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健康食品GMP実践的対応ガイド(6) 【寄稿】GMPの実践①~原材料管理から製造管理・品質管理・出荷判定まで

㈱シーエムプラス シニアコンサルタント 田中良一

 前回は、GMPの骨格となる文書体系について解説しました。第6回では、その文書に基づいて行われる日々の実践的な管理活動について、原材料の受け入れから最終製品の出荷判定までの流れを追って解説します。

1.品質の源泉:「原材料の管理」
 全ての品質は、適切な原材料の受け入れから始まります。特に健康食品GMPでは、機能性関与成分の製造段階でのGMPが義務化されていないため、原材料の品質管理が極めて重要です。

• 規格適合品の受け入れ:製造に使用する全ての原材料は、製品標準書に定められた規格に適合していなければなりません。供給者から提出される試験成績書(CoA)を確認するだけでなく、リスクに応じて定期的に自社での受け入れ試験を実施し、その信頼性を検証することも検討しなければなりません。
• 保管・出納管理:受け入れた原材料は、品質の劣化や汚染、混同を防ぐため、ロットごとに適切に区分して保管し、入庫・出庫の記録を正確に取らなければなりません。これにより、製品に使用された原材料のトレーサビリティが確保されます。
• 参考品の保管:万が一、市販後に製品の品質問題が発生した場合に、原因調査ができるよう、使用した原材料のロットごとにサンプル(参考品)を一定期間保管することが義務付けられています。

2.品質の作り込み:「製造管理」
 製造工程は、まさに「品質を作り込む」ための中心的な活動です。

• 製造指図と記録:全ての製造は、製品・ロットごとに発行される製造指図書に基づいて行われ、その作業内容は製造記録として詳細に記録されなければなりません。この記録には、「誰が、いつ、どの原材料(ロット)を、どれだけ使い、どのような操作を行ったか」が明確に記されている必要があります。
• 重要工程管理と工程内検査(IPC: In Process Control):製造工程の中でも、製品の品質に特に大きな影響を与える工程(混合、造粒、打錠など)は重要工程として重点的に管理されます。また、工程の途中段階で中間製品の品質(例えば、打錠工程であれば、重量、硬度、外観など)を確認する工程内検査を実施し、問題の早期発見に努めます。
• 汚染防止:異物混入、微生物汚染、他製品との交叉汚染を防ぐため、設備の清掃や作業員の衛生管理などを徹底します。
• 設備・計器の管理:製造に使用する設備は定期的に点検整備し、温度計や秤などの計器は校正(キャリブレーション)を行って、常に正確な状態を維持しなければなりません。

3.品質の科学的証明:「品質管理」
 品質管理部門は、製造された製品が本当に規格を満たしているかを、科学的な試験検査によって客観的に検証します。

・検体採取と試験検査:完成した製品のロットから、そのロット全体を代表するよう科学的な方法でサンプル(検体)を採取し、製品標準書に定められた項目の試験検査を実施します。
・ 規格外(OOS)結果への対応:試験結果が規格から外れた場合(OOS: Out of Specification)、安易に再試験を行うのではなく、まずは試験操作に誤りがなかったか(ラボエラー調査)を徹底的に調査します。ラボエラーが否定された場合は、製造工程に原因があった可能性を疑い、広範な調査を行う必要があります。

4.最後の砦:「出荷判定」
 出荷判定は、市場に出荷する前の最終的な関門であり、GMP運用における最も重要な意思決定の一つです。

• 総合的な評価:出荷判定担当者は、単に最終製品の試験結果が合格であることだけでなく、そのロットの製造に関わる全ての記録(原材料の受け入れ、製造工程の管理、逸脱・変更の有無など)のレビュー状況なども加味し、GMPの要求事項が全て満たされていることを総合的に評価します。
• 責任者の承認:製造管理及び品質管理の状況を確認し、品質に問題がないと判断されたロットのみが、責任者の承認を経て出荷されます。

おわりに
 日々のGMP活動は、これら一連の管理の積み重ねです。1つひとつの活動が適切に行われ、記録によってその正しさが証明されることで、初めて製品の品質は保証されます。
 しかし、これらの活動の前提として、「その製造プロセス自体が、本当に安定して高品質な製品を作れる能力があるのか?」を科学的に証明する必要があります。次回は、そのための重要な活動である「バリデーション」について詳しく解説します。

【編集部から】本連載(全9回)は原則、週1回のペースで掲載します。また本連載は、シーエムプラスが運営する「GMP Platform」にも掲載されます。

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健康食品GMP実践的対応ガイド(1)なぜ今、適正製造規範への適切な対応が求められるのか
同(2)健康食品GMPの全体像~医薬品GMPとの類似性と責任の所在
同(3)GMPの基本~「品質は作り込む」という思想とGMP三原則
同(4)GMP体制の構築①~経営層の責務と主要な責任者の役割
同(5)GMP体制の構築②~文書体系(製品標準書・基準書・手順書)の作り方

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