消費者契約法見直し議論が本格化 脆弱性配慮や解約規律で論点整理
消費者庁は26日、「第2回 現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」(消費者契約法検討会)を開催し、ワーキンググループ(WG)におけるこれまでの検討状況について報告を受けた。
検討会は、消費者の多様な脆弱性への対応を中心に、契約拘束力からの解放、継続的契約の規律、解約料のあり方、ソフトローの活用などを巡り、幅広い論点について意見を交わした。消費者契約法を一般法としてどのように位置付け、実効性ある制度とするかが改めて問われた。
脆弱性への配慮を軸とした制度設計
冒頭、WG座長は、これまで検討してきた主な論点として、①消費者の脆弱性への対応、②消費者契約の各過程に関する規律、③解約料の実効的な仕組み、④ソフトローの活用、⑤横断的検討事項の5点を示した。
このうち、事業者による消費者の脆弱性への配慮を促す仕組みについて、検討会は「配慮義務」のような規定を設ける方向性そのものに大きな異論がないことを確認した。その上で、今後は配慮の内容や要件、法的効果をどのように具体化するかが課題になるとの認識を共有した。
契約拘束力の解放と継続的契約の課題
検討会は、脆弱性を踏まえた契約拘束力からの解放について、従来の取消権に加え、解除、無効、損害賠償の特則といった手法の導入可能性を検討した。一方で、こうした規律は従来の消費者契約法とは異なる制度設計となり得ることから、既存制度との関係や、消費者の属性をどこまで考慮できるのかといった点について、引き続き慎重に検討する必要があるとの認識を示した。
継続的契約を巡っては、検討会が、どのような場面で一般的な規律を設けるべきか、その規律のあり方を含め、多岐にわたる論点が存在することを確認した。特に、解約が困難となる仕組みや、契約時と同様の手段で解約できない実態を踏まえ、消費者契約法でどこまでを捉えるべきかが重要な論点になると整理した。
解約料とソフトロー活用を巡る議論
解約料については、検討会が、現行法が採用する「平均的な損害の額」という概念の分かりにくさを問題として取り上げた。消費者がその額を把握することが難しい点に加え、事業者にとっても、事前に平均的損害をどのように算定すべきか不明確であるとの意見が出された。
その上で、検討会は、事業者が正当化できない限り、現状回復を超える解約料を認めない方向性や、解約料の必要性について事業者側に説明責任を課す仕組みを検討する考え方を共有した。
また、ハードローを補完する手段としてのソフトロー活用について、検討会は特段の異論がないことを確認した。行政の関与の下で、事業者や消費者団体など多様な主体が参画し、具体的な内容を練り上げていく重要性を強調した。努力義務や配慮義務といった抽象的規定を実効性あるものとするためにも、ソフトローの役割に期待が集まった。
横断的論点と人間観の整理
グレーリストの導入可能性、消費者団体訴訟制度の発展、消費者概念や定義のあり方、実効性確保手段、法目的規定の見直しといった横断的論点についても意見を交わした。
特に、消費者契約法の目的については、「人は誰しも脆弱性を抱え得る存在である」という人間観を前提に、関係主体が連携して安全・安心な取引環境を実現する方向性を位置付けるべきだとの考えが示された。
これらの論点について直ちに結論を出す段階には至っていないとの認識を共有し、今後も議論を積み重ねる必要があると確認した。消費者契約法が全ての消費者契約に適用される一般法として、どこまでを担い、どこからを特別法に委ねるのかという整理も含め、検討を継続する方針を示した。
ハードローとソフトローの組み合わせ
後半では、検討会が、消費者契約法における規制手法のあり方として、ハードロー(法律)とソフトロー(指針など)を組み合わせる方向性を前提に、具体的な制度設計や横断的論点を検討した。
検討会は、消費者契約法を民事法としての基盤的ルールと位置付け、効果の部分はハードローで担保しつつ、要件や技術的・細目的な部分については業界団体による自主規制(ソフトロー)に委ねる整理を共有した。二宮委員は、要件明確性の問題を突破するためには、この組み合わせが極めて重要であり、検討の成否を左右する論点になると指摘した。
業界特性を踏まえた柔軟な基準設定
検討会は、業界特性への配慮についても繰り返し言及した。解約料の考え方を巡っては、飲食店と宿泊施設のように、キャンセル時のコスト構造やビジネスモデルが異なることを踏まえ、画一的な法規制ではなく、柔軟な基準設定が必要であるとの意見が出された。
その上で、健全な事業者にインセンティブを与える形でソフトローを活用し、市場全体の健全化を図るべきだとの認識を共有した。
一方、ソフトローの実効性確保には多くの課題があることも確認した。事業者団体の規模や体制が多様であり、全ての団体が同じ対応を取れるわけではない点や、全事業者が団体に加入しているわけではない点を踏まえ、ルールへの参加を促すインセンティブ設計や支援策が不可欠だと整理した。
グレーリストと適格消費者団体の位置付け
検討会は、不当条項だけでなく不当行為についてもグレーリストを設け、後追い規制からの脱却を図る必要性を指摘した。ただし with、グレーである以上、直ちに措置に至る運用は避け、指導や助言を含む段階的な対応が必要であり、認識齟齬や拡大解釈を防ぐため、慎重な制度設計が求められるとした。
適格消費者団体の役割については、現行の差止請求制度においても、事前交渉や協議を通じて契約内容が改善されている実態が紹介された。検討会は、適格消費者団体の活用を進める方向性を評価しつつも、私的団体であることを踏まえ、権限拡充については事業者の予見可能性や営業の自由とのバランスに留意すべきだとの慎重な意見を確認した。
新たな取引形態と今後の検討
検討会は、消費者概念の在り方についても議論し、中小事業者を消費者として扱うかについては、個人・法人の区分ではなく、反復継続的な事業性の有無など、実態に基づく判断が重要であると整理した。
さらに、アテンションエコノミーやポイント制度など新たな取引形態も消費者契約法の射程に含まれ得るとの認識を示し、配慮義務との関係で、消費者の判断を誤らせない、自己決定を害さない対応が求められると位置付けた。
総括では、ハードローとソフトローの組み合わせという方向性について一定の合意を形成した一方、具体的な適用範囲や制度設計については、今後ワーキンググループで要件・効果・手続きの観点から精緻に詰めていく必要があると確認した。即座に対応可能な論点と中長期的に検討すべき課題を切り分けながら、議論を深めていく方針を示した。
【田代 宏】
配布資料はこちら(消費者庁HPより)
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