表示禁止事項見直し、継続審議に 機能性表示食品、消費者委員会部会の意見割れる
食品一般に認められている「糖質オフ」や「糖類無添加」などマイナス方向の強調表示を、機能性表示食品に解禁する食品表示基準改正案を認めるかどうかを巡り、内閣総理大臣の諮問を受けた消費者委員会の食品表示部会の意見が割れ、継続審議となった。
7月31日に公開で行われた審議は、約2時間に及んだ。どちらかと言えば改正案に賛同する委員が多かった。だが、小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題を受けた規制強化の直後に規制を緩めることなどへの疑問や懸念の声が複数の委員から上がった。少なくともサプリに関しては認めるべきではないとの姿勢を示す委員も。そのため、部会長は継続審議を判断。結論は、次回以降の会議に持ち越しとなった。
改正案を巡っては、消費者委員会への諮問に先行してパブリックコメントの募集が6月中旬から約1カ月間行われていた。機能性表示食品制度を所管する消費者庁によれば、寄せられた意見総数は7件8項目にとどまった。ただ、ここでもサプリに関しては厳しい意見が寄せられている。
改正案は、届け出た機能性関与成分「以外」の成分を含むことを強調する表示は引き続き禁じつつ、一般の食品と同様に、「食塩不使用」などの添加していない旨の強調表示、あるいは「糖質カット」などといった含まないこと、低いこと、低減されたことの強調表示を、食品表示基準で定められた範囲で容認するもの。機能性関与成分以外の成分についても、例えば「ノンカフェイン」などマイナス方向の表示に限って一般の食品と同様の扱いとする。
そういった食品一般に認められている強調表示が、機能性表示食品は2015年の制度施行以来、消費者の誤認防止の観点から全面的に禁じられていた。
それを見直す理由について、この日の食品表示部会の審議で改正案の説明に当たった消費者庁食品表示課は、「消費者が誤認する恐れがなくなった」(今西保保健表示室長)などと説明。昨年の制度改正で容器包装表示のルールを全面的に見直し、主要面の上部に「機能性表示食品」と枠で囲んで目立つように表示したり、機能性関与成分による機能であることを明確に表示したりする統一的ルールを事業者に課したからであるという。
この日の審議で委員から上がった改正に対する疑問や懸念の声としては、「率直な疑問として、これまで表示の規制を強化してきた流れの中で、なぜこのタイミングで規制緩和する必要があるのか」(中田華寿子部会長代理)、「見た目が一般食品とは異なるサプリ形状に、一般食品並みの訴求を認める必要がどの程度あるのか、消費者に誤認されるケースが本当に出てこないのか。改正の必要性が理解できていないこともあって懸念を感じる」(菅聡一郎委員)、「一般食品と比較して、機能性表示食品は消費者に誤認されないよう、より注意することが重要。改正によって、『機能性関与成分+マルチビタミン』や『機能性関与成分+1日分のビタミンD』などといった表示が増えていくことを懸念している」(森田満樹委員)──などがあった。
消費者委員会は、今回の食品表示基準改正案に対する審議を進めるのに合わせ、昨年9月から段階的に改正された機能性表示食品制度の運用状況についても、消費者庁に説明を求めながら議論していく方針。昨年の食品表示基準改正案を巡る審議を長時間にわたり行った同委員会は、改正機能性表示食品制度との関わりが深く、委員からさまざまな意見が上がることになりそうだ。
なお、この日の審議で机上にのみ配布された資料には、「サプリメント法」の制定を求める日本弁護士連合会がまとめた意見書があった。
【石川太郎】
(冒頭の写真:7月31日開催、消費者委員会食品表示部会第78回の様子)
関連資料
:消費者庁「機能性表示食品における『成分を強調する用語』について」(消費者委員会のウェブサイトへ)
:「食品表示基準の一部改正案に関する御意見の概要及び御意見に対する考え方(令和7年7月24日時点)」(同上)
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