鯨肉・鯨油の新機能性成分発表 抗酸化作用や育毛効果に期待高まる~日本捕鯨協会
(一社)日本捕鯨協会(東京都中央区 谷川尚哉理事長)は25日、鯨肉・鯨油に含まれる新たな機能性成分の研究成果を発表した。抗酸化作用を持つバレニンや育毛効果が確認された鯨油の研究が紹介され、健康や予防医学への応用に注目が集まった。
会見冒頭で谷川理事は、「クジラ肉は古来より日本の食卓で親しまれてきた高タンパク・低カロリーのヘルシーフード。近年、新たに注目すべき研究成果がもたらされた」とし、鯨肉の食文化の継承と健康効果について広く知らせる意義を強調した。その後、登壇した研究者からは、鯨肉に含まれる「バレニン」などの機能性成分について新たな実験結果の報告があった。
鯨肉に豊富なバレニンの効果
バレニンは高い抗酸化作用を有するイミダゾールペプチドの一種で、他の動物との比較でも鯨肉には圧倒的に多く含まれている。その健康効果について研究発表した湘南医療大学薬学部の塩田清二教授は、バレニンの摂取により、運動パフォーマンスの向上や集中力の増加、疲労軽減などの効果が確認されたことを報告。
また、「ヒト試験ではトップアスリートのバレニン摂取による持久力向上、自律神経調節、睡眠の質の改善において明らかな有意差がみられた他、高齢者を対象とした内田クレペリン検査では、認知機能・作業効率・集中力のスコアが有意に増加した」と説明した。
鯨油による育毛効果と臨床試験
さらに鯨油の機能性研究も紹介。モデルマウスによる育毛促進の実験結果では、剃毛マウスの鯨油塗布により、ミノキシジルと同等の高い育毛効果が確認されたとし、現在進行中の男性型脱毛症患者を対象とした臨床試験に期待を寄せた。
早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構の矢澤一良氏は「予防医学の観点からもクジラから取れるマリンビタミンをもっと有効活用すべき」と語った。
「慢性的な低栄養によるフレイルのリスクはすべての世代にある」とし、「フレイルになると社会的フレイルへと進行し、活動量の減少や脳機能の低下などの悪循環に陥る」と、そのメカニズムを説明した上で、「バランス良くアンチエイジング・予防医学食品を組み合わせて取ることが重要で、その中にマリンビタミンのバレニンを加えることが有効」と述べた。
食文化継承と応用への展望
質疑応答では、クジラ肉の活用方法について、「医薬品やサプリメントへの応用の可能性がある。食品として取る際には学校給食での提供や子ども向けのふりかけ、介護食としての米粉パンなどもある」と例を挙げた。また、「鯨肉・鯨油の研究がミトコンドリアの機能向上や若返りの可能性にも関連していることから、今後ますます、ミトコンドリア研究の重要性が高まっていく」との認識を示した。
【堂上 昌幸】
(冒頭の写真:左から発表会の協力企業、共同船舶(株)の所英樹社長、谷川理事長、塩田氏、矢澤氏)