制度改正、9割超が対応に困難感 【特集・サプリ受託製造の今とこれから】健康食品OEM企業アンケート調査
ウェルネスニュースグループが国内健康食品受託製造(OEM)企業を対象にしたアンケート調査を実施したところ、回答企業の9割以上が改正された機能性表示食品制度への対応に何らかの困難を感じていることが分かった。そのうち約3割が「強く感じている」と回答。コスト増加や人手不足にも見舞われている中で、健康被害問題によって大きく改正された制度がOEM企業の負担感をより高めている。
困難さ感じる理由の筆頭にPRISMA2020
アンケートは2025年7月中旬から8月下旬にかけてインターネットのほか聞き取りで実施。50社から回答が寄せられた。
今回、受託製造企業に尋ねたのは、①改正機能性表示食品制度への対応と困難、②来年8月末までの経過措置が設けられている機能性表示食品のサプリGMP基準遵守義務の遵守状況、③特定のサラシアエキスに生じたエフェドリン混入問題の影響、④原材料事業者への要望、⑤昨年末に改正された「3.11通知」への対応状況、⑥コスト増加と価格転嫁、⑦人手不足と対策——の大きく8項目。
まず、昨年9月に改正され、今年4月から本格的な運用が始まった改正機能性表示食品制度への対応に困難さを感じているかどうかを尋ねる設問では、回答企業の約6割強が「多少は感じている」と回答。「強く感じている」と合わせ、実に9割以上の健康食品受託製造企業が何らかの困難を感じていた。
改正された制度のどこに困難さを感じているのか。それを選択形式の複数回答で尋ねる設問で最も多く選択されたのは「システマティックレビュー(SR)のPRISMA2020準拠への対応」(28件)。次いで、「届出後における年に1回の自己点検・報告(届出更新制)への対応」(25件)、「機能性関与成分を含む原材料の安全性や品質の確保に向けた対応」(24件)、「天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品(サプリ)に関するGMP遵守義務への対応」(18件)が続いた。
今年4月の新規届出から実質的に義務化されたSRのPRISMA2020準拠は、機能性表示食品の製造管理や品質管理とは距離がある。また、昨年度末までに届出番号が付与された機能性表示食品に関しては来年3月末までに必ず行う必要がある自己点検・報告も同様だ。原材料の安全性など品質の確保にしても、本来は原材料事業者が担うべきものだろう。
それにもかかわらず、これらの項目が困難さを感じる理由の上位に入った結果は、顧客である販売会社の委託を受けて、機能性表示食品の製造だけでなく、届出支援を手掛けることも少なくない受託製造企業の負担感が、制度改正によって増大したことを示している。

サプリGMP基準、8割超が現時点で遵守
国内健康食品受託業界では以前から、民間の第三者機関が認証する健康食品GMPが普及。それもあってか、改正制度の目玉の一つ、サプリGMP遵守義務への対応に困難さを感じるとした回答は20件に満たなかった。
実際、来年9月1日から完全義務化されるサプリGMP基準(内閣府告示第108号)について、現時点の遵守状況を尋ねる設問では、「遵守している」と回答したのは約5割、「おおむね遵守している」は約3割強と合わせて8割を超えた。
「遵守していない」と回答した企業も2社存在したが、製造品目がGMP遵守義務のかかるサプリではないと判断していたり、機能性表示食品の製造を受託していなかったりするのが理由だ。
機能性表示食品のサプリGMP基準遵守義務化に絡み、消費者庁食品表示課に今年4月発足した「GMPチーム」が5月末から進めている、GMP実施状況の確認などを行うための立ち入り(工場訪問)を受けたかどうかも尋ねた。その結果、「受けた」の回答は9社にとどまり、大半がまだ受けていなかった。
また、立ち入りを受けたと回答した企業に対し、その感想を自由記述で尋ねたところ、「基本的にGMP認証を取得していれば問題ない内容だった」、「監査ではなく、調査であったので、難しくはなかった」、「あくまで各事業所の現状把握が目的。今後の省庁の方向性・方針について情報をもっと聞きたかった」などといった冷静な声が寄せられたほか、「GMPチームのGMPに関する知識の理解度レベルが一定でない」とする指摘が寄せられた。
前例がないだけに、同庁のGMPチームとしてもまだまだ手探り状態で確認を進めていることが窺われる……
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【石川太郎】
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