JHNFA、トクホ制度に関する要望書を提出
<消費者庁、消費者委員会へ要望>
(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)は8日、消費者庁と消費者委員会に対し、特定保健用食品(トクホ)制度に関する要望書を提出したと発表した。
消費者庁に対する要望は、(1)疾病リスク低減型トクホの表示の拡充と仕組みの拡大、(2)トクホと機能性表示食品のすみ分け、(3)消費者・専門家への適切な情報開示。
疾病リスク低減型トクホについては、消費者庁が今年度に実施する調査事業で、規格基準の拡充に加え、個別審査型の申請を促すための申請ガイダンス作成に向けた調査も対象とするように要望。これに加えて、「食品成分とバイオマーカー」「バイオマーカーと疾病リスク低減」の2段階の証明による疾病リスク低減表示を認める仕組みの導入を求めた。
トクホと機能性表示食品のすみ分けでは、トクホの表示内容の見直しを要望。「本品を摂取することで、血圧が高めの方の血圧を下げることがヒト試験において確認されており、血圧が高めの方に適した食品であることを表示することが国によって許可されています」のように、科学的エビデンスに沿った健康強調表示を可能とするように要望。さらに、現行の「許可表示」「関与成分」の用語を「期待できる効果」「有効成分」にそれぞれ変更することも求めた。
消費者や専門家への情報開示については、安全性・有効性の評価書を基に、国が消費者向けと専門家向けの情報公開データベースを整備し、トクホの活用を促す仕組みを検討するように要望した。
また、消費者委員会に対しては、消費者委員会で行う審査の結果を「評価書」として公表するように求めている。
【解説】
<調査事業の委託で求められる利益相反の排除>
消費者庁は今年度中に、疾病リスク低減型トクホに関する調査事業を実施する。疾病リスク低減型トクホは現在、「葉酸」と「カルシウム」の2種類。対象成分の拡大が狙いだ。
消費者庁が調査事業を実施する背景には、機能性表示食品制度の登場により、業界のトクホ離れが進んでいることがある。消費者庁の担当課では「トクホ制度だけにある疾病リスク低減型を拡充する」と話している。しかし、疾病リスク低減型表示は人気がなく、許可件数はわずか13件で、そのうち販売中のものは6件にすぎない。
疾病リスク低減型トクホを拡充する場合、十分な科学的エビデンスがあるものに限定することが原則となる。調査事業で海外諸国の制度を調査するとみられるが、EUや米国で採用されている成分であっても、「葉酸」「カルシウム」と同等レベルの科学的エビデンスがあるかを慎重に検討する必要がある。
さらに、厚生労働省の食事摂取基準の検討で、科学的エビデンスが不十分とされた成分を対象外とするなど、ほかの各制度との整合性も考慮しなければ、政府内で矛盾が生じることになる。
JHNFAが出した「許可表示」「関与成分」の用語を「期待できる効果」「有効成分」に変更するという要望についても、慎重な判断が求められそうだ。「期待できる効果」や「有効成分」と製品に表示したり、広告で標ぼうしたりすると、消費者は医薬品なのか食品なのかの判断が困難になるとみられる。現行制度でも、トクホと医薬品の違いを認識できない消費者が一定数存在し、重要な課題となっている。そうした課題を解決できないうちに、さらに消費者を誤認させるような見直しは、消費者団体などの反発を招く可能性もある。
また、疾病リスク低減型トクホに関する調査事業を健康食品業界団体へ委託した場合、利益相反が生じる恐れがある。健康食品業界団体は消費者利益を軽視し、業界利益だけを重視する傾向にあるため、調査事業は公平な第三者に委託することが求められそうだ。