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文春掲載「放言」のルーツを探る 昆編集長、鈴木東大教授を語る

 5月15日、㈱農業技術通信社(東京都新宿区、昆吉則代表)が発刊する農業ビジネス誌「農業経営者5月号(No.326)」に、「特集 おいおい鈴木君 鈴木宣弘東大教授の放言を検証する」が掲載された。「文藝春秋」4月号に掲載された「日本の食が危ない!」という30ページにわたる鈴木宣弘氏の寄稿文の内容を検証するというもの。
 ウェルネスデイリーニュース編集部では、同検証記事を掲載した「農業経営者」編集長で農業技術通信社社長の昆吉則氏に話を聞いた。(以下、敬称略)

記者 月刊誌「農業経営者」について教えてください。

 文字どおり、農業経営者を応援するための情報を発信する雑誌として1993年5月に創刊し、今年30周年を迎えました。93年と言えば、ウルグァイラウンド農業合意に農業界が大反対をしている時代で、農家が動員されてムシロ旗を上げデモを繰り返していた年です。そんな姿を見て、果たして農業の経営主体とは誰なのだろうか。農家とは、自ら借金をする農水省と農協の「作男」に過ぎないのではないのかと思いました。それで農業経営の主人公は君自身、それも時代と市場社会の中でその役割を果たす「農業経営者」じゃないのかと呼びかけたのです。

記者 当時の農業メディアは何を発信していたのでしょうか。

 当時は、農業界と言わずあらゆるメディアも含めて、いわゆる「機械化貧乏論」が盛んに語られました。「農家は農機メーカーに機械を買わされるために出稼ぎに出ていかなければならない」などと農機メーカー悪者論が盛んに語られていました。そして農業メディアでは、試験場が開発した技術や機械は紹介するのに、メーカーの商品は企業の宣伝になるからと記事にしないのです。

記者 農家ではなく農協のためのメディアだったということですね。

 試験場が開発する機械は売っていませんから、農家は使えない。だからその記事は何の役にも立ちません。たまにメーカー製品を紹介する記事があっても、メーカーが公表している小売価格を出さないのです。農機具の流通を支配しているのは農協組織で、しかもその価格は地域によって大きく異なっていました。それが知れることは農協組織に都合が悪いので、農業メディアは価格を出さなかったのです。この雑誌を始める前に、私は農機具の業界紙に勤めていて、各地の農家を取材する中で、農家は機械導入することで労力や時間に余裕が出て外に働きに行けるようになる。確かにその経営面積を考えれば過剰投資であることは事実なのですが、出稼ぎや会社勤めをすることで農家の暮らしを豊かにしていったのです。
 「機械化貧乏論」は大嘘だったのです。

記者 あえて農機メーカーの機械を紹介したと?
 
 まだ農機業界紙に勤めていた時代に、農業団体が発行する農業メディアに、全国各地にある農機メーカーの機械を紹介するコラムを書いていました。小売価格も含めて。それはとても好評でした。
 そんなことから、農家がその情報を求めている農業機械のカタログ雑誌という性格を持ちながら、農業の主人公たる農業経営者の誇りと、市場社会の中での農業経営をする上で問うべき話題として「お天道様とお客様」を語ってきました。お天道様は農業が依拠する土と自然、お客様は市場であり時代です。

記者 特集「おいおい鈴木君 鈴木宣弘東大教授の放言を検証する」を掲載するに至った経緯についてお聞かせください。

 鈴木氏は九州大学在籍時、酪農に関する優れたレポートを出しており、「農業経営者」の執筆者の1人でした。しかし、特にTPPの辺りで農協御用達の人になってしまい、TPPに参加すると日本の農業が滅びるなどと発言していました。私たちは、農業経営者を応援する雑誌ですが、TPPに参画すべきだというスタンスですので、その頃から鈴木氏とは意見がすれ違うようになってしまいました。

記者 鈴木氏を取り上げたメディアに原因があるということでしょうか。

 その後の鈴木氏の発言は、文藝春秋の2月号や4月号、その他単行本などにもありましたが、農業や農薬、遺伝子組換え技術について認識のある人からすれば、デタラメで到底学者とは思えない、いい加減なものだとして問題視しておりました。それだけならまだしも、NHKを含めた各メディアがそんな鈴木氏を取り上げる。鈴木氏がひどいというだけではなく、メディアのいい加減さ、文藝春秋の売れればいいという発想を黙認できないということで、以前から『AGRI FACT』などを通じて発信してきたことも含めて、今回、「おいおい鈴木君」というタイトルで検証記事を出すことになりました。

記者 記事中にあるAGRI FACT編集部、土門氏、山下氏との関係は?

 AGRI FACT編集部は私たちのことで、その他、特集内で執筆している土門剛氏、キャノングローバル戦略研究所の山下一仁氏は、当社が古くからお付き合いしている外部ライターさんです。今回、彼らに思いの丈を存分に書いてもらいましたので、おかげさまで同特集は、あちこちで好評となり、販売部数も伸びました。農家を含めて鈴木氏の主張に違和感を持っていた人たちは、独自にSNSなどで発信するなど反響がありました。

記者 検証記事に対する鈴木教授、文藝春秋社の反応はいかがでしょうか。

 今のところ、特にこれといった反応はありませんし、今後も特に何か言ってくることはないと思います。また、当社から彼らに直接抗議や訂正要望を出すなどの行動を起こすつもりもありません。ただし、これまでどおり、違うものは違う、おかしいものはおかしいということを、エビデンスに基づいて発信していこうと考えています。また、記者や外部の有識者を交えた公開討論会をやってはどうかといった声もいただいております。

ーーありがとうございました。 

 ウェルネスデイリーニュース編集部では、同時に、文藝春秋社と鈴木宣弘氏に、同検証記事が掲載された旨と、それに対する今後の対応について質問書を送ったが、期限までに回答は無かった。

【藤田 勇一】

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