サプリ規制の在り方検討、論点増える 厚労省、「営業の許可・届出」を審議事項に追加
厚生労働省が先月下旬から審議を開始した「サプリメントの規制のあり方」の検討事項に「営業の許可・届出」が追加された。
食品衛生法に基づく営業許可の対象に、今後定義付ける「サプリメント」の製造業および販売業を加える必要があるかどうかなどが審議されそうだ。営業許可業種化が見送られるのだとしても、サプリメントを取り扱う事業者を正確に把握するために、その販売に関する営業届出の義務化の必要性が審議される可能性がある。
もともと同省が示していた検討事項は、サプリメントの定義、製造管理(適正製造規範)等のあり方、事業者による健康被害情報の報告の3点だった。
「サプリ」関連事業者、網羅的に把握できる仕組みなく
食品衛生法の規定に基づく営業許可業種は現在、乳製品製造業や食肉販売業など32業種がある。これらは公衆衛生上のリスクを考慮に入れて設定されており、営業許可業種を営む場合は都道府県知事の許可を受けなければならない。
一方、非営業許可業種を営む場合は、許可は要らないが営業届出が要件になる。営業届出制は、2018年の食品衛生法改正で新規導入されたHACCPの制度化に合わせ、食品関連事業者を把握する目的で新たに取り入れられた。
ただし、営業届出が不要な業種が規定されている。「食品又は添加物の輸入業」などの他、大半のサプリメントが該当すると考えられる「常温で長期間保存しても腐敗、変性その他品質の劣化による食品衛生上の危害の恐れがない包装食品の販売業」は営業届出の対象外。このため、販売しているのがサプリメントのみである場合、営業届出を行う事業者は少ないと同省では見ている。
販売事業者や製造事業者を行政が把握できるサプリメントもある。ただ、それが可能なのは食品表示法に基づき、製品個別の許可制が導入されている特定保健用食品と、製品個別に行政へ届け出る必要がある機能性表示食品に限られる。食品衛生法で健康被害情報の行政への報告などが義務付けられている指定成分等含有食品でさえ、行政に寄せられた健康被害情報を基に必要な指導を行う仕組みのため、それを取り扱う事業者の全容を把握できないのが現状だ。
検討の所掌、営業の許可・届出は厚労省で
サプリメントの規制のあり方検討は、昨年生じた小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題を巡る積み残し検討課題。問題への対応方針を定めた関係閣僚会合が、食品衛生行政を担う厚生労働省と消費者庁に検討するよう昨年5月末の時点で命じていた。
検討は、2020年に完全施行された改正食品衛生法の5年後見直し規定に基づく検討と抱き合わせる形で、まずは厚生労働省の審議会(食品衛生監視部会)で10月23日にスタート。2回目の検討が21日に行われた。食品衛生のうち「基準」行政を所管する消費者庁の審議会(新開発食品調査部会)も今週27日から検討を開始することになっている。
21日の食品衛生監視部会で厚生労働省の食品監視安全課は、サプリメントの規制のあり方検討に係る同省と消費者庁の所掌を正式に説明した。食品衛生法上の規格・基準に関わる「定義」と「製造管理(GMP)のあり方」は消費者庁が、一方、「事業者による健康被害情報の報告」の他、前回の部会では示していなかった「営業の許可・届出の検討」は、食品衛生監視行政を所管する同省が所掌する役割分担を示した。
食品衛生行政はもともと同省に一本化されていた。だが、政府方針で分割。昨年4月、基準行政が消費者庁に移管された。このため、今回の検討も省庁を跨ぐ複雑な構図になる。「当然、相互に連携しながら(それぞれの審議会で)議論を行っていく」(今川正紀食品監視安全課長)。
21日の食品衛生監視部会では、サプリメントの営業許可・届出の検討を巡り、委員の原田大樹・京都大学大学院法学研究科教授(行政法)が意見を述べた。サプリメントを巡る課題の解消に向けて「食品衛生法の(営業)許可や(営業)届出でどの程度効果を出せるのか検証した方がよい」と提案。規制の実効性を念頭に置いた意見とみられる。
原田氏は、内閣府の消費者委員会の委員も務めている。同委員会は昨年7月、「サプリメント食品に係る消費者問題に関する意見」を取りまとめ、政府に対し、「サプリメント食品を規律するための制度整備や、サプリメント食品に係る消費者保護の取組を担う組織のあり方」を早急に検討するよう求めていた。今回の検討の行方は、消費者委員会からも注視されることになりそうだ。
【石川太郎】
(冒頭の写真:11月21日にオンライン併用で開催された食品衛生監視部会の様子)
関連資料
:2025年11月21日「厚生科学審議会食品衛生監視部会」配付資料「サプリメントに関する規制のあり方の検討に係る厚生労働省と消費者庁の所掌について」(厚生労働省ウェブサイトへ)
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