激しいコスト高に見舞われたが直近業績（2023年9月期）は堅調に推移。売上高は前期比約14％増となり、利益面は1ケタ増で前期並みにとどまったものの、増収増益で着地させた。岩瀬コスファグループに迎え入れられて3年目のビーエイチエヌ㈱（恩田明広社長。以下、BHN）は今年、前年までの取り組みを一層加速させることで成長を図る。

順調に推移した素材販売とEBF事業

　前期の堅調な業績を支えたのは機能性食品素材の販売増加だ。

　「当社の独自素材の中でも機能性表示食品に対応しているものを中心に案件の増加があり、順調に伸ばすことができた」と話すのはBHN社長の恩田氏。

　その中でも目を見張る大幅伸長を見せた素材がある。グループのBHNタイランド社がタイで製造するフィッシュコラーゲンペプチドだ。「品質の向上に取り組んだ」ことに加え、アフターコロナへの転換を受け、美容食品の消費が回復していったことが追い風になった。

　素材販売の他にも、2年前に立ち上げたEBF（Evidence-Based Functional Food）事業が順調に伸びた。

　「問い合わせが本当に多い。今期は、今後の工数増加に備えた人員の拡充を着実に進めていきたい」と恩田氏が語る同事業は、一言でいえば、科学的根拠に基づく機能性食品の開発支援事業だ。

　地域の未利用資源などを活用した、独自の機能性食品素材の研究開発や製品化などを支援したり、機能性表示食品を届け出るために必要となる、科学的根拠を得るためのシステマティックレビューや臨床試験などを受託したりする。前期は機能性表示食品に絡む案件を中心に仕事が増え、予算の達成も果たした。

　一方、急激なコスト高騰の煽りを最も受けた、最終製品OEM事業についてはこう振り返る。

　「通販を中心に在庫調整を行う動きもあり、前期比で伸ばせるような状況ではなかった」

　ただ、マラソンなどのスポーツイベントが再開され始めたこともあり、主力のTパウチ充填ゼリー食品の案件が前期比で増加。また、現時点で6機能領域11素材を取り揃える、機能性表示対応素材を生かした、機能性表示食品OEM受注増加に向けた提案活動に取り組んだ。「前期に仕込んだものがかたちになるのは今期。しっかり伸ばせるようにしたい」

首都圏に研究開発拠点　機能性素材開発を加速

　「われわれのこれまでの動きに間違いはないと思っている。特に変わったことはせず、これまでの動きを加速させていく」。今期の取り組みについて恩田氏は語る。

　足もとで好調な各事業の動きを加速させるのに必要なのは、全ての事業の基盤となるR＆D（研究開発）の推進だ。そのため昨年11月、神奈川県横浜市鶴見区に新たな研究開発拠点「横浜ラボ」を開設した。

　「人員も含めて、主要な研究開発機能を横浜に移す。評価系を加速させ、既存素材のエビデンス強化や新規素材の開発促進につなげていきたい」

　そのようにして開発した製品を確かな品質保証のもと顧客に提供できるようにするための品質管理にも投資する。その上で「販売ルートも広げていきたい。前期に引き続き営業人員を増やす予定でいる」

「未利用資源バンク」が拓くもの

　今年は「未利用資源バンク」の運用も始める。

　農林水産物の規格外品や加工残さなどの未利用資源を抱える側と、それを有効活用したい側をつなげるために、BHNが独自に立ち上げるビジネスマッチングプラットフォーム。未利用資源を原料にした機能性食品素材の研究開発や、EBF事業を進めるなかで創案し具現化していった同社なりのSDGs貢献活動でもある。会員登録を前提に、無料で利用できるようにする。

　「未利用資源はまだまだ国内に眠っているはずで、その活用の仕方も機能性食品素材に限らない。多くの企業を巻き込みながら、国内の未利用資源が活用されていくお手伝いをできれば」と恩田氏。未利用資源バンクは、新規素材の研究開発を促進させる役割も果たすと見ている。

【石川太郎／2023年12月取材】

（冒頭の写真：BHNの新たな研究開発拠点「横浜ラボ」が入居する施設。同社提供）

＜COMPANY INFORMATION＞
所在地：東京都千代田区神田錦町1-16（本社）
TEL：03-5281-5661
URL：https://bhn.co.jp
事業内容：サプリメント・健康食品等の製造販売

関連記事
：BHNが新サービス立ち上げへ　未利用資源バンク、シーズとニーズを無償でマッチング
：機能性表示食品にもっと国産原材料を　BHNが進める国内未利用資源の有効活用
：コラーゲンペプチド、タイに生産拠点持つBHNの強みとは　岩瀬コスファとシナジー創出
：BHNが新事業、EBF開発を支援　素材と最終商品　基礎研究から臨床までサポート