エビデンス入門(14)PRISMA声明とは
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科
講師 竹田 竜嗣 氏
前回はCONSORT声明について述べた。今回は、機能性表示食品の研究レビューでもよく出てくるPRISMA声明について解説する。
PRISMA声明とは、システマティック・レビュー(SR)やメタアナリシスなどのいくつかのランダム化比較試験結果を統合する研究で、報告すべき項目が示されている声明を指す。1996年にメタアナリシスの質を向上させるために作成された「QUOROM声明」を改訂するために、国際研究グループによって検討され、2009年に公表されたものである。
この声明は、27項目のチェックリストと4段階のフローチャートで構成されている。文献検索の方法、検索で絞られた論文内容の統合、バイアス・リスクの報告、エビデンスの要約などのプロセスが示されており、それに従って記載することで、読者が共通した理解でSRを評価できて、ほかのSRとの比較も容易にできるような内容になっている。
日本では、消費者庁によって機能性表示食品制度が導入されるまでは、医学研究者を除いてSRもPRISMA声明も馴染みが薄く、特にバイアス・リスクの考え方や評価は、あまり目にすることはなかった。
機能性表示食品の研究レビューがSRの方式を採用したことで、PRISMA声明という言葉や内容について注目され、今では機能性表示食品制度を知る人にとっては馴染みのある言葉になりつつある。
ただし、PRISMA声明は、もともとがメタアナリシスの実施を伴う定量的SRを意識して作成されている点も多く、定性的SRで完結している機能性表示食品の届出の場合には該当しない項目もある。
機能性表示食品の届出に特有なものとして、ターゲットとしている採用論文があり、研究レビューを作成していくケースがある。しかし、本来はPICOで表現されるリサーチクエスチョンを事前に考えて、それに沿ってSRを進めていくわけであり、いわば最終の結論がわからない状態で行うことが大前提である。そのため、都合よく解釈したと捉えられないように、文献検索の方法や対象とする研究の範囲などを予めプロトコールとして定め、公表しておくことが重要である。
コクランライブラリーなど、医学研究のSRを多数掲載しているデータベースの論文では、SRのプロトコールを公表または登録してから進めるケースも多々ある。機能性表示食品の届出でも、本来のSRの方法に従って、きちんとプロトコールを定めて実施することが重要である。
(つづく)