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どうなる?2023年の健康食品業界 【記者座談会】激動の22年をふり返りながら記者が展望する(前)

 新しい年の幕が開いた。激動の2022年に生じた種々の事象への対応が引き続き求められる1年になりそうだ。22年に健康食品業界を直撃した重要事象について、ウェルネスニュースグループの記者3人が勝手気ままに語り合った。

苦しめられたコスト高 値上げ、健康食品も?

記者A(以下A) ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安の影響で物価が高騰した。一杯500円だった近所のラーメン屋も一気に100円値上げだ。仕方ないな。 

記者B(以下B) 健康食品業界もかなり影響を受けた。輸入に頼っている部分も大きいからね。特に円安はかなりの痛手になったと思う。「利益が消える」と嘆く声をいくつも聞いた。天候不順などを理由に特定の原材料が高騰することはこれまで何度もあった。でも、今回は値上げされる原材料が横にどんどん広がって、1つの製品に配合される原材料がいくつも値上げされた。原材料だけじゃなくて、包装資材、光熱費、物流費、何でもかんでも値上げ。企業努力だけで吸収できるはずがないよ。

A どこも値上げ交渉が大変そうだ。

記者C(以下C) 確かに。秋ごろ、受託メーカーを対象にアンケート調査を行った。値上げ交渉が順調かどうか尋ねたところ、とても難航している様子だった。「順調」と回答したところもいくつかあったけどね。それに、値上げに振り回されている様子もうかがわれた。「ほぼ全ての品目で頻繁な値上げが発生しているため対応が間に合わない」とか、「原料が日々値上がりしていて、何段階も値上げすることになるため、交渉のタイミングが図りづらい」とか、対応に苦慮していると訴える声がいくつも寄せられた。

A そうだったね。値上げを要請される販売会社も対応にさぞ苦慮しただろうな。

C おいそれと値上げを受け入れるわけにいかない。受け入れるにしても価格転嫁は難しい。特に定期購入の顧客に支えられている通販は、値上げと同時に顧客が離れてしまう恐れがあるから。健康食品は生活必需品ではないから、消費の対象から外されやすい。だから普通の食品のように、すぐ値上げというわけにもいかない。と言っても、値上げを絶対に受け入れないというわけでは勿論ない。すぐに受け入れざるを得ない部分は対応しつつ、交渉して後回しにしてもらっている部分もある。ある会社は、「次のリニューアルのタイミングで値上げする。それまでは現状維持で利益を削る」と話していた。健康食品も23年から値上げが始まるかもしれない。

新型コロナ禍続くも健食需要は一巡か

A それにしても、コロナ禍がこんなに長く続くとはね。コロナ禍の初期、健康食品業界は多くの企業が業績を伸ばしたけど今はそうでもなさそうだな。どう見ている?

C 巣ごもり需要の高まりと健康意識の向上を受けて、とりわけ通販企業は売上を伸ばした。しかし最近はそうでもない、という印象。

B そうだね。売上が好調な通販会社を顧客に持つ受託メーカーとかも売上を伸ばしていたけど、だんだんと落ち着いてきたはず。

A 日本生協連によると、コロナ禍で売り上げが伸びたのは宅配事業で、店販は苦戦した。とはいえ、今は店販も売上が回復してきたと言っている。消費者が店頭に戻り始めたのが理由。それに、食品の値上げも影響しているようだね。

B コロナは収束していないけど、巣ごもり消費は一段落したということ。健康食品に関して言えば、「コロナバブル」と言うとあまりに大げさ過ぎるけど、そうしたものが一巡したってことだよ。毎月の家計調査(総務省統計局)を見ても、2020年に一時見られた支出額の急増はとっくに影を潜めている。もっと長く続くと思っていたけどな。コロナ禍で健康意識が高まったと言われてきたけど、実はそうでもなかったのかもしれない、と思わなくもないね。

C コロナ禍でニーズが高まった通販は、市場競争が激化した面もある。店販メインで展開してきた大手が積極的にECを手がけるようになったこともあって、プレーヤーが増えた。実績を作るのはこれからだろうけど、小野薬品や沢井製薬などの医療用医薬品メーカーが相次いで健康食品のECに参入したことも22年の大きなニュースの1つだ。そうした状況だから通販市場そのものは拡大している一方で、中小規模だと苦戦しているところも少なくない。巣ごもり消費が落ち着いたからといって、通販の需要が低下するわけではない。今後さらに競争が激しくなっていくと思う。

A 通販市場のプレーヤーがさらに増加するってことか。消費者の商品選択肢が増えるという意味では悪い話じゃないよな。

B まあね。あと、これは通販に限らないけど、差別化が難しくなっていると思う。機能性表示食品が増え続けている一方で、ヘルスクレームの「定型文」化がどんどん深まっている。制度施行前に言われた「事業者の創意工夫」はどこに行ってしまったのかって感じるよ。免疫の第2弾関与成分(L-92乳酸菌)がようやく出てきたけど、ヘルスクレームは前の関与成分(プラズマ乳酸菌)と同じ。これだと違いを出すのが難しい。新しいヘルスクレームをもっと増やしていかないと厳しいと思うな。広告で差別化したくなる気持ちがよく分かる。

A 広告で差別化を図った結果、認知機能の一斉行政指導につながったのでは? 改善を指導された表示の中には医薬品的な効能・効果を標ぼうしているとしか思えないものもあった。そんな状況だと、消費者庁としても新しいヘルスクレームを世に出す気にならないと思うが。

(つづく)

関連記事:【記者座談会】激動の22年をふり返りながら記者が展望する(中)
    :【記者座談会】激動の22年をふり返りながら記者が展望する(後)

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