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アフィリエイト広告検討会を総括!(2)
広告主は言い訳ができなくなった

消費生活コンサルタント 森田 満樹(もりた まき)氏

森田満樹氏は、検討会の委員として一貫して消費者目線に立った発言を行ってきた。今回、景表法の改正には至らなかったものの、悪質な事業者への対策は示されたとし、景品表示法26条に基づいて作成される指針に期待を寄せる。

悪質事業者を規制する指針へ

――アフィリエイト広告検討会への評価は?

森田 検討会がスタートしたときは景品表示法の改正も視野に入っていました。論点としても示されていたので、もう少し進んだ議論になるのかと思っていましたが、アフィリエイター個人の規制というのが現状、実際には難しいというのがヒアリングを進めるうちに分かってきました。アフィリエイト広告が広く活用されていること、景品表示法の改正が幅広い業態に影響を及ぼすということもあり、結局、法改正には至りませんでした。
 
――期待外れだった?

森田 ヒアリングを進めるうちにアフィリエイト広告の実態が見えてくる中、報告書では悪質な事業者に対する対策が明記されました。アフィリエイト広告で「広告」であることを表示することも盛り込まれました。そういうことを踏まえると、方向性としては、悪質な事業者がアフィリエイト広告で消費者被害を出さないような対策が示されたと思っています。
そういう意味では、これからに期待したい。評価するのは、指針ができてないのでちょっとまだわからないのですが、指針はウォッチしていきたいなと考えています。

景表法改正の可能性も残す

――ASPとアフィリエイターに対する規制は見送られました。

森田 ASPやアフィリエイターへの規制は現状ではなかなか難しいのでしょうが、広告を依頼する側の広告主の責任が問われることが明確となりました。私は、だからこそ景表法26条で事業者が表示を管理しなければならなくなったと捉えています。割とはっきり出たなと受け止めており、そういう点では何も変わっていないというふうには考えておりません。
 最後の検討会で、学識者の先生が諸外国におけるアフィリエイト広告規制について説明されました。海外ではもっと広い範囲で責任が問われるという説明を受けて私は、我が国の景表法が広告主とか販売者に限定している点について検討課題にしてほしいと話しました。報告書の「今後の対応」には、アフィリエイターがレギュレーションを超えて問題のある表示を行うなどの問題行為が多数生じた場合は、景表法の改正もあり得るとの記載がありますから、そういう意味では書き込んでいただけたと思っています。

――アフィリエイト広告が「広告」でないと誤認する消費者もいます。

森田 アフィリエイト広告という名称を知らない消費者も少なくないことから、アフィリエイト広告という名称になるかどうかはともかく、「広告」である旨を明示することが指針に盛り込まれることになりました。検討会では、広告と書こうが書くまいが消費者被害は起こるのだという意見もありましたが、このことでむしろ、アフィリエイターが違法行為を行わないように管理しなければならない広告主の責任が明確になったと思っています。少なくとも、これまでのように広告主は「アフィリエイターが勝手にやりました」という言い訳ができなくなるわけです。

――違法なアフィリエイター全てを管理しろと言われても難しい点もあります。広告主が、いかに優良なASPを選択するかということも大事です。

森田 委員の方がおっしゃっていましたが、極悪な事業者がいて、そういう人が問題となる広告をやっていたわけですから、普通の広告主がそういう事業者を使わないようにするということは、業界をより良くするための大きな一歩だと感じています。また、検討会が開かれている間でも、インスタグラムにおける表示が初めて措置命令を受けたりしていますから、そういうところを見ると、本当に悪質なことができにくい縛りになってきているのではないかと期待しています。

より具体的な指針作りを

――夏頃をめどに景品表示法第26条「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置」に基づき、アフィリエイト広告版の指針作りが行われます。

森田 26条というのは、これだけを見ると、どこまでやったらいいのかという点が明確になっていません。食品事業者の中には、任意表示と広告表示の管理を分けていない会社もあり、「必要な措置を講じなければならない」と言っても、ガイドラインがしっかりしていないと、各社、どこから手を付けていいのか分からないと思います。
 報告書にもあるとおり、26条の中には、必要な措置として①「景品表示法の考え方の周知・啓発」、②「法令遵守の方針等の明確化」、③「表示等に関する情報の確認」、④「表示等に関する情報の共有」、⑤「表示等を管理するための担当者等を定めること」、⑥「表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること」、⑦「不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応」――の7つの項目が出てきます。これらに関してそれぞれ、アフィリエイト広告に合った、事業者の規模や事業内容に沿ったかたちで、できるだけ具体的な例を取り出してもらいたいと思います。

――ありがとうございました。

(了)
【聞き手・文:田代 宏】

<森田氏プロフィール>
消費生活コンサルタント。
2011年に消費者団体(一社)Food Communication Compass(フーコム)を設立、16年から代表。食品安全、食品表示、消費者問題について講演・執筆活動を行っている。
東京海洋大学・大妻女子大学非常勤講師。
これまで、農林水産省「食品の安全性に関するリスク管理検討会」、厚生労働省「食品衛生法改正懇談会」、「食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会」、消費者庁「食品表示一元化検討会」「食品の新たな機能性表示に関する検討会」、「食品添加物表示制度に関する検討会」、」、「特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する検討会」、「アフィリエイト広告等に関する検討会」など、数多くの検討会で委員を務めてきた。
著書は「新しい食品表示がわかる本(女子栄養学部出版部)」など。

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