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「ウイルス除去率99%」根拠なし
    景表法が抱える課題

 空間に浮遊するウイルスや菌が除去または除菌される効果が得られるかのような表示を行って除菌関連商品を販売していたとして、消費者庁は17日、大木製薬㈱(東京都千代田区、松井秀正社長)と㈱CLO2 Lab(兵庫県西宮市、安部幸治社長)に対し、16日に措置命令を行ったと発表した。

 医薬品や雑貨を販売している大木製薬は、空間除菌剤関連商品『ウイルオフ ストラップタイプ』、『ウイルオフ マグネットタイプ』、『ウイルオフ 電動拡散ファン』、『ウイルオフ 吊下げタイプ』の4品を少なくとも2015年9月から現在まで販売していた。

 除菌消臭剤の研究開発・製造販売を行う㈱CLO2 Labは、『オキサイダー置き型』(90g・180g・320g)、『オキサイダー スプレー』、『オキサイダー 携帯用』を2018年10月から現在まで販売していたとされる。

 両社は共に、パッケージ、ウェブサイト、YouTube動画などを利用して商品PRを行っていた。

 大木製薬の場合は今もパッケージとウェブサイトについては表示を続けている。CLO2 Labの方もパッケージは今も継続している。いずれも、商品によってはドラッグストアやコンビニエンスストアで広く販売されており、両社共にTVコマーシャルを展開していた。

 置き型『ウイルオフ電動拡散ファン』は、適応目安が12畳。“空気より重たい二酸化塩素のファンの力で拡散、室内をしっかりウイルス除去・除菌・消臭”できると表示。お薦めの場所として「リビング」、「玄関」、「子供部屋」、「キッチンまわり」、「オフィス」などと表示していた。

 テレビCMでは、「ウィルス除去率99%」という文字の映像と、二酸化塩素を表現した丸い物体が浮遊している空間で、家族3人が伸び伸びと手を広げている映像と一緒に、「空間除菌ウイルオフ」という女性による音声が繰り返し流される。

 また、“ウイルオフ豊富なラインナップ”という文字と共に、ウイルオフシリーズの各商品のパッケージと重ねて「空間除菌はウイルオフ」という音声が流れ、持ち運び便利ということで「ポータブルタイプは人気ナンバーワン」という音声の後に「大木製薬」という異なるトーンの女性の声が流されていた。

 その間、「除菌について、1㎥または25㎥の密閉空間におけるウイルス試験において、99%の除去効率が証明されています。ただし、ご利用環境によって有効性は異なります。また全てのウイルス・菌に効果があるわけではありません」という打消し表示が2秒程度、CM画面の下に表示されるが、「非常に見づらい状態」と消費者庁は述べている。

 表示については『オキサイダー』も『ウイルオフ』と似通っていた。

 ただ、空間除菌という言葉そのものを使うことはなく、“空間除菌漏れ”というキャッチを使って商品のPRを行っていた。

 ほかの手段で除菌をしても、なお部屋に残る菌やウィルスに対して、『オキサイダー』を使えばもっと効くというメッセージを出したかったのか(消費者庁談)、“ウィルスを99.99%除去”“73%の人がオキサイダーを選んでいます!”などと表示していた。

 「リビング以外にもさまざまな場所にお使いいただけます」とし、「玄関」、「寝室」、「トイレ」、「浴室」、「客室」、「病室」、「介護施設」、「教室」などのさまざまな場所で使用できると表示していた。

 テレビCMでは、「空間除菌漏れ~♪」という言葉を多用。空間除菌対策を頑張っている女性に対し、女児が「でも漏れていたのです」と指摘。“空間全体に浸透、菌やウイルスを除去”という字幕、「効果は長持ち3ケ月」(特許取得)という女児の声と字幕。部屋全体に広がっている菌やウイルスを除去するということを視聴者に訴えかけている。

 CMの最後は、「空間除菌漏れにオキサイダー」という音声と“日本の住宅を空気革命 オキサイダー(約90%のママがオススメ!)”という字幕でフェイドアウトしている。

 以上を踏まえて消費者庁は両社に対し、景品表示法第5条第1号違反「優良誤認」とみなし、同法第7条第1項の規定に基づき措置命令を行った。

 消費者庁は、「二酸化塩素そのものについて、何か私たちが言うというものではない」としながらも、提出された資料について合理的な根拠が見当たらなかったために今回の措置に至ったとしている。

 措置命令の根拠の1つとして消費者庁は、大木製薬のストラップについては、1㎥内の密閉した容器内で、シャーレの上に乗ったウィルスが死んだという実験データを提出されたに過ぎず、「除菌と関係がないので、なかなか根拠として用いることは難しい」と説明。

 また、浮遊菌の試験については、6畳間で電動ファンを回して菌が死ぬかということを検証しているが、大木製薬は試験の開始前夜から10数時間、密閉空間の中で電動ファンを回し続け、その後に浮遊菌を空中に散布。それで菌が死んだかどうかを検査しているとし、「生活している中ではそんなことはなかなか起きない。実証環境との関連性はなかなかない」(消費者庁)と大木製薬の主張を斥けている。

『オキサイダー』でもウイルス試験が行われているが、こちらも10リットル(2リットル入りペットボトル5本程度)で、シャーレの上にある菌が死んだという報告。また携帯用では、使用すれば上の方に二酸化塩素が上がってくるという報告だが、資料では菌を死滅させるための二酸化塩素が一定程度の濃度に高まることが「空気がある空間」、「歩行状態」などで実証できていなかったとしている。

 今回の措置命令に対して両社はどう対応しているのか。

 

 CLO2 Labは取材に対し、「お詫びとお知らせ」以上に今お答えできることがないと回答。

 大木製薬は、「検証対策に注力をしている。よく引き合いに出すのがマスク。雑貨であったものが高機能のマスクというものになっていく過程で、その技術開発をやってきた。その中で、感染症対策の有力な手段として、二酸化塩素に着目を早くからし、合理的で科学的なエビデンスを積み上げて商品化した。それについて今回、表示の問題と、合理的な根拠という2点について(消費者庁から)ご指摘をいただいた」とし、「一部不適切な表示というのは確かにあったので、そこは正した」と、“99%除菌”や消費者庁から見にくいとの指摘を受けた「打消し表示」については修正したと述べた。

 ただ同社は、1年近くにわたって消費者庁に「ていねいな説明」(同社)を行ってきたにもかかわらず、結果的に措置命令に至った事態を問題視。今後、「第三者の見方、ご判断を仰ぐということも視野に入れ、慎重に対応する」としている。措置命令に対する執行停止の申し立てなどの対抗措置も視野に入れているという。

 当日の記者会見では、出席した新聞社の記者から、「空間除菌に関して、実験というのはこうあるべきじゃないかというメッセージを消費者庁として出す時がそろそろ来ているのではないか」との指摘もあった。

 景品表示法はあくまで「不当表示」の問題。消費者庁が主張するとおり、「菌を死滅させる根拠」を実証する研究が確立されていないなか、それを否定する研究も存在しないわけだ。しかし消費者庁は措置命令を出してくる。

 悪魔の証明とも言える証明を証明する手立てがあるのかどうか? 医薬品医療機器等法と違い、景品表示法では立証責任は企業側にあるため、これからも企業にとっては将来的に大きな課題となる。

【田代 宏】 

【YouTube動画】記者会見の様子

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