アフィリエイト広告検討会を総括!(5)
消費者への情報提供と教育が急務(後)
(公社)日本通信販売協会 専務理事 万場 徹(まんば とおる) 氏
消費者に届く情報発信 SNS事業者に協力も
――情報発信の方法、スピードが重要ですね。
万場 悪質な手口は常に進化します。そのため、検討会を開催し法律を作る、あるいは方針を作ったとしても、それがまとまるころには次の手口が横行するというのが現状です。アフィリエイトが厳しいとなれば次の手口を考えるでしょうし、ターゲットにする商材も代わるでしょう。デジタル化も進んでいますので、SNSを活用したものなど、手口も進化しています。被害の芽が出た時に、即座に消費者に警告するという取り組みが必要です。また、その注意喚起の方法も、現在のような消費者庁や国民生活センターのホームページで掲載するだけでは、残念ながら消費者には届きません。一般消費者が目にするところで発信するという手段をとるべきです。今回はアフィリエイト広告ですから、新聞やテレビで警告しても効果は見込めません。SNSサービスを提供する事業者に協力を仰ぎ、ウェブ検索時に怪しい検索結果に近づいたときにアラートを出すような仕組みを応用し、怪しい広告表示に近づいたときにオートマチックに警告が出るような仕組みを構築する必要があると思います。
他団体との連携を強化 市場の縮小を危惧
ーーーー協会としてはどのように取り組まれますか?
万場 業界健全化のための自主的な取り組みとして、すでに(一社)日本インタラクティブ広告協会(JIAA)さんと連携をしております。この既存の取り組みを拡大し、悪質なアフィリエイト広告やアフィリエイター、ASPに遭遇した際に情報を共有することを目的に、さらに、日本アフィリエイト協議会さんなどとの情報連携を強化できればと。悪質なアフィリエイト広告を行っているのは、ごく一部のアフィリエイターやASP、代理店です。そうした情報をお互いが共有することで、悪質事業者を使わない仕組みや排除する仕組みを作れればよいと思っています。ASPには、大手から中小まで、またJIAAに加盟していないASPもあります。加盟していないから駄目だとは言いませんが、加盟していない悪質なASPは広告考査が緩く、悪質なアフィリエイターやそれを使う広告主にとって使い勝手が良いという構図となっています。
――今回の検討会報告書に対して、広告主の混乱はあるしょうか?
万場 広告主、ASP、アフィリエイターが一体となった悪質なケースもあります。こうした悪質なASP、アフィリエイターを避け、コンプライアンス意識の高いASPを選べばよいので、今回の検討会報告書に対して、まじめに取り組む広告主が混乱することはないと思いますが、アフィリエイト広告に対する嫌気はさすと思います。広告主は、何万人もいるアフィリエイターと直接契約しているわけではありませんので、全ての広告を監視するのは不可能です。結果的に、アフィリエイト広告の利用を避ける事業者も出てくるのではないでしょうか。健全に取り組むアフィリエイターが迷惑を被り、市場が縮小してしまいます。そういう観点からも、事業者を取り締まることも重要ですが、それと同様に、消費者側のリテラシーを高める必要もあると思います。
また、会員企業に対して、「アフィリエイト広告を利用するにあたってのガイドライン」を作成する予定です。26条に基づく管理上の措置の方針が改正されると思いますので、それにリンクするかたちで、アフィリエイト広告を使う際の注意点などをガイドラインとして示していく予定です。
消費者教育の重要性を念頭に 協会主導で情報発信
――消費者教育の一環としての取り組みについて説明してください。
万場 コロナ禍で通販のニーズは、一層高まりました。そのため、通販事業に参入する事業者も増え、市場は拡大しています。コロナ後も、通販を利用する人は増えるでしょう。通販をよく知ってもらうために、昨年から、「教職員・消費生活相談員向け 通信販売について学ぶオンライン講座」をスタートしました。消費者が通販をかしこく利用するための特別講座やオンラインの物流倉庫見学会、法律や通販業界を学ぶセミナーなど計10講座を開講しました。また、特別講座&オンライン見学会では、LIVE配信で講師に質疑応答することもでき、「通販とは何なのか、どういう基準で業者を選べばよいのか」などを学んでもらいました。
――ねらいは何でしょうか?
万場 学校の社会科や家庭科の先生達に学んでもらい、教育現場で活用してもらうという取り組みです。将来、通販を利用するであろう子どもたちに、正しく通販を学んでもらい、不当表示に惑わされない消費者を作ることが目的です。一見すると遠回りのようですが、通販の健全な発展という観点から取り組んでいます。昨年、全国でのべ約1,200人の方に参加していただきました。今年も開催を計画しています。
――ありがとうございました。
【聞き手・文:藤田 勇一】
<万場氏プロフィール>
1984年 社団法人日本通信販売協会(2012年4月より、公益社団法人となる)事務局に入局。主に行政対応、広報など、業務全般を担当。業務課長、業務部長を経て、00年に理事就任。01年からは事務局長も兼任し、11年、常務理事に就任。16年、専務理事に就任し現在に至る。「アフィリエイト広告等に関する検討会」委員。