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消費者庁食品表示課保健表示室に聞く 改正・機能性表示食品制度の運用実態と課題(後)

 昨年生じた健康被害問題で揺らいだ信頼の回復に向けて大きく改正された機能性表示食品制度の運用が4月から本格的に始まった。サプリメントのGMP基準遵守、システマティックレビューのPRISMA2020準拠、新様式への対応、そして「自己点検」などが届出者に求められる中、制度を所管する消費者庁は「責任ある届出」と「継続的な情報収集」を呼びかけている。同庁食品表示課保健表示室の今西保室長に現状と課題を聞いた。全3回のうち最終回。

サプリGMP要件化と今後の展望

──GMP要件化についてうかがいます。4月から消費者庁食品表示課にGMP専門チームが組織されています。現在の体制は。

今西 9人体制です。GMPトップアドバイザーが1人、GMPシニアアドバイザーが2人、GMP基準専門監視員が6人で構成されています。

──改正制度に導入された、サプリメントの製造・品質管理に関するGMP基準遵守義務の完全実施は来年9月。それまでの経過措置期間中に、GMPチームが製造・加工施設のGMP実施状況の確認や助言を進めます

今西 5月末から実際に工場に入りはじめました。2人か3人が1つのチームになって、来年8月末までに確認対象となる約350施設(5月時点)の全てに入らせてもらいます。来年6月頃までには初回の確認を終えるとともに、必要に応じてフォローアップも行い、来年9月の完全実施に間に合わせられるよう計画的に進めています。民間の健康食品GMP認証を取得していない工場から先に確認を進めているということはありません。確認には1施設あたり1日程度が必要ですし、来年9月の完全実施まで時間がありませんから、日程調整ができたところから順次確認を進めているところです。

──確認・助言の手順は。

今西 いきなり訪問するわけではありません。まずは製造・加工施設と日程調整をさせてもらいます。日程が決まると、確認する際のポイントを示した自己点検リスト(※消費者庁食品衛生基準審査課が今年5月公表した「3.11通知」の別添2「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」)に係る自己点検表をベースに機能性表示食品に求められている事項を注釈で示したものを送り、記入してもらいます。それを受け取った上で、実際に施設を訪れ、リストの記載内容を踏まえながら、施設や設備などを見てまわったり、GMPに係る文書や記録などの確認だったりを行った上で、製造・加工施設側とコミュニケーションを取りながら助言します。

──工場に入る目的はあくまでもGMP実施状況の確認・助言。検査するわけでも審査するわけでもないと言っていますね

今西 そのとおりです。我々は「立入検査」とは言わず、確認・助言と説明しています。立入検査と言うと、何か違反の疑いが認められたから法的な権限に基づくものというニュアンスがありますが、そういうものではありません。

──GMP義務化が完全実施される来年9月1日以降は「立ち入り」を行うことになりますか。

今西 何らか違反の疑いなどが確認されたため工場に入るというのであればそうなると思います。

──義務化の完全実施後、各製造・加工施設のGMP基準の遵守状況を定期的に確認していくことになるのでしょうか。

今西 まずは経過措置期間中の確認・助言を通じて全ての工場がGMP基準を遵守していただけるようにしたいと考えています。ですから、来年9月以降については今後の検討となります。そのため、GMP遵守状況の確認や監視の仕方については、今行っているGMP実施状況の確認結果なども踏まえ、どのような形にするか検討します。

──現時点でGMPチームはどんな手応えを得ているのですか。

今西 確認・助言を進める中で製造・加工施設にお願いしているのは、原材料メーカーや届出者などとの連携です。GMP基準を遵守していただくためには、この三者連携が大事になってきます。また、GMPは手順と記録が大事です。そのため、手順及び記録の整備と保管をしっかり行うようお願いさせてもらっています。確認が終わり次第、順次結果を取りまとめ、現状を事業者の皆さまに周知していく予定です。

 GMP基準の遵守にせよ何にせよ、届出者が全ての責任を負うのが機能性表示食品制度です。我々は今、GMP実施状況を確認するために全国の製造・加工施設をまわっていますが、それは届出者が確認すべきGMP実施状況を確認しているということでもあります。届出者にはそこをご理解いただきたい。多くの製造・加工施設が複数の届出者の委託を受けて製造などを行っているという事情もあり、そこは我々としても難しく感じているところですが、原材料メーカー、受託メーカー、そして届出者が密に連携し、届出者としてGMP基準を遵守していただく必要があります。そこはまさに先ほどお話した「自己点検」を届出者が正しく行うためにも重要になると思います。

──今後、原材料に対してもGMPの遵守を義務付ける考えはありますか。

今西 GMP基準には、原材料の管理や安全性に関する情報の収集等を規定していて、原材料を受け入れる製造・加工施設において、品質等の確保を求めています。一方で、原材料は、高度に加工する抽出物などがあれば、加工度が非常に低い粉末など、さまざまなものがあるため、それらの全てに対して一律にGMPを実施するのは現実味がないように思います。GMP管理対象の機能性表示食品を製造する際に、原材料を含めて管理していくことが重要ではないでしょうか。

 いずれにせよ、その原材料が機能性表示食品に使用されるか否かに限らず、食品としての安全性は確保されている必要があります。そのための基礎となるのはHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point=危害要因分析重要管理点)の遵守です。

──機能性表示食品のサプリメントのGMP基準遵守義務の法的根拠は食品表示法です。ですが、口に入れるものの製造・品質管理に関する規定が「表示法」で定められていることに違和感があります。食品衛生法で規定するべきではありませんか。

今西 現在の機能性表示食品制度においても、同じ考え方であると思います。実際、錠剤やカプセル剤などのサプリメント形状食品全般に関するGMP指針を盛り込んでいる「3.11通知」は食品衛生法に基づきます。ただ、食品に機能性表示を行うかどうかは届出者の任意ですし、任意で機能性表示を行う場合に届出者が遵守しなければならない基準は食品表示法で定めています。ですから、食品衛生法などの関連法規を遵守していることを前提に、任意で機能性表示を行う場合は、食品表示法を遵守していただくことになります。

 関係閣僚会合の取りまとめには、今後の検討課題として、「食品業界の実態を踏まえつつ、サプリメントに関する規制の在り方、許可業種や営業許可施設の基準の在り方などについて、必要に応じて検討を進める」とあります。関係する事業者の方々には、そこを注視していただければと思っています。

──ありがとうございました。

【聞き手・文:石川太郎、取材:2025年8月28日】

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【プロフィール】
今西保(いまにし たもつ):消費者庁食品表示課保健表示室長。2004年厚生労働省入省。基準審査課で農薬等のポジティブリストなどを担当。その後、監視安全課乳肉安全係を経て、内閣府食品安全委員会事務局評価第2課を担当。24年4月、食品衛生基準行政の移管で消費者庁食品基準審査課課長補佐に着任。今年4月から現職。

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