L-カルニチンが機能性関与成分に 【新規の機能性関与成分を探して】脂肪燃焼の向上、ロンザが初の届出
コエンザイムQ10、α-リポ酸とともに一世を風靡したL-カルニチンが機能性関与成分になった。届け出たのは、「カルニピュア(Carnipure)」のブランド名で知られるL-カルニチンを供給するロンザ㈱(神奈川県相模原市、小林亨社長)。システマティックレビュー(SR)のPRISMA2020準拠対応も終えている。訴求する機能は「脂肪燃焼の向上」。ふたたび一世を風靡させることができるか。
SRのPRISMA2020準拠に対応
L-カルニチンの届出が初めて公開されたのは昨年8月。現在までに計2件の届出が公開されているが、いずれも届出者はロンザで、機能性表示も同じ。すなわち「L-カルニチンは運動後の脂肪の燃焼を高めることが報告されています」である。現時点で最新の届出(J1054)は、機能性表示の科学的根拠がPRISMA2020準拠のSRに刷新されている。
ロンザによれば、体内の長鎖脂肪酸をミトコンドリアに運搬することでエネルギーを産生させる働きを持つL-カルニチンは、日本においてスポーツニュートリション(栄養)の分野で一定の需要がある。そのため、機能性表示が果たして必要なのか、という議論も内部ではあった。しかし、「カルニピュアを新しい領域に広げる」ために機能性表示を行えるようにする必要がある、と最終的に判断。そしてSRを実施して届け出たのが前述の機能性表示だ。
その科学的根拠であるPRISMA2020準拠のSRは、計4報の論文を採用したものになっている。SRの結果について同社は届出資料で、「L-カルニチン750mgの摂取によって、運動後の呼吸商(脂肪の燃焼程度の判断指標)が有意に低下した」とし、「この結果から、L-カルニチンの摂取により運動後の脂肪の燃焼を高める機能を確認した」と説明。この結果が機能性表示にしっかり反映されているのだが、注目したいのは、脂肪の燃焼を高めるのは「運動後」である点だ。その効果を期待できるのは、どれくらいの強度の運動を行った後なのか。
その答えは届出資料の中にある。それによれば、4.8メッツ(METs)相当の運動(身体活動)後に脂肪の燃焼を高める効果が期待できるという。4.8メッツの運動とは、「家での活動(部屋の片付け)」をほか、速い歩行、ゴルフ、ボーリングなどといった「運動」に相当するという。無理のない「日常生活レベルの運動」と言い換えることもできそうだ。
750mgの単回摂取で有効性を示す
ロンザはカルニピュアL-カルニチンを今後、スポーツニュートリションのみならず、より生活者に近い生活習慣対策の領域にも広げようとしている。そのため、同成分の基本的な性能といえる脂肪燃焼機能に着目し、機能性表示を行えるようにした。そして、機能性関与成分としてのL-カルニチンについて、同社が強調していることがある。それは、SRに採用した文献4報のうち日本人を対象にした1報で報告されている知見だ。
この文献は、健康な成人男女11人を対象にしたカルニピュアL-カルニチンを単回摂取するクロスオーバー試験の結果を報告したもの。その結果、750mgを摂取した群は、低負荷の有酸素運動(エアロバイク)を30分間行った後の呼吸商について、運動の直後のみならず、3時間後および4時間後においても対照群(水を摂取)との比較で有意に低下していたという。この結果についてロンザは、「運動後4時間にわたり脂肪燃焼効果が続いたことを意味する」と説明している。
主な摂取対象者は、「健康な成人男女」とされている。ロンザは、科学的根拠を踏まえ、特段の限定を設けなかった。そのため、20歳以上の若い世代から中高年世代まで、幅広い層をターゲットにした製品開発を行うことができそうだ。1日摂取目安量あたりに配合すべきカルニピュアL-カルニチンは750mgとなる。
同社は今後、カルニピュアL-カルニチンで可能な機能性表示を拡充する方針。脂肪燃焼を高める機能を軸に、生活者にとってより魅力のある機能性表示の実現を目指す、としている。新たな機能性表示はどのようなものになるのか。
【石川太郎】
(冒頭の画像:SRに採用した文献(J Nuri Sci Vitaminol 2020,66,136-149 Odo et al.)を基にロンザが作成したグラフ。縦軸のnpRQは呼吸商のこと。その値から体がエネルギー産生のために主にどのよう栄養素を利用しているかが分かる。脂肪を多く燃焼させたときはその値が減少する。同社提供)
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