エビデンス入門(38) 臨床試験を企画するには(後)
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科講師 竹田 竜嗣
臨床試験の企画についての連載3回目は、実施計画を立てる上で考慮する必要がある点について述べる。
実施までの計画は、前稿までに述べた通り、目的や作用機序から測定項目(アウトカム)を定め、例数を設定する。例数を設定するにあたって、通常は統計学的な有意差を得るための人数を逆算して、試験から脱落する例数を考慮し、最終的な計画人数を決める。また、試験デザインや測定アウトカムによって、実施人数は変わってくる。
統計学的計算によって例数を設定する場合は、通常、過去に行った試験などの前例を参考にする。前例がない場合は、パイロット的な位置付けでは、小例数(2群で各群15例程度)とする。前例がある場合は、例数を計算し中規模(2群で各群50例ずつ)から大規模(2群で各群100例以上)で実施することが多い。
ここでいう前例とは、自社試験の前例とは限らない。機能性関与成分を同一とみなすことができれば、他の研究者が行った試験の論文を参考にすることもできる。例数を設定する意味は、目標達成できる最小限の試験を計画することである。
ヒト試験は倫理委員会で事前協議するように、計画を綿密に立て、倫理的配慮などを考慮して実施する必要があり、実施人数が多ければ多いほど良いわけでは無い。予算があれば多い人数の実施も可能だが、法律やガイドラインに定められていない限りは、評価に適正な人数での実施で十分である。
また、例数をどのように決めたかは、論文執筆時に必要な情報である。前例がなかった場合は、「パイロット試験という位置付けで実施人数を決定した」と書けば、論文誌で受け入れられることが多い。しかし、機能性表示食品届出の根拠となっている食品試験についての論文などを確認すると、例数設計が書かれていないことが多い。例数をどのように決めたのかは、計画段階で検討しているはずなので、統計的な考慮ができなくても、記載することが望ましい。
その他に、計画段階で留意すべきことは、層別解析を想定しているか、日常生活において摂取を制限するべき食品があるかどうかなどである。層別解析を実施する場合は、前述した例数設定にも影響するので、層別後の解析が最重要になる場合は注意が必要である(層別解析を想定して例数を設定する)。
日常生活において摂取を制限すべき食品がある場合とは、試験食品の関与成分が日常の食事にも含まれており、被験者の生活習慣の差によって、摂取量が変わり、試験に影響する場合が想定される。被験者を選抜する際に影響のある食事習慣の者を選択しないことも重要だが、摂取の制限が問題なければ制限した方が良い。もしくは、食事記録などから摂取量を確認し、調整解析を行っても良い。これらの留意事項については、計画段階で十分検討が必要である。
(つづく)