「機能性表示食品の新たな免疫表示に期待」(森下竜一教授)
(一社)ウェルネスフード推進協会(東京都中央区、矢澤一良代表理事)は29日、「2021 Summerシンポジウム『コロナ禍における免疫研究の最前線とウェルネスフードの発展』」をオンラインで開催した。
大阪大学大学院、医学系研究科、臨床遺伝子治療学教授の森下竜一氏が、「withコロナで注目される免疫力と食品開発の可能性とは」をテーマに講演した。
冒頭で森下氏は、「平均寿命の延伸で老後期間が延び、これまでの消費増税、保険給付金の引き下げに頼らない新たな方策として、健康寿命の促進が叫ばれるようになった。医療費削減を目指し、セルフメディケーション推進の目的の1つとして機能性表示食品制度が誕生した。地域や企業規模を問わず参入できる制度として浸透してきた。今後も、新たなヘルスクレームを含むさらなる市場拡大が期待される」と話した。
続いて森下氏は、2020年に定められた、第二期健康医療戦略について解説。「健康な食、地域資源を活用し、食品の機能性が表示できる制度を適切に運用すると同時に、科学的知見の蓄積を進め、免疫機能の改善などを通じ保健用途における新たな表示の実現を目指す。また消費者の理解増進のための消費者教育を充実させる」と説明した。
その結果、プラズマ乳酸菌を機能性関与成分とした届出が公表されたが、森下氏は「機能性表示食品の場合、自然免疫と獲得免疫の違いやメカニズムを説明しつつ、病気の予防ではなく、健康の維持・増進を目的としなければならない。そのため、健康の維持・増進にかかわるようなパラメータを調べていく必要がある。表示に関しても、“免疫機能を上げるという表現は”適切ではなく、機能性表示食品にふさわしい表現が必要」と話した。また、今後の新たな免疫関連の届出表示として、「ビフィズス菌や乳酸菌などが一般的によく知られているが、これらのなかから、近々、機能性関与成分として認められるものが出てくるのではないかと期待している」と話した。
コロナ禍で免疫力が注目されているが、森下氏は「重要な臓器として、ウイルスの入り口である腸管と口腔があげられる。腸管免疫と口腔免疫の向上が、感染対策には効果的。そのなかで重要な要素がIgAで、このIgAが免疫表示においてはキーファクターとなる。IgAはあくまでも入口の防御に過ぎないため、このメカニズムが機能性表示食品の届出のカギを握っている。単体では届出ができないため、他の何かとの合わせ技が必要」と解説した。
最後に森下氏は、未来のセルフメディケーション・日本型の医療システムを紹介する場として、2025年に大阪で開催される大阪・関西万博の展示イメージを紹介した。同万博は、「いのち輝く未来デザイン」をテーマに開催され、「Reborn」をテーマにした大阪館(仮称)では、同氏が総合プロデューサーを務める。
【藤田 勇一】