H17年通知改正ある?【厚労省に聞く】 健康被害未然防止と製造品質管理の関係
健康食品の製造事業者にとって重要な行政通知がある。通称「平成17年通知」。製品の品質と安全性の確保を推進することを目的に厚生労働省が2005年2月1日に発出した通知だ。これをきっかけにGMP(適正製造規範)の考え方が健康食品業界にも広がり、現在までにおよそ220施設がGMP適合工場認定を受けるまでになった。だが、すでに17年超が経過。そろそろ見直しがあっても不思議はない。
指定成分制度施行で「検討の余地が存在」
平成17年通知の正式な題名は「『錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について』および『錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン』について」。原材料から最終製品まで、事業者が自主的に安全性の確保を推進するための方策を示したもので、原材料の受け入れから最終製品の出荷まで全工程におけるGMPと、原材料の安全性確保に関するガイドラインをまとめている。これを受けて民間による健康食品GMP認証がスタートすることになった。
「改正の必要性について検討している」。
厚労省食品基準審査課新開発食品保健対策室の一色聡志・健康食品安全対策専門官は平成17年通知についてそう話す(以下、コメント部は全て一色専門官による)。
そうする必要があるのはなぜか。まず、「(通知の発出から)時間が経った」ことがある。また、2018年の食品衛生法改正に伴い、特別な注意を必要とする成分を含む健康食品に対し、GMPを義務付けるなどした指定成分等含有食品の制度が施行されたことも挙げる。
「改正の方向性が具体的に定まっているわけではないが、例えば、平成17年通知と、指定成分等含有食品に義務付けたGMPに関する告示や通知との間に生じている差など、検討の余地が存在する部分はあると考えている」。
有識者が改定案、「現状も踏まえ改正の必要性検討」
指定成分等含有食品のGMPにかかわる告示や通知は、平成17年通知と比べると、GMPに関する規定が細かく、かつ、具体的に記述されている。一色専門官が言及する「差」とはそれだ。
その差を埋める一定の方策をすでに有識者が検討している。2018年度から20年度にかけて行われた厚労科学研究『健康食品の安全性確保に資する情報提供、品質確保、被害情報収集体制の構築に関する研究』の枠組みで検討されたもので、報告書も公表済み。それによれば、該当研究では平成17年通知の改定案を作成。そのうえで、その実行可能性などを事業者と意見交換するよう厚労省に提言している。
「報告書と現状を踏まえ、平成17年通知の改正の必要性を検討しているところ。(告示や通知に)揃えていく必要があるのかどうか。事業者の意見も聞きながら、しっかり考えたい」。
GMPの義務化はどう考える?
では、指定成分等含有食品以外の、保健機能食品を含めた「いわゆる健康食品」にGMPを義務付けることを厚労省はどう考えているのだろうか。海外諸国における規制とのハーモナイゼーションなどを踏まえ、GMPの義務化を求める声が以前から業界内にはある。
「そうした意見があることは承知している。まずは幅広い意見を基に実情を把握していきたい」。
一方で、指定成分等含有食品に対してはGMPを義務付けている。そのため、厚労省としても整合性を図る必要性を意識しているとみられるが、一色専門官はこう話す。
「平成17年通知に基づく事業者の自主的な取り組みによって、製造・品質レベルはかなり上がってきていると考えている。確かに、GMPを義務化することで、国民もより安心して健康食品を利用できるようになる可能性はあると思う。一方で、事業者に及ぼす影響も大きい。事業者が自主的にGMPに取り組んでいる現状を踏まえ、どういった形が適切なのかを必要に応じて考えていきたい」。
健康被害の未然防止、「情報収集と製造・品質管理の両輪回す必要」
他方で、因果関係は必ずしも明確ではないにせよ、健康被害情報が報告されている実態もある。そのため厚労省では、健康被害情報の報告も義務付けた指定成分等含有食品の制度運用状況も踏まえ、いわゆる健康食品全般の健康被害情報を公表し、国民に広く情報提供しようとした。
結果、公表予定だった14事例に関しては、緊急の対応が必要な状況が必要ではないこともあり、成分名や製品名の公表は原則、行わないことにした。一方、現在、それに代わる新たな方針を検討中だ。健康被害の発生を未然に防ぐため、リスク管理の全体像の見直しとその円滑な運用を目的として、健康被害情報の収集に関する通知「健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領」(平成14年通知)の改正を視野に入れた新たな方針の検討を進めている。
新たな方針を検討しなければならない理由は何だろうか。
「健康食品を利用する国民が増えている実態がある。厚労省としても適正利用を考えていく必要がある。その一端として、(健康被害情報の公表に向けた取り組みなど)一連の動きを立ち上げてきた。健康被害を未然に防止するためには、健康被害情報の収集と製造・品質管理の両輪を回していく必要がある。その両方を検討していければと考えている」。
【石川 太郎】
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