである。例えば、多時点の検定が問題になるのであれば、検定の回数だけ有意水準を下げるBonferroni補正という手法がある。2時点で検定するのであれば、通常有意水準5%を半分の2.5%として、p値が2.5%以下で有意と判断する手法である。この方法だと、検定を繰り返せばその分、有意水準は厳しくなるため、有意差が出にくい。単純な多重性の補正ではあるが、有意差は非常に出にくくなることを直感で感じていただけるのではないかと思う。
 このように、多重性の問題は解決すべき問題ではあるが、解決策によっては保守的になりすぎるという一面もある。当然、計画時に多重性を考慮した例数設計も必要であり、多重性を考慮すると、一般的には多くの症例数が必要になってくる。この問題の解決策には、いろんな例がある。次回はその一例を取り上げる。

(つづく)

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