アマニフォーラム実行委員会、災害時の栄養補給に関する研究結果を発表
アマニフォーラム実行委員会/日本製粉(株)は3日、「第10回アマニフォーラムセミナー」を都内で開催した。今年のテーマを「予防医療」とし、今回は防災週間を踏まえて災害食と、新たな高血圧診断に関する治療指針などについて発表した。
「災害時にみられる健康・栄養問題」をテーマに講演した(公社)日本栄養士会理事の西村一弘氏は、2011年の東日本大震災、16年の熊本地震における日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)の活動や、発災時から避難生活が長期化するまでを4つのフェーズに分けて、その時々に必要な現場での健康・栄養サポートについて詳しく解説した。
「発災後72時間以内のフェーズ1は穀物や麺類などの炭水化物が必要で、1カ月以内のフェーズ2からは必須アミノ酸、必須脂肪酸などを含む食品をバランス良く取っていくことが望ましいが、支援物資はフェーズ2以降も炭水化物が多く、自治体では持てあますケースもある」と被災地の状況を説明し、偏りを是正するための報道のあり方に言及した。また、避難生活が長期化すると、肥満や血糖値の上昇を招き、それらを予防する食事や運動、ストレスの除去も課題になると述べた。
サプリメント活用については、「マルチビタミンも用意するが、栄養素にはポリフェノールの働きなどまだ未解明の部分も多く、食品に含まれる微栄養素が健康を支えている可能性も含め、食品の備蓄や偏りなく、食品を送付する支援が重要」との考え方を示した。
京都薬科大学病態薬科学系臨床薬理分野教授の中田徹男氏は、「新しい高血圧診断・治療指針と非薬物療法のあり方」をテーマに講演。今春に改定された我が国の「高血圧診断・治療ガイドライン」では、正常血圧が130/85mmHgから120/80mmHg未満へと引き下げられたと説明。改定に至った経緯、脳血管障害者や慢性腎疾患患者など、従来の年齢重視から疾患重視の方針へと変わったことなどを詳細に解説した。
一方、生活習慣の改善について、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品は降圧薬の代替にはならないことがガイドラインに明記されたことに触れ、「有用な食品を取ることまで否定したわけではなく、適切な選択と摂取は有効」と話した。
会合の後半では、アマニの種子の降圧、ストレス耐性効果に関する研究結果も紹介された。そのほか、災害食としてのアマニに関する研究報告や、各演題に対する質疑応答も行われた。
(写真:50人を超える関係者が参加)
【堂上 昌幸】