ルテインとともに歩んだ四半世紀 ケミン・ジャパン、眼科医の信頼を得ながら築いたマーケット
サプリメントの原材料を製造販売する米国企業の日本法人、ケミン・ジャパン㈱(橋本正史社長=写真)は今年、設立25周年を迎えた。この四半世紀は主力製品「Flora GLO(フローラグロー)ルテイン」とともに歩んだ歴史だ。「医師の信頼を得る」というアプローチで築いた成功の軌跡を振り返る。
認知度5%からのスタート
もともと食品素材商社に勤めていた橋本氏がケミン・ジャパンに加わったのは設立翌年の2001年。ここからケミン社製ルテインの日本を含むアジア太平洋市場での本格的な販売展開が始まることになるのだが、当時の国内でのルテイン認知度は「5%程度だったと思います」と橋本氏。
それだけではない。「当時はエステル体が世界的に市場を席捲している状態でした」と現在との違いを指摘する。現在の主流はフリー体。認知度は「5~6割台に達しているでしょうし、アジア太平洋では特に台湾での認知が高く、9割に迫っていそうです」(同)。
最初の転機は03年。米国の眼科学会がシンガポールで開催した学会だ。
橋本氏らも参加したこの学会では、すでに米国の眼科医らの間で認知が高まっていたルテインサプリの眼科領域における必要性を討議するシンポジウムも開かれ、推進派と懐疑派の眼科医が正面から議論。
「懐疑派の医師から『(加齢黄斑変性の進行抑制に)栄養素は確かに重要だが、(ルテインサプリの)寄与率はどの程度なのか』と問われたことにはっとしました。サプリとは、さまざまあるリスクファクターの一部を補う手段に過ぎないということに気付いた。ルテインをそのように捉え、そういうものとして医師にアプローチすることで、医師の受け止めが劇的に変わっていきました」と橋本氏は振り返る。
その後、2006年、ルテインとゼアキサンチンを組み合わせたサプリが加齢黄斑変性の進行抑制に有効かどうか検証する大規模臨床試験「AREDS2」が米国でスタート。13年に結果が発表される。
これが日本の眼科医界におけるルテインサプリに対する評価を定着させるとともに、同試験に使用されたケミン社製ルテインの信頼を高めることに繋がった。
そして15年、国内アイケアサプリ市場にルテインを普及させる役割を結果的に果たすことになった機能性表示食品制度が施行。その前年にはルテインを機能性関与成分とする機能性表示食品の科学的根拠の1つとして多用されることになる「ハモンド論文」が発表されていた。
これら一連の出来事が第二の転機だ。橋本氏は「ルテインと私たちにとって本当にタイミングが良かった」と話す。
ポートフォリオ多様化の必要性
橋本氏によれば、世界的に見てフローラグロールテインが現在最も多く消費されている地域は日本、続いて台湾。「日本と同様に台湾でも、まずは眼科医の信頼を得るというアプローチが取られました。世界のルテイン市場で日本や台湾ほど成功している国は少ないです。そのことはアイケア市場についても言える。米国のケミン本社も驚いています。」(同)。
約25年の歩みを振り返り、橋本氏は達成感を隠さない。「ここまで来ることができるとは考えていませんでしたし、販売数量という意味でも、会社に大きく貢献できたと思っています」
ただ、順調な歩みの裏には課題もある。売り上げの大部分をルテイン関連が占めており、その他の製品の育成はまだ十分ではない。
「その他の製品も伸びてはいるのですが、フローラグローには及ばない。一方、グローバルでは、パラミロン(β-グルカン)を多く含有するユーグレナの『BetaVia(ベータヴィア)』が急成長していることを筆頭に、ルテイン以外の製品がしっかり育っています」と橋本氏。
「日本の状況もそのように変えていく必要があります」と今後の展望を語り、気を引き締める。
【石川太郎】
<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都千代田区五番町12番地
TEL:03-3239-2521
URL:https://www.kemin.com/ap/ja/home
事業内容:サプリメント原材料、飼料添加物の輸入・販売
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