HACCP導入実態めぐりヒアリング 厚労省の食品衛生監視部会、小規模事業者多い業種から聞き取り
2018年改正食品衛生法の施行状況を踏まえた見直しを検討している厚生労働省の厚生科学審議会食品衛生監視部会が2月26日に会合を開き、検討事項の1つであるHACCPに沿った衛生管理について、実態把握を目的にした事業者団体ヒアリングを行った。
聞き取り対象は、食品衛生法に基づく営業許可業種のうち、HACCP未導入割合の高い傾向が見られる小規模事業者が多い業種を中心に選定。HACCP導入の課題や効果、業界としてのこれまでの具体的な取り組みを各団体から聞き取った。
ヒアリングが行われたのは、飲食店営業に分類される(公社)日本食品衛生協会、(一社)日本フランチャイズチェーン協会、(一社)全国スーパーマーケット協会のほか、販売業の全国水産物商業協同組合連合会、全国食肉事業協同組合連合会の5団体。部会の事務局を務める厚労省健康・生活衛生局の食品監視安全課は、計10事業者団体から聞き取りを行うことにしており、次回、今月5日に開催する会合では、全日本漬物協同組合連合会など5団体のヒアリングが行われる。
厚労省の調べによると、飲食店、製造・加工業、販売業におけるHACCPに沿った衛生管理を「実施又は一部実施」している施設は、2021年度・22年度調査では約7~8割。これが25年度調査では約8~9割まで増加。「導入に向けて準備中」と回答した施設は約1~2割だったが、業種に関わらず従業員数が少ない施設で導入率が低い傾向が見られた。また、導入にあたっての課題として、「社内に導入を指揮できる人材がいない」などといった声が挙げられているという。
新型コロナ禍と重なった施行で「スタートラインから出遅れ」
ヒアリングで、個店の小規模飲食店の会員を一定数抱える(公社)茨城県食品衛生協会(日本食品衛生協会推薦)の関係者は、厚労省調査に基づく飲食店営業におけるHACCP導入状況を紹介し、「準備中」が25年度調査で全国平均が16.0%、茨城県では23.0%であった実態を伝えた。また、そのように回答した事業者が抱えているHACCP導入を巡る課題について、「HACCPの手引書の内容が難しく、理解できない」(複数回答で18%)、「HACCPの導入・運用は手間とお金がかかりそうなので当面取り組めないと思っている」(同14%)、「社内に導入を指揮できる人材がいない」(同13%)などといった課題があるとした。
同関係者は、「HACCPの施行時期と新型コロナの時期が重なってしまい、行政対応も事業者対応もスタートラインから出遅れてしまった。コロナが明けた時点では、物価高や人材不足など経営を巡る諸課題があまりに多く目の前に迫ってしまい、どうしても(HACCPを取り入れた)衛生管理の部分が後回しになってしまっている」との見方を示した。
また、日本フランチャイズチェーン協会から推薦されて実態説明を行った、コンビニエンスストアチェーンを運営する㈱ローソンの関係者は、課題の1つとして、外国人従業員とのコミュニケーションを挙げた。外国人従業員の出身国・地域は昨年9月時点で30以上に上るといい、そうした中では、従業員が使用するすべての言語に対応したオペレーションマニュアルを用意することは困難。そのため、「理解が難しい単語を解説したり、優しい単語に言い換えたりした、分かりやすい日本語のマニュアルを用意し、コミュニケーションを取っている」と伝えた。
厚労省はヒアリングを通じて得られたHACCP導入の工夫を他業種へ共有したり、挙げられたニーズに対してより具体的な方策を提案したりといった取り組みにつなげたい考えだ。
【石川太郎】
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