GLP-1&筋肉、韓国素材の新知見 【機能性素材フロントライン】DNF-10とCoreBlast5の機能性研究が進展
韓国発の機能性食品素材である「DNF-10」と「CoreBlast5(コアブラストファイブ)」。どちらも以前から日本国内で販売されている素材だ。双方のメーカーおよび開発に携わった大学教授が来日(2025年11月)し、機能性研究の進捗について説明した。
両素材を開発、その後も機能性研究を進めている韓国・高麗大学校保健科学大学のソ・ヒョンジュ教授によると、最近実施した研究で新たに得た知見は、ヒトを対象にしていない研究(in vivo、in vitro)で得られたものだ。そのため、今後さらなる科学的根拠の積み上げが求められるが、DNF-10については血中のGLP-1濃度を高める機能があること、CoreBlast5についてはホエイプロテインと比較して筋肉に及ぼす働きが優れることが、それぞれ示唆されたという。
両素材を製造するのは、韓国・ソウル特別市江南区に拠点を置くネオクレマー社。日本では、総輸入元をヘルシーナビ(東京都大田区)、総販売元をビーエイチエヌ(東京都千代田区)がそれぞれ務める協業体制で販売されている。
「酵母ペプチド」とも呼ばれるDNF-10の日本上陸は今から約15年前。その約5年後、植物発酵エキスと組み合わせた最終商品がインバウンド需要も背景に販売を伸ばしたことなどを受けて市場に定着した。「現在も安定的な需要があります」とヘルシーナビの井上俊忠社長は話す。
一方、「安定」ではなく「伸長」している市場もある。「10年前は日本が最も大きな市場だったのですが、今は欧米です」(同)。ネオクレマー社のハン・ギスCEO(取材当時)によると、欧米ではこの3年でDNF-10を配合したサプリメントが約30品目も発売されたという。「そのうち5社が比較的大きな量を使用しています。2025年には(米国の大手サプリメント専門チェーン)GNCからも製品が発売されました」

欧米で注目集めるDNF-10、GLP-1を検証
この3年で何があったのか。「背景には欧米でのGLP-1を巡る抗肥満領域への関心の高まりがあります」(井上氏)。ソ教授らは、DNF-10の機能性として、食欲コントロール(食欲抑制)に関わる働きを論文などで報告してきた。こうした知見を背景に、GLP-1的な働きを期待するサプリメントに配合されるケースが増えているという。「日本では酵素・酵母サプリのイメージが強いと思いますが、欧米は違います」(同)。
そうした欧米での需要拡大を受け、ネオクレマー社とソ教授はDNF-10とGLP-1の関連性を検証する研究に着手。研究の概要や結果について同教授は次のように説明する。
「肥満は血糖恒常性の障害や代謝障害の発症と強く関連しています。ですから、DNF-10が血糖調整能やインスリン感受性に及ぼす影響を評価することで、GLP-1との関係を明らかにすることにしました。そのために行ったのは、マウスを使ったブドウ糖負荷試験(経口および腹腔内投与)と、STC-1細胞(マウス腸管由来内分泌細胞株)を使った試験です。
マウス試験の結果、DNF-10を投与した群では、低用量と高用量の両方とも、耐糖能とインスリン感受性の両方が改善しました。これはインスリンとGLP-1のそれぞれのメカニズムが働いた結果だと推測されます。実際、血中濃度を測ったところ、DNF-10を投与した群では、やはり低用量と高用量ともに、GLP-1が高まっていました。
次に細胞試験ですが、STC-1細胞にパルミチン酸を添加して高脂肪食を投与したのと似たような環境を作った上で、DNF-10を添加しました。その結果、やはりGLP-1の濃度が高まりました」
では、酵母由来のDNF-10に含まれる多種多様な化合物のうち、GLP-1に作用している物質は何なのか。ソ教授が説明する。
「DNF-10は、『MTCA』という物質が機能性物質であると考えられます。しかし、それ単独では有意な差は認められませんでした。ただし、私たちはMTCA以外にも2つの機能性物質を特定しています。それらがGLP-1の分泌を促進しているのではないかと考えています。いずれ、論文にまとめます」
CoreBlast5、ホエイプロテイン比較研究
一方、前述のとおり機能性研究に進展があったのはDNF-10だけではない。日本では2年前に販売が始まったCoreBlast5も同様だ。これはホエイプロテイン(WPC)を酵素で加水分解(低分子化)したもので、韓国では個別認定型の健康機能食品として機能表示が許可されている。表示の内容は、「筋肉改善をサポートし得る」旨。

「韓国では、大手乳業メーカーがヘルスクレームを行いながら大人の粉ミルク的な商品を販売しています」とヘルシーナビの井上氏。「日本でも、プロテインを中心とした複数の商品に採用されています。そうした中で、以前から頻繁に尋ねられていたことがあったんです。『吸収性などについてWPCと比較したデータはないのか』と」(同)。
そうした日本のユーザーの要望に応えるかたちでソ教授らは新たな研究(in vitro)を実施した。
「まず、吸収性を確かめました。CoreBlast5はWPCを低分子化したものです。ですから当然、WPCよりも優れた腸管吸収率を示しました」とソ教授。一方、説明がより熱を帯びたのは、筋肉分解抑制能に関する比較試験の結果だ。
「デキサメタゾンで筋損傷を誘発したマウスのC2C12筋管細胞にWPCとCoreBlast5をそれぞれ投与する試験を行い、筋肉萎縮を抑える効果を比較しました。その結果、それぞれ細胞を回復させましたが、その効果はCoreBlast5の方が高かった。また、筋肉の萎縮に関連する因子(FoxO3aやMuRf-1など)の遺伝子発現量を調べたところ、やはりCoreBlast5の方が発現量が低かった。同じ因子のタンパク質発現量をウェスタンブロットで調べた結果も同様でした」
このように、少なくともin vitroの試験では、筋肉細胞の分化や筋肉萎縮関連因子に対して、CoreBlast5の方がWPCよりも高い効果を示したという。「今後さらに研究を進め、将来的には動物試験からヒト試験の実施も検討しています」とソ教授は研究を継続する考えを述べた。動物試験については2026年春にも結果を発表できる見込みだという。
ヒト試験の結果に基づくCoreBlast5の1日あたり有効摂取量は6g。ネオクレマー社のハン・ギスCEOは、「2026年9月以降、韓国ではCoreBlast5を配合した商品が増えてくる可能性があります。CoreBlast5を主成分とした商品だけでなく、WPCと組み合わせた設計も考えられるでしょう」と話す。今後、日本ではどのように活用されていくのだろうか。
【石川太郎】











