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検討始まった「サプリ規制のあり方」 健康被害問題受けた「さらなる検討課題」、定義なき時代に終止符か

 サプリメントの規制のあり方を巡る検討が、厚生労働省と消費者庁の審議会で始まった。検討事項は、①定義、②製造管理のあり方、③事業者による健康被害情報の報告、④営業の許可・届出──の大きく4点(12月17日時点)。国内市場規模1兆円超と推計されている中で、これまで明確に定義づけられてこなかったサプリメントを法的にどう定義するのか。今後の議論全体の帰趨を左右する最大の論点になる。

 降って湧いた話ではない。小林製薬が販売した機能性表示食品のサプリメントに生じた健康被害問題を受け、政府は昨年、機能性表示食品に対する規制を強化。特定保健用食品(トクホ)も含め、健康被害情報の行政への報告を届出者に義務付けたほか、錠剤やカプセル剤などといった通常の食品とは異なる形状を持つサプリメントの製造・品質管理にGMP(適正製造規範)基準の遵守を義務化した。その上で政府は、「さらなる検討課題」として、機能性表示食品にとどまらないサプリメント全体の規制のあり方を俎上に載せていた。

 今後の検討次第では、機能性表示食品やトクホと同様、健康被害情報の報告義務やGMPの遵守義務が、サプリメント全体に及ぶ可能性がある。さらに、機能性表示食品などの保健機能食品に限らず、機能を表示できない「その他のいわゆる健康食品」までを横断する形で、サプリメントが食品衛生法に基づく営業許可業種(要許可業種)の対象とされれば、健康食品業界はこれまで経験したことのない規制環境に直面することになる。

 一方で、そもそもサプリメント全般に対する規制が必要なのかどうか、必要なのだとすればなぜか──小林製薬が起こした事案以外に重大な健康被害は知られていないこともあり(顕在化していないに過ぎない可能性はある)、規制するのであれば、その根拠が問われることになる。

「健康の維持・増進に資するもの」

 今回の規制のあり方検討は、2018年に改正された食品衛生法の運用状況を検証し、必要に応じて見直しに向けた検討を行う枠組みの中で進められる。検討の舞台は、食品衛生行政を所管する厚生労働省と消費者庁にそれぞれ設けられた審議会。両省庁は密接に連携して検討を進める方針だが、定義や製造管理のあり方は消費者庁、健康被害情報の報告や営業の許可・届出は厚生労働省が主に担う形となり、審議の場は2つに分離される。

 検討は、10月下旬に動き出した。今月17日までに、厚労省の厚生科学審議会(食品衛生監視部会)で2回、消費者庁の食品衛生基準審議会(新開発食品調査部会)で1回、議論の場が設けられた。本格的な検討は、年明け以降から始まり、来年度にかけて行われる見通しだが、現時点で最大のハイライトは、11月27日の新開発食品調査部会で行われた業界5団体へのヒアリングだ。各団体が「定義」と「GMP」に関して意見した。

 サプリメントの定義について業界団体はどう考えているのか。サプリメントGMP第三者認証機関の(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)はこう提案した。

 「健康の維持・増進に資するものとして、通常の食事を補充することを目的として摂取される食品で、栄養成分あるいは天然物、若しくは天然由来の抽出物を用いて分画、精製、濃縮、化学反応により、本来天然に存在するものと成分割合及び外観性状が異なっているもの、または化学的合成品を原材料とし、錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の摂取形態で一定量を日常的に摂取することを意図した加工食品をいう。ただし、社会通念上、容易に通常の食品と認識されるものは除く」

 サプリメントの法律上の定義は存在しないが、機能性表示食品とトクホにおけるサプリメントに関しては法令や通知で「天然物、若しくは天然由来の抽出物を用いて分画、精製、濃縮、乾燥、化学的反応等により本来天然に存在するものと成分割合が異なっているもの又は化学的合成品を原材料とする錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の加工食品」と規定されている。

 これと照らすと、JIHFSが提案した定義の最大の特徴は、サプリメントを単なる「錠剤・カプセル剤等の形状を持つ加工食品」としてではなく、「健康の維持・増進に資するもの」と位置づけ、その役割や目的を定義の中に書き込んだ点だ。この点については、ヒアリングを受けた各団体でも概ね方向性が一致していた。

 もっとも、「健康の維持・増進に資する」と定義でうたう以上、それをうたうための科学的な根拠と、その根拠に基づく表示(機能表示)のあり方が問われることになる。すると議論は食品の機能表示を容認している保健機能食品制度のあり方に接続される可能性が高い。健康食品業界としては、規制を受け入れる代わりにサプリメント全般の機能表示容認を求める機運を高めたいところだ。

消費者委員会、間接的に議論へ関与

 新開発食品調査部会は、次回の審議で消費者団体に対するヒアリングを行う予定だ。サプリメントの安全性に関する規制を求める立場から、厳しい意見が繰り出される可能性が高い。

 また、審議に直接かかわる立場ではないものの、昨年、サプリメント全体に対する規律を求める意見書を政府に提出した内閣府の消費者委員会も、議論に間接的に関与していく構え。あす19日午後に開く本会議の議題に、「サプリメントに関する規制のあり方」を取り上げる。規制のあり方を巡る議論はさらに広がりを見せることになりそうだ。

【石川太郎】

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