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新興CROと考える、食品臨床試験のあり方 【食品CRO特集座談会】食品臨床試験の「ブラックボックス化」に警鐘 

 機能性表示食品制度の浸透に伴い、食品の臨床試験に対するニーズは高まる一方、試験の質の低下や費用の高騰、臨床試験の「ブラックボックス化」といった課題が指摘されている 。臨床試験の現場に携わる専門家が一堂に会し、業界が抱える問題点を深掘り。適切な被験者選定や独自の解析技術を活用し、透明性と科学的正当性の高い臨床試験を実現するための具体的な方策と、業界全体で取り組むべき変革について議論した 。

座談会参加者:

関西福祉科学大学 健康福祉学部福祉栄養学科 准教授 竹田 竜嗣 氏
プロフィール:
2000年、近畿大学農学部農芸化学科卒。
2005年、近畿大学大学院農学研究科応用生命化学専攻、博士後期課程満期退学。
2005年、博士(農学)取得。近畿大学農学部研究員、化粧品評価会社勤務、食品CRO勤務を経て、2016年から関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科。
専門は、農芸化学分野を中心に分析化学、食品科学、生物統計学と物質の研究から、細胞、動物試験、ヒト臨床試験まで多岐に渡る研究歴がある。特に食品・医薬品の臨床研究は、大学院在籍時より携わった。機能性表示食品制度発足時から、研究レビューの作成およびヒト臨床試験など多くの食品の機能性研究・開発に関わる。
2023年1月、WNGが発信する会員向けメルマガ『ウェルネス・ウィークリー・レポート』やニュースサイト『ウェルネスデイリーニュース』で連載した「エビデンスの基礎知識」が100号に達したのを記念し、内容を改めて編集し直し、「開発担当者のための『機能性表示食品』届出ガイド」を執筆・刊行。

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ㈱  
事業統括本部 事業開発部 専門部長 山領佐津紀 氏

会社概要
所在地:山形県鶴岡市覚岸寺水上246-2(本社)
東京都中央区新川2-9-6シュテルン中央ビル5階(東京事務所)
TEL:03-3551-2180
URL: https://humanmetabolome.com/jpn/
事業内容:先端研究開発支援事業(メタボローム解析試験などの受託)、 ヘルスケア・ソリューション事業(バイオマーカーの探索サービスおよびヘルスケア・ソリューション開発サービス)


㈱マクロミル 
ライフサイエンス事業本部 クリニカルトライアル部 部長 大出 聡馬 氏

ライフサイエンス事業本部 本部付スペシャリスト 農学博士 井前 正人 氏

会社概要
所在地: 東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー 11F(本社)
TEL:03-6716-0700 
URL: https://www.macromill.com/
事業内容:マーケティングリサーチ事業、ライフサイエンス事業(CROとして臨床試験の受託・研究所向けコンサルティングサービス)、デジタル・マーケティング・ソリューションの提供など

㈱サイキンソー 
事業創出ユニット 根岸 裕一朗 氏

技術営業ユニット 研究戦略マネージャー 関 美佳 氏

会社概要
所在地:東京都渋谷区代々木1-36-1 オダカビル2階
TEL:03-5309-2522
URL:https://cykinso.co.jp/
事業内容:コンシューマー向け事業(マイキンソー腸内フローラ検査サービス)、医療機関向け事業(マイキンソープロ)腸内フローラ検査サービス、法人向け研究支援サービス(Cykinso Research)など

臨床試験の現場を支える多様な専門人材が集結

――本日は、日ごろ、臨床試験の提案や実施など、現場に携わる皆様にお集まりいただきました。まずは自己紹介をお願い致します。
竹田:私は以前、食品CRO機関で10年ほど勤めておりました。当時は機能性表示食品制度がスタートした頃で、企業で研究レビューや臨床試験を中心に担当させておりました。その後大学に戻り、現在、色々と発信させていただいている状況です。

大出:当社は2020年から食品の臨床試験に参入し、2024年までの4年間は各食品CRO機関に委託をしながら臨床試験を受託しておりました。2024年より専門人材等を含めてCRO機関として体制が整いましたので、当社もCRO機関として食品臨床試験の受託を行っております。当社としましては、食品臨床試験の業界に後発で参入したCRO機関だからこそ、変えなければいけない業界課題があると感じております。

井前:前職は大手製薬メーカーで特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品の開発・研究を主に担当しておりました。また前職在籍時に、2年間、(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)に出向し、機能性表示食品制度に関して行政ともコミュニケーションを取る機会をいただけました。現在はそれらの経験を活かして、機能性表示食品の届出用臨床試験を中心に、プロトコール提案や新規ヘルスクレーム取得のためのロジック提案などを担当しております。

根岸:当社は、腸内細菌検査事業を約10年行っています。国内でもかなり多くの腸内細菌叢データを有しております。臨床試験に関しましては、既存の食品CRO機関から腸内細菌叢検査の受託という形で検査を受けておりました。そうした中で、腸に関わる特殊な臨床試験の要望などをいただき、そうした臨床試験も実施していきたいという思いがあり、2023年から食品CRO機関として体制を整えました。腸内細菌に関連のある食品企業への提案や、既存の食品CRO機関との協業を行いながらサービスを提供している状況です。

関:私は前職で医療機器の臨床研究に携わっておりました。その知識・経験を活かし、腸内細菌のスペシャリストである当社にて、腸内細菌関連の試験を専門とするCRO事業を立ち上げ運営を担っております。

山領: 当社はこれまで、食品の臨床試験を長く実施されているメーカーから、血液や便などのメタボローム解析の依頼を多くいただいてきました。2023年からは、メタボロミクスのデータを用いて臨床的な機能性を予測する「ヘルスクレーム・機能予測パッケージ」をスタートし、データ解析にとどまらず、機能性評価の支援にも取り組んでいます。この取り組みを進める中で、解析だけでなく「臨床試験のデザイン」自体をご相談いただくケースも増えており、当社としてもその部分の知識とサポート体制を強化しているところです。
 ここ数年は、さまざまな食品CRO機関の皆さまと積極的に情報交換を行い、当社はCRO機能を持たない立場ではありますが、臨床試験の設計や運営の理解を深めることが自社のサービス価値にも直結すると考えています。
 最近では、マクロミル様やサイキンソー様とも連携させていただく機会が増え、これまでにない特徴的な臨床試験デザインや提案が可能になってきました。今後も、メタボロミクスの知見を活かしながら、臨床試験全体の質を高めるサポートを展開していきたいと考えています。

見えにくい試験設計に現場から懸念の声

――「臨床試験の質の低下や、疑念の残るやり方につながっている」という懸念に対して、特にどのような点が具体的に問題だと認識されていますか。また、その問題を解決するために、食品CRO業界全体で取り組むべきことは何だとお考えですか。
竹田:ここに参加している事業者様は、これまでの食品CRO機関とは少し違う観点を持たれていると率直に感じました。
業界は二極化していると思っております。トクホなどの経験や、機能性表示食品に当初から参入している食品メーカーは、すでに自社と気の合う食品CRO機関と強い関係ができていますので、常にそこで仕事が完結している状況です。
 一方で、新興の原料メーカーや異業種などからの機能性表示食品市場への新規参入事業者は、制度、臨床試験のやり方が分からず戸惑っているケースが多いという状況です。食品CRO機関に相談しても、一方的に説明されるだけで「なぜこういう仕組みなのか」と理解できない部分が多いようです。 
 一部の食品CRO機関が臨床試験の過程を見えなくして「ブラックボックス化」し、最初から最後まで押し切ってしまうということにも原因があると思います。私の所に「これ、このように言われているのですがどう思いますか」といった相談がたまに来ます。また、「とりあえず結果が出せたら」と独自の考えで進める一部の食品CRO機関の存在もあると聞いております。このことが結果的に臨床試験の質の低下や、疑念の残るやり方につながるのではないかと懸念しています。

(月刊誌「Wellness Weekly Report89号(2025年11月10日刊)より転載、つづきは会員専用記事閲覧ページへ)

(藤田 勇一)

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