食品表示、伝わらぬ制度と揺れる理解 「表示」見る人・見ない人、消費者庁が1万人調査
消費者庁が実施した「令和6年度食品表示に関する消費者意向調査」によって、食品表示の認知・理解・活用状況について全国1万人の消費者を対象に詳細な分析が行われた。調査では、消費者の多くが食品表示に関心を持ちながらも、情報の読み取りや制度の正確な理解に課題を抱えていることが浮き彫りとなった。
表示の意味は6割が理解、世代間にばらつきも
「食品表示がどのようなものかを知っている」と答えた人は全体の66.6%だったが、そのうち提示された表示見本と自らの理解が一致していた人は91.3%にのぼった。食品表示に対する基本的な認識は一定程度浸透していると言える。
しかし一方で、3人に1人はそもそも食品表示の意味を知らないと回答しており、世代や性別によって認知にばらつきが見られた。特に男女共に30~40代において知らない人の割合が高かった。
商品選択時の活用度に差、3割以上「表示見ていない」
「食品表示から、商品選択に必要な情報が十分得られている」と答えた割合は全体で57.7%だった。特に女性10代では68.7%と最も高く、反対に男性50代では52%と低水準にとどまった。
また、「普段、商品選択の際に食品表示を確認していない」とした人も34%いた。
容器包装に「保存方法」が表示されていることを知っている人は67.6%だった。理解内容については、「表示された方法以外で保存した場合、品質が劣化する可能性がある」と正しく認識している人が48.3%と最多だった一方、誤った回答も約3割に上った。
「消費期限・賞味期限」は8割が参考に
食品を購入する際、「消費期限または賞味期限の表示をいつも・ときどき参考にしている」と答えた人の合計は80.5%に達した。特に女性では全世代を通じて90%前後と高く、生活に根差した意識が強いことが分かる。
また、「賞味期限」の正しい定義を理解している人の割合は全体で63.7%だった。消費者の多くは、「定められた方法で保存しないと品質に影響が出る」ことを認識しており、制度趣旨との整合性は比較的高かった。
保健機能食品は「知らない」人が約4人に1人
保健機能食品について知っていると答えた人は17.3%にとどまった。24%の人が「聞いたこともない」と答えた。また、保健機能食品が「栄養機能食品」、「特定保健用食品(トクホ)」、「機能性表示食品」の3種類で構成されているのを知っている人は17.2%に過ぎなかった。
上記3種の認知度を調べたところ、多い順にトクホ27.4%、機能性表示食品20.9%、栄養機能食品17.4%だった。また、それぞれを摂取したことがあるかどうかを聞いたところ、摂取していると答えた人は、機能性表示食品15.9%、トクホ15.7%、栄養機能食品12.6%だった。
摂取者は「表示されている機能に期待」
摂取する頻度について聞いた。トクホでは「週1~2日」が26.5%と最も多く、次いで「決まっていない」が23.9%、「毎日」が21.7%、「週3~6日」が16.1%だった。
機能性表示食品では「決まっていない」が27%と最も多く、次いで「週1~2日」26%、「毎日」21%、「週3~6日」15.7%だった。
栄養機能食品では、「週1~2日」28.3%、「決まっていない」25.7%、「毎日」18.4%、「週3~6日」16.9%だった。
摂取している理由に関しては、3種類いずれも「表示されている機能(機能性)を期待しているため」というのが最も多く、トクホと機能性表示食品では6割を超えた。
機能性表示食品の届出制度、認知は14.5%
機能性表示食品の届出情報についても聞いた。消費者庁ウェブサイトで確認できることを「知っている」と答えた人は全体の14.5%に過ぎなかった。加えて、「知っている」と回答した人のうち、実際に消費者庁ウェブサイトで届出情報を確認したことがある人は54.7%で、全体ベースで見ると確認経験者は1割未満にとどまる。
特筆すべきは、機能性表示食品の届出確認率が20代男性で77.8%と最も高かった。若い世代ほど確認率が高く、70代以上では30%台にとどまった。
経口補水液に対する誤解浮き彫りに
「特別用途食品」のマークを見たことがあると答えた人の割合は49.4%と、全体の約半数にとどまった。
「特別用途食品」とは、「病者用食品(経口補水液など)」、「乳児用調製品(粉ミルク等)」、「えん下困難者用食品」など、特定の用途に適した食品に対して表示が認められているもの。これらの表示には消費者庁長官の許可が必要だが、それを知っていた人の割合はわずか18.1%だった。 さらに、こうした食品が「特別用途食品」であると認識していた人は14.7%にとどまっており、制度全体の認知と理解が依然として低いことが明らかとなった。
また、「経口補水液」に関する理解についても調査した。その結果、「経口補水液は、一般的なスポーツドリンクとは異なり、日常の水分補給としてむやみに飲むものではない」とする説明が正しいと回答した者は35.7%にとどまった。
「熱中症予防のために日常的に摂取してよい」と誤認している回答が33.2%に達しており、商品特性の誤解が広く存在する実態が浮き彫りとなった。
この他にも「添加物」、「アレルゲン」、「遺伝子組み換え食品表示」、「ゲノム編集技術応用食品」など合わせて11項目について聞いており、それ以外でも「商品選択のために参考にしている表示事項」など食品表示への要望や課題などについても調査している。
【田代 宏】
「令和6年度 食品表示に関する消費者意向調査報告書」はこちら(消費者庁HPより)