SBSグループ 通販物流事業を本格稼働
メガ物流企業が市場参入 30年に売上高1千億円規模へ
グループ売上高が4,000億円を超える総合物流大手SBSホールディングス㈱(東京都新宿区、鎌田正彦代表)が、健康食品や化粧品などの通販物流事業に新規参入する。業界大手の〝メガ〟物流企業が、少量・多品種を取り扱うため小回りを利かせる必要のある通販物流に本格参入するのは異例。今年からグループ全体のリソースを集中的に投下し、通販市場での存在感を一気に高め、2030年までに通販物流事業の売上高を1,000億円規模まで引き上げる計画だ。
総合物流企業の強み生かす 増大する通販物流の受け皿に
20社超のグループ会社を抱えるSBSホールディングスの21年12月期の業績。連結売上高4,035億円、経常利益は約200億円の増収増益だった。売上高の伸び率は前年同期比で50%超、経常利益はおよそ90%増と大幅な伸び。
創業は1987年。鎌田代表が起業し、同年立ち上げた㈱関東即配から始まった。03年にJASDAQ市場に上場(現在は東証一部)した後、主に大手メーカーの物流子会社を対象にしたM&A(企業合併・買収)を次々に進めることで業容を急拡大。04年の雪印物流㈱を皮切りに、最近では、リコーロジスティックス㈱(18年)、東芝ロジスティックス㈱(20年)、古河物流㈱(21年)をそれぞれグループに迎えている。
SBSグループは、荷主の物流業務を総合的に受託する、いわゆる「3PL」(サードパーティロジスティクス)を強みに成長してきた。それに続く新たな収益の柱にできると鎌田代表が見染めたのが、新型コロナ禍で需要が大きく高まり、今後も拡大が予測される、サプリメント・健康食品やスキンケア化粧品などの通販商品に特化した物流だ。新たなサービスとして通販物流事業を開発するため、若手社員を中心とするグループ横断のプロジェクトチームを発足させた。
通販物流は中小規模の物流会社が手掛けている場合が多く、今後の通販市場拡大に伴う需要の増加に十分対応できない可能性がある、と同社では見る。そのため、運用総面積として90万坪を超える物流施設を全国的に運用し、自社開発による施設も多く抱える総合物流企業の強みを生かし、物流網から溢れ出る通販商品の「受け皿」としてSBSグループを機能させることで通販市場を支えたい考え。現在、通販専用物流センターの開発も視野に、首都圏の数カ所に大規模物流センターの建設を計画している。24年1月には、総坪数7.5万坪のうち約2万坪を通販物流専用センター(千葉県野田市)として稼働させる予定だ。
独自のプラットフォーム リーズナブルな料金で提供
SBSグループが通販物流事業を通じて通販事業者に提供していくサービスは、入荷、保管、出荷といった一般的な物流業務や流通加工などに加え、コンサルティングなどの顧客サポート、製品の撮影、採寸、サイト開設といった、いわゆる「ささげ業務」も含めたフルフィルメントサービス。それを、「フルフィルメント・バイ・SBS」と名付けてシステム構築を進めている。通販事業者に多い中小規模企業から大手企業までを対象にした、通販特化型の物流プラットフォームを通じて提供する。中小規模企業や新規参入企業にも利用してもらえるよう、リーズナブルな料金に抑える方針だ。
SBSグループの通販物流事業の中核は、業種業態や商材を問わないトータルロジスティクスを強みとするSBSロジコム㈱(東京都新宿区)が担う。同社の靍岡征人常務執行役員は、「当社単体の直近(21年12月期)売上高は680億円。今後、300~400億円の売り上げを通販物流のみで積み上げる計画だ」と新事業に向けた意気込みを語る。「さまざまな通販商品の物流を手掛けていくつもりだが、成長の可能性が最も見込めるのは健康食品や化粧品だと見ている」とも話す。
SBSグループの鎌田代表は、今年2月に開催した21年12月期決算説明会の中で、通販物流事業を今期から本格稼働させる方針を発表。その上で、通販物流事業のグループ売上高を、8年後の30年までに1,000億円規模に成長させる計画を明らかにした。グループ全体で6,000億円の売上高を目指しつつ、通販物流事業で全体の2割弱を稼ぐ構想だ。
鎌田代表はまた、通販物流事業について、「大規模倉庫の内部をロボットが縦横無尽に走り回り、配送まで自社で完結すればグループの優位性は高まる」(22年年頭所感)とする展望を示している。通販物流専用センター内に最先端の物流ロボットを配備しつつ、通販商品の輸配送も含めてグループ内で手掛けていく方針だ。
【石川太郎】
冒頭の写真:SBSロジコムが運用する物流拠点の1つ「野田物流センター」(千葉県野田市)。