サプリ規制の行方を注視する消費者委 包括的規律求める意見書が背景、広告規制にも注目
厚生労働省と消費者庁が10月下旬から検討を開始したサプリメントの規制のあり方について、内閣府の消費者委員会(鹿野菜穂子委員長=慶應義塾大学名誉教授)は19日、両省庁の担当課長を本会議に招き、現在の検討状況に関する質疑を行った。同委員会は昨年7月、健康被害問題を受けて規制が強化された機能性表示食品に限らず、サプリメント全体を包括的に規律するための法制度の整備を求める意見書を政府に提出していた。鹿野委員長は質疑を終えた後、「引き続き検討状況を注視する」方針を明確に示し、「必要に応じて改めて状況報告や情報提供をお願いしたい」と両省庁に呼びかけた。
会議には厚生労働省の食品監視安全課長と消費者庁の食品衛生基準審査課長が出席し、両省庁の審議会で進めている検討の状況をそれぞれ説明しつつ、委員からの質問に応じた。
現時点での審議回数は厚生労働省が2回、消費者庁は1回にとどまり、審議が本格化するのは年明け以降となる。このため、両課長とも説明できることは限られていたが、食品衛生基準審査課長は、検討事項の1つであるサプリメントの「定義」について、「(錠剤やカプセル剤など)形状だけではない。含量、風味、安全性、有効性、品質など各要素を勘案した上で、科学的、法律的、そして消費者目線の視点から総合的に検討する必要がある」との意見が審議会の部会長から上げられていることを紹介した。
検討事項は、定義のほかに製造管理(GMP)のあり方、事業者による健康被害情報の報告、営業の許可・届出──の大きく4つ。
一方で、消費者委員会は意見書で広告規制の強化を求めており、この日の会議でも、委員の今村知明・奈良県立医科大学公衆衛生学講座教授が「健康食品に対する苦情は広告によって引き起こされている面が指摘されている」としつつ、「(サプリメント全体に対する)規制を厳しくしていくのだとすれば、その中に広告規制も含まれていくのか」と質問した。ただ、会議に出席した両課長は表示・広告規制を担当しておらず、「この場で回答することは難しい」(食品監視安全課長)と答えるにとどめた。
また今村氏は、検討・議論を集約させる時期の目途について尋ねた。これに対して食品監視安全課長は、「明確に決められるものではないと思っている。消費者庁の審議会と連携し、事業者の実行可能性、消費者の利益を踏まえ、しっかり検討していきたい」と答え、慎重に検討を進める考えを示した。
他方で、今村氏は、「幅広く議論した結果、何も決まらないというのが一番良くない。コンパクトであれ、まずは目途をつけることが重要だ」と意見。サプリメントの定義を多面的に検討することは「賛成だ」としつつも、現実問題として「定義が短時間で綺麗にできるかといえば、やはり難しい」と述べた。
機能性表示食品制度に「法的不安定性」の指摘
この日の会議では、委員から現行の機能性表示食品制度に対する意見も上がった。
消費者委員会は昨年、機能性表示食品に対する規制強化の施策を盛り込んだ食品表示基準(食品表示法の規定に基づく内閣府令)改正案に対する諮問を受け、同委員会の食品表示部会を中心に基準の中身を議論。多くの付帯意見を付けた上で改正案を了承していた。
そうした中で、この日の会議で弁護士の黒木和彰委員は「行政手続法に基づく届出は到達主義のはず。それにもかかわらず事後的にさまざまな規定を付けていくというのは、ある意味で委任立法の授権の範囲を超えているのではないか」などと疑問を示し、「法的にまだ不安定だ」と指摘した。
また、委員の原田大樹・京都大学法学系教授も、現行制度の法的な不安定性を指摘。その上で「初めから許可制ないしそれに近い登録制や認証制など、そのような形に変更することも現時点での制度設計として考えても良いのではないか」と意見した。機能性表示食品制度を所管するのは消費者庁の食品表示課だが、この日の会議には出席しておらず、回答できる立場が不在だった。
【石川太郎】
(冒頭の写真:12月19日午後開催された消費者委員会本会議。鹿野委員長と今村委員)
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