美容クリーム販売会社に業務停止命令 消費者庁、類似案件を継続調査
消費者庁はきのう6日、美容クリームなどを販売する通販会社㈱BIZM(東京都品川区、大橋颯介社長)に対して、5日付で特定商取引法第15条第1項の規定に基づき、11月6日から2026年5月5日までの6カ月間、通信販売に関する業務の一部(広告、申込受付、契約締結)を停止するよう命じたと発表した。
あわせて同庁は、同社に対して、特定商取引法第14条第1項の規定に基づき、法令遵守体制の整備、その他の再発防止策を講ずることなどを指示した。
さらに同庁は、同社の代表取締役である大橋颯介に対して、特定商取引法第15条の2第1項の規定に基づき、11月6日から26年5月5日までの6カ月間、上記業務停止命令により業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始することの禁止を命じた。
誇大広告(優良誤認)(特定商取引法第12条)
同社は、自社が運用するウェブサイトで、美容クリーム『スキンヴィーナスプレミアムリペアクリーム』を一般消費者向けに販売。少なくとも今年2月20日から4月8日までの間、同品の効能について広告を行った際、「誰でも確実に7日でシミが完全消滅」、「シミに塗るだけでシミが完全消滅」という文言を、同品使用中、使用前後を示した女性の動画とともに表示。その他、「あんなに何を使ってもダメだったシミが1週間で消え去りました・・・」との表示と「1週間でシミが完全消滅」との文言が付けられた女性の画像を表示するなど、あたかも、同品を3日間又は7日間塗布するだけで、皮膚に生じたしみを完全に消すことができるかのような表示をしていた。
同庁が同社に対して、特定商取引法第12条の2の規定に基づき、期間を定めてこれらの表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社からは資料の提出がされた。しかし、提出された資料は、同表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料とは認められないものだった。
誇大広告(有利誤認・事実相違)(特定商取引法第12条)
また同社は、同品の販売条件について広告した際、同期間、「1回限り・解約不要 本日限定80%OFFでプレゼント」、「1回限り・解約不要 1本でシミを消したい人におすすめです!」、「初回限定 高級ファンデ無料 クーポン適用で1,980円 最安値の申し込む! 1回限り・解約不要!」などと表示した他、「たった1,980円で2万円以上の高級シミケアを使えるなんて・・・」、「詐欺広告にありがちな『最低〇回は購入してください』という『購入回数のお約束なし』」などとも表示。あたかも、1,980円(税込2,178円)のみを支払うことで同品1本を購入することができ、2本目以降の購入を義務付けられるなどの契約上の制約が課せられることがないものであるかような表示をしていた。
しかし、同広告から自動的に遷移する同品のチャットボットページから申し込むことができる「リッチケアコース」という定期購入契約の内容は、実際には、2回目以降のお届け予定日の15日前の期限までに所定の方法に従った解除の連絡をしなければ、2回目以降の商品(1回当たり同品3本)の金額(税込1万9,965円)の支払いを義務付けられ続ける無期限の定期購入だった。さらに、2回目の商品を購入せずに解除する場合には、「差額分」という名の解約料を求めて税込1万1,055円の支払いが義務付けられるなどの契約上の制約が課せられるというものだった。そのため、契約者は2回分の合計(同品4本)の金額として合計2万2,143円を支払うか、同品を初回の1回のみ購入するには合計1万1,055円を最低でも支払うこととされており、1,980円(税込2,178円)のみを支払うことによって同品1本を購入することはできないというものだった。
最終確認画面における誤認表示
また同社は同期間、同品販売サイトのいわゆる最終確認画面において、「ご注文内容の確認」として初回の1,980円(税込2,178円)のみを分離して表示し、定期購入契約であることや2回目以降の料金を意図的に分かりにくくしていた。同庁の担当官は、記者からの質問に答える形で「利用規約をスクロールした下部に解約条件の記載はあったが、最終確認画面では見えない状態であり、消費者に明確に認識させる表示ではなかったため、誤認させる表示に該当すると判断した」と説明した。
類似案件を継続調査
「いわゆるダークパターンに該当するか」との記者からの質問に対して担当官は、「広く言えば、消費者を騙すような表示の仕方であり、そう言えると考えている」と答えた。また、同じような文言や画像を使用した違反事例が過去にもある。こうした他の類似案件との関連性を尋ねた質問に対して担当官は、「サイトデザインや手口の類似性は認識しており調査を行っているが、今後の執行に関わるため詳細なコメントは差し控える」と回答。同様の手口を用いた他の事業者、同社との関連などについても監視を強めていることを示唆した。
設立わずか1年で4,536件の相談
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された相談は、24年11月14日の同社設立から25年9月末までの約10カ月間で4,536件に達し、被害は45都道府県に及んだ。相談者の約8割が女性で、年代別では60代、50代、70代の順に多く、契約者の平均年齢は60.7歳だった。平均契約金額は約1万2,600円で、平均既支払額は約1,800円だったとしている。
【藤田 勇一】
※お知らせ:当日の記者会見の様子は、後日、YouTubeチャンネル「ウェルネスデイリーニュース」で公開します。
(冒頭の写真:説明する消費者庁取引対策課統括消費者取引対策官の加藤純氏(左)と同課長補佐の長谷川寛晃氏、下の写真:同庁公表資料より)












