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KBCCの販路支援~仏から台へ拡大 TSMCの熊本進出で盛り上がる九州

 熊本に進出した半導体メーカー・台湾積体電路製造(TSMC)の影響で、九州全体が期待に沸いている。鉄道路線の拡張に伴う交通網の整備をはじめ、ショッピングモールの建設や関連企業の集積によって見込まれる不動産需要など、(公財)九州経済調査協会は、この先10年で20兆円に及ぶ経済の波及効果を見込んでいる。熊本に事務局を置く九州地域バイオクラスター推進協議会(KBCC/熊本県益城町、田中一成会長)もその1つ。九州管内の食品メーカーの台湾における販路開拓事業を着々と進めている。

Japan Weekきっかけ さらにブラッシュアップ

 (公財)くまもと産業支援財団が事務局を務める九州地域バイオクラスター推進協議会(以下、九州バイオクラスター)は、九州の特性を活かした機能性・健康食品・素材などの研究開発・量産化拠点の形成に向け、研究や開発はもちろん、販路開拓までさまざまな支援活動に取り組んでいる。
 昨年、特に力を入れたのは「海外連携事業」、「機能性表示食品支援事業」、「アライアンスマッチング事業」の3事業。海外連携事業では、昨年10月19日~22日にかけて、フランスのディジョン市で開催された「Japan Week(ジャパンウィーク)」の会場にブースを設け、現地の消費者やプロに向けた試食・試飲・販売会、九州の食品セミナーを実施した。今後の展開について、フランス農業食品イノベーションクラスター「VITAGORA(ヴィタゴラ)」とともに、「発酵」、「食品機能性」をテーマとした、産学連携による食品の創出、輸出促進に向けた日仏共同プロジェクトの組成、推進を目指しており、VITAGORAのサバティエ ルイ・晃Japan Officeマネージャーと会員企業等を訪問するなどしてニーズ探索を進めているという。

 九州バイオクラスターの田中会長は次のように話す。
「事業者の皆さんを、当協議会とヴィタゴラが連携しながらサポートする。商品をよりブラッシュアップし、企業の成果がより一層フランスにつながるよう、またフランス企業も日本でスムーズに展開できるような体制を構築する」

キーワードは「発酵」 産学共同で事業化目指す

 事業各社が自己責任で成長を目指す。そのために両国に共通の「発酵」をテーマに選んだ。
 「九州エリアでは、味噌・しょう油・焼酎などの発酵食品が盛ん。また、ワインの町として知られるディジョン市のあるブルゴーニュ地方も発酵は活発に行われている。さらにフランスでは海藻類への関心が高い。これもまた九州ではモズクやアカモクなどの微細藻類を研究している企業がかなりある。これらを発酵というキーワードでつなぎ、産学で共同研究しながら成果を上げ、事業化へとつなげたい」

 事業化への具体的な計画を田中会長は力強く説明する。フランスを足掛かりに積み上げた3年間の成果を「発酵食品」や「食品機能性」をテーマにさらに積み上げ、ゆくゆくはASEANにも進出し、「閉塞感のある日本企業に夢を持ってもらいたい」と意気込む。その足掛かりとなるもう1つの施策が「台湾進出」である。

フランスから台湾へ FOODEXでニーズ調査

 冒頭で紹介したTSMCの日本進出がきっかけとなり、九州バイオクラスターでは、注目されている台湾に対し、逆に輸出を仕掛けるというアプローチ策を模索した。事務局を務める(公財)くまもと産業支援財団産学連携推進室の池裕子室長によれば、すでに今年3月、我が国で開催された「FOODEX JAPAN2024」でニーズ調査を行った。

 台湾ブースを訪ねた池氏らは、パージャオ(八角)など台湾人が美味と感じる味覚、商品やトレンドなどを探索し、台湾に出展する事業者の商品選定の参考にしている。
 台湾における販路開拓強化事業の柱は、①台湾の市場に受け入れられるように商品のブラッシュアップを支援、②台湾における受け入れパートナーとの商談をサポート、③現地展示会・商談会での成約に向けたサポート――の3つの支援。

FOOD TAIPEI2024出展 展示商談会でフォロー

 全国商工会連合会の共同・協業販路開拓支援補助金を活用し、6月26日~29日にかけて4日間開催される「FOOD TAIPEI2024」に出展後、9月には現地で開催される展示商談会への参加を企画している。同展示会の昨年の実績は、来場者数4万6,539人、出展社数1,053社。海外からは5,252人が訪れている。
 「大きな1つの日本の塊(かたまり)の中で、九州バイオクラスターの取組として九州・熊本館を設置する」と池室長。

 具体的には、共通の冊子を作成するなど、さまざまな関係団体と連携しつつ横のつながりを大事にしながら支援を推進している。参画事業者は12社。これまでフランスに向けた支援ノウハウはあるが、台湾に対する知識は皆無。台湾では残留農薬をはじめ、輸入検査におけるレギュレーションが我が国とは異なる。そのため、台湾事情に詳しいコーディネーターが伴走支援を行い、現地情報の提供や展示会の出展フォロー、物流事業者や代理店事業者の開拓などさまざまな助言の仕組みを整えている。また、台北に駐在員事務所を開設している肥後銀行が、FOOD TAIPEI2024への出展を支援する。さらに、地元の銀行と連携するかたちで展示商談会への参加やPRを支援するという。

 こうした九州バイオクラスターの支援は、事務局の手で緻密に組み立てられたロードマップが推進の原動力となっている。「ゴールを見据えて進めている」という池室長。「フランスにおける展開でも、機能性食品のネットワークでも、ゴールが決まっているからその間のロードマップが自然に決まってくる」と説明。九州バイオクラスターの会員のニーズに応えるためにきめの細かい支援を徹底させている。
 5月15日~17日までマリンメッセ福岡で開催された第34回「西日本食品産業創造展’24」では、会員企業の㈱サンダイ(長崎県大村市)と共同出展した。

機能性表示食品の届出支援 九州管内の大学と連携へ

 同クラスターは、機能性表示食品制度への届出支援も行っている。田中会長が在籍する長崎県立大学、そして鹿児島純心大学や宮崎大学などと連携し、ヒト臨床試験などが実施可能なネットワークを構築し事業者の相談に応じる。システマティック・レビュー(SR)を進めるかどうかも含め、ワンストップで相談に応じることができる体制を構築している。
 「将来的には熊本と福岡の大学とも連携し、SRも含めてできるだけ廉価な価格で対応したい」(田中会長)と話す。少なくとも年度内に支援実績を積み上げる予定だ。

【文・構成:田代 宏】

(冒頭の写真:右から田中会長、池室長)

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