厚労相、超過死亡と原因不明死を説明 死亡増加の要因分析は「専門家と検討」
10月10日に開かれた福岡資麿厚生労働大臣の定例記者会見で、近年顕著となっている死亡者数の増加、いわゆる「超過死亡」の要因や、「原因不明死」の急増について、コロナワクチンとの関係について記者から質問が出た。福岡大臣は、これらの現象に関する政府の分析状況を説明した。
死亡数、コロナ前比で大幅増に
まず、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が行った2022年(令和4年)および23年(同5年)の死亡数増加の分析について、大臣は「新型コロナウイルス感染症以外の死因も含めた人口学的分析を行い、10月6日に結果を公表した」と述べた。その内容によれば、19年までの死亡率の傾向をもとに推計したモデル値と比べ、実際の死亡数は21年で約2万人、22年と23年で約13万人多い結果となった。年齢別では75歳~89歳で乖離が大きく、死因別では新型コロナ感染症、心疾患、老衰、その他、悪性新生物の順で差が大きかったという。
一方、この分析はあくまで統計的観点からの検証にとどまっており、コロナワクチンの影響を評価したものではないと明言。「コロナワクチンが死亡に与えた影響に関する分析は行われていない」と述べた上で、「今後、どのような分析が可能かも含めて専門家の意見を聴きながら検討する」とした。
原因不明死21%増、分析は今後
また、厚労省が先月公表した24年人口動態統計において、「その他の診断名不明確および原因不明の死亡」が前年より約21.5%増加した点についても質問が出た。
これに対し大臣は、「診断書の死因欄に『不詳』、『詳細不明』などと記載されたものがこの分類に含まれる」と説明。その上で、「こうした数の増加について、人口動態調査の結果から把握することは困難」と述べ、現時点で明確な要因分析はできていないとした。
記者からは、死亡者の増加や原因不明死の急増について「ワクチン接種との関連を排除せずに分析を行うべきではないか」との質問もあったが、大臣は「人口学的観点からはそのような分析しかできない」とした上で、「ワクチン影響の有無を含め、国立保健医療科学院(JIHS)の専門家に確認を依頼している」と答えた。
福岡大臣の説明は、現時点では「人口動態統計上の事実を把握している段階」にとどまり、医学的・疫学的な因果関係の解明には踏み込んでいない。国民の間で関心が高まる「超過死亡」の背景や、「原因不明死」の増加要因について、政府としてどのように本格的な検証に移行していくかが注目される。
【谷山 勝利】
会見の議事録はこちら(厚労省HPより)